奇人変人ネタ投稿 | 梯子ダルマ オフィシャろうブログ

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ラジオネーム:梯子ダルマとして深夜ラジオにメールを送っていた、現在放送作家として働く26歳の男が書くブログです。

思ったことを書いて、賛同・誹謗中傷などの反応がきて、コメントがきっかけで会話をしたり、そんな交流が嬉しいです。

《ラジオに面白いネタを送って、選ばれて、読まれる》というのは本当に、本当に難しいなぁと改めて思ったので、いま一度ネタを考える際のプロセスを考えてみる。というか、よくある挫折の流れを書き起こしてみる。


まず、TBSラジオ土曜深夜3時放送《デブッタンテ》のコーナー『おい阿諏訪ドゥビズバ』に送るネタを考えるとします。


コーナー説明は「このコーナーは、うしろシティの阿諏訪泰義さん、通称おい阿諏訪がどんな人物なのか、リスナーの皆さんに阿諏訪っぽいものを送ってもらい、そのネタを通して、阿諏訪とは一体どんな人物なのかを理解し、広く知っていただこうというものです」という感じ。


最後の方にはもはや阿諏訪さんに関係ない破綻したメールが読まれたりもしますが、基本的にはキザでイタい阿諏訪さんがしそうな行動、阿諏訪さんっぽい出来事、「もしこれが阿諏訪さんだったら…」を考えて、「おい阿諏訪が○○だったら、しそうなこと…………○○○」という「タイトル→答え・結果」のフォーマットで書くコーナーです。

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ベテランナース長おい阿諏訪が、目の前で亡くなった患者のお婆さんにしそうなこと。

ファミコンのカセットと同じ要領で、お婆さんの口の中に思いっきり息を吹きかける。

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みたいな。
ちなみに、これは僕の没ネタですが…。


で、まぁネタを考えるじゃないですか。
僕としては「あるある×阿諏訪」で考えるわけですよ。他にもパターンはありますが、これが一番多いですね。あるあるの中に阿諏訪さんをぶち込んで、異質なものにしたら面白いと思って。「動かないファミコンのカセットに息を吹きかける」というあるあるに、逸脱した阿諏訪感を足す。上の例で言えば不謹慎、狂った、みたいな要素を入れてみる。


まぁ不採用ネタを基準に解剖してみても説得力ないんですけどね。いや、いやいやいや。というかそもそも、説得しようとはしていません。ただただ自分の頭の整理の為に、思ったことやら弱音やらを書いています。決して「ネタ講座」じゃありませんから。僕にはそんな技術も実績も資格もない。めちゃくちゃ無免許。ブラックジャックもいいとこです。


で、まぁ基準となる「あるある」をまず考えますよね。クイズミリオネア、学校の給食当番、無人島、花粉症、猿の惑星、etc…。「あ、矢沢永吉だ!」と思い付きます。矢沢永吉あるあるを使おう。

「俺はいいけど、YAZAWAが何て言うかな?」

これでいきましょう。ある地方でのコンサート前日に『矢沢さん、すみません。スウィートルームのはずが手違いでツインになってしまいました』と言われ『ああそうなの。いいよ部屋が無いわけじゃないんだから。俺はいいけど、ただ、YAZAWAが何て言うかな?と返した、この有名なエピソード。こんなに面白いあるあるフォーマットはありません。ここに阿諏訪さんを入れてみる。


ここで気付きます。「あ、矢沢と阿諏訪って語感が近い!」棚からぼた餅。たまたま思い付いた「矢沢永吉」というワードは「阿諏訪」というワードと語感が近く、組み合わせやすかったのです。なんともラッキー。


あとはもうフレーズ先行で決めちゃいます。語感も近いし、「YAZAWA」の部分を「ASUWA」に替えてみる。「俺はいいけど、ASUWAが何て言うかな?」これでイケるでしょう。


さて、もうこれでネタがひとつ出来上がりました。実際に書いてみます。

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ネタライブ前日に、急遽出演順が変更になったと告げられたおい阿諏訪が、スタッフに言い放ちそうなセリフ

「俺はいいけど、ASUWAが何て言うかな?」

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はい、これでどうでしょうか。
多分ですけど、おそらく読まれないでしょう。



何故だ!!とここで思います。矢沢永吉フォーマットのネタなんてベタな方だし、エピソードが持つそもそもの偉そうな感じと阿諏訪さんっぽさが上手くマッチしてるし、何より語感が良いのに!!と。絶対に面白いから、きっと読まれるはずなのに、読まれない。こんな悔しさと煮え切らなさを感じる人がたくさんいると思います。毎週毎週。もちろん僕も。





「なぜ俺のメールが読まれないんだ!」と怒る人がいます。たまに。怒らないまでも、不採用になれば誰だって不満に思います。それはきっと「自分のネタに多少の自信があったから」であり、多少の自信があった理由は「ネタを考えてる時にマイナスな要素が見当たらなかったから」ではないでしょうか。

「矢沢永吉とかイイじゃん!」
「あの名言イジってみよう!」
「偶然にも、語感が近いぞ!」
「文字だけで情景が浮かぶ!」

楽しい気持ちで自分が面白いと思うネタを書いているんだから、やっぱり作る過程はただただ楽しい。好きなものに対して夢中になっている。

ですがこれは、良く言えば夢中、言い方を変えれば没頭、少し悪く言えば、視野が狭くなってしまっている。後ろを振り返らずに「よしよし大丈夫大丈夫、面白い面白い」と駆け抜けてしまう感じ。だから一回、遠くから観察してみなくてはいけない。上の例で言えば、「ASUWA」という英語表記の文字ズラに面白さの要素があるのでラジオでは良さが伝わりづらい、という弱点に気付かなくてはいけません。


「ちょっと待って」と常に自分に言い聞かせる。「ちょっと待ってちょっと待ってお兄さん」と。送信ボタンを押そうとする親指を引き止めるツッコミ役を、自分の中に飼う必要があります。「もっとできることはないか?」「ここにも面白い要素を足せないか?」「ここの助詞は『を』の方が良いんじゃないか?」「この部分は前フリの時点で説明しちゃった方が良いかもしれないぞ?」と、一度立ち止まってから様々な角度で提案してみる。自分の最初の発想に楽しくなっちゃうと、この作業をサボりがちです。


「楽しいだけじゃダメなんだよ!」なんて言う気はさらさらありません。されどネタ投稿ですが、所詮ネタ投稿です。楽しいのが一番。自分が楽しけりゃ、番組が盛り上がれば、パーソナリティーが笑ってくれればそれでいい。だからこの一度立ち止まって見直すという作業も、楽しんじゃえばいいだけです。「おい自分!これは面白くないぞ!」は「もっと面白くしてみよう!」と同じですから。




面白いことを考えるのって、なんでこんなに楽しくて、なんでこんなに難しいんでしょうね。まぁもちろん楽しいは楽しいでしょうけど、後者の“難しさ”に関しては多分「面白さを共有させる技術」に苦労するんだと思います。自分の楽しいと他人の楽しいを繋げる作業。楽しくて、難しくて、やり甲斐があって、楽しい。


深夜ラジオって凄い変な場所ですよね。この文章読んでる人はラジオリスナーの方、実際にメール送ってる方が多いと思いますが…自分の周りに、他にいます?こんな毎週毎週、芸人さんでもないのにネタを書いてる人なんて。下ネタ、替え歌、ダジャレ。小学生からご年配の方まで、全国のモノ好きな素人がめちゃくちゃ面白いことを実は日常生活の中でひっそりと考えていて、それをメールで送って、読まれて、全国のリスナーが笑うんです。変ですよこんなの。すっごい変。もうラジオにメールしてるのなんて変な人ばっかりだ。
僕も負けないくらい、もっと変人になりたいものです。