佐川急便パワハラ事件に思う | ★社労士kameokaの労務の視角

★社労士kameokaの労務の視角

ー特定社会保険労務士|亀岡亜己雄のブログー
https://ameblo.jp/laborproblem/

 

朝日新聞デジタルの記事に衝撃的なパワハラ事件のニュースがあったので取り上げてみたい。

こうしたニュースに出会う度に、いったいいつになったらパワハラがなくなるのかと思ってしまう。労務は人間の集まりと接触は致し方ない。根絶が困難でも、少なくする方法はないものか。

 

さっそく、記事で公開されていたものを掲載する。

 

佐川急便の男性社員(当時39)が上司からパワハラを受け、6月に自殺したことがわかった。会社側はいったん社内調査でパワハラはないと結論づけたが、男性が亡くなった後の再調査で事実関係を認め、9月になって本村正秀社長が遺族に謝罪したという。

4日、遺族側の代理人弁護士が記者会見した。代理人によると、男性は東京都内の営業所でドライバー数十人を管理する業務に就いていた。所内の課長2人が他の社員らの前で男性を厳しく非難したり、メッセージアプリで「うそつき野郎はあぶりだす」「なめ切ってるな」といった暴言、左遷をほのめかす発言などを送ったりしていた。男性は3月には1年近く続けた担当の職務も外された。

2人によるパワハラを指摘する匿名の内部通報が4月にあり、社内調査が実施された。だが、部下への聞き取りもなく「パワハラに該当するような事案は確認できません」と結論づけられた。その後も休日に課長の一人が男性へメッセージを送るなどの動きを継続。男性は6月に亡くなった。

男性の死亡を受け、佐川急便は改めて外部の法律事務所に調査を依頼した。法律事務所は、会社の対応について「従業員が安全に働けるように職場環境を守るという『安全配慮義務』に欠けており、適切な対応を怠った責任がある」と指摘したという。佐川急便は「パワハラが自殺につながった一因と認識している」(広報)といい、遺族に対しては「誠心誠意、対応させていただく」という。

 

厚生労働省による労働問題の年間集計では、もう何年もパワハラ(いじめ・嫌がらせ)問題がダントツでトップに君臨する。傾向は変わらない。もっとも、本人がパワハラと主張していても、実際はそうではない事案もあるだろうが、集計データ上は1位であるから、労働社会においてパワハラ問題は多発していることは間違いない。今回のニュースもその一つである。

 

記事を読むと会社は最初にパワハラはないと結論づけたようだ。小職も年間を通して、ほとんど扱わない日がないと言っていいほど、パワハラ問題を扱っている。経験上も多いと感じている。

 

パワハラの被害者と言い得る本人は、会社と話し合ったり、会社に申し立てたりすることをかなり多くの割合で行っている。電話やメール、リアル面談など方法は様々だが、相応に行っている。今回の被害者も佐川急便内部で声をあげたことは事実のようである。

 

被害者と言い得る労働者が社内で声を上げた場合、企業の対応は、「パワハラの確認ができなかった」「パワハラとは認められない」などの教科書のような回答が並ぶ。ほぼ例外なくと言っていいくらいである。

 

もちろん、企業側からすれば、認めなければいけない義務があるわけでもないから、結論内容に即問題ありとはならない。しかし、人の命が失われる事態になると企業の態度が一変することも相応にみられる。今回のケースでもそのようである。しかし、言うまでもなく亡くなってからでは遅い。

 

記事の以下の部分に今回のパワハラの行為内容が見て取れる。

所内の課長2人が他の社員らの前で男性を厳しく非難したり、メッセージアプリで「うそつき野郎はあぶりだす」「なめ切ってるな」といった暴言、左遷をほのめかす発言などを送ったりしていた。男性は3月には1年近く続けた担当の職務も外された。

 

メッセージアプリで送られていたのだから、その点は、当然に生前、男性も会社に申し立てたであろうし、会社も冒頭に写真公開されている画面を確認し、送り主に確認すれば、事実だと判明することは容易であったであろう。会社側の態度として、内容を問わず、職場内でパワハラ行為があったと認めない傾向が強くみられる。

 

故に、部下への聞き取りもなく「パワハラに該当するような事案は確認できません」と結論づけたのであろう。

 

今回も最初の調査で、事実確認をしないことで事を荒立ててしまったのではないかと推察する。小職がパワハラ問題に向き合っていて推察している範囲ではあるが、企業側がこうした態度をとる背景には、調査して具体的な話を聞いてしまうと、かなり細かいことまで確認して明らかにする作業がまっていること、事実が確認できてしまうと職場内パワハラがあったことになってしまい、体面的にもよくないこと、労働災害として扱われてしまうことなどが考えられる。

 

しかし、仮に、パワハラと認められる行為がないと判断したとしても、パワハラがあったとの声が上がる職場であることがよくないのであるから、対象者および職場全体に注意喚起するなどの実際の対応がなければいけない

 

面倒な話であるが、パワハラとは、パワハラに当たるか当たらないかよりも、事が起きる前後の措置が重要とされる領域なのだ。多くの当事者がこの点に注意がいっていない。

 

人間は年齢に関係なく、活字のインパクトにかなりの衝撃を受けるという。電話などで肉声で言われるよりも、デジタルツールの活字は強烈な影響を残す。活字はずっと残ってしまうこともその効果だ。今回の事案でもそうであったことは十分に考えられる。

 

企業に言えることは、いかなるパワハラ事案でも同じであるが、労働者から「パワハラ」との声があがったら、被害者と言い得る本人から、まず話を聞く。行為内容、回数、次期、背景など詳細に聞き取る。

 

次に、加害者と言い得る労働者から、聞き取る。当然、全面否定するから、そのことも踏まえて聞き取る。調査など得意としている企業はそうそうないであろうし、調査能力があるないといった問題でもあるので、スムーズではないかもしれない。しかし、調査は、明らかでないことを明らかにしていく作業である。

 

ここで重要なのは、企業としてできることはやった。動いた。対応したということである。これがないと事は紛糾することになる。

 

それ以前に、事前措置をきちんとすべきだというのは当然である。ぜひ、考えてほしいと願う。

 

【特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄】