新型コロナワクチン接種をめぐる差別・解雇等の不利益 | ★社労士kameokaの労務の視角

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ー特定社会保険労務士|亀岡亜己雄のブログー
https://ameblo.jp/laborproblem/

 

ワクチン接種拒否で解雇「許されず」 厚労省が指針

先日、日本経済新聞にこうしたタイトルの記事があった。

 

以下に一部を抜粋して掲載する。

 

厚生労働省は新型コロナウイルスワクチンを接種しない労働者や求職者に不利益が生じないよう企業に対応を促す。接種しないことだけを理由とした解雇や雇い止めは許されないとし、接種を採用条件とする場合も理由などの明示を呼びかける。健康上の理由などでワクチンを接種できない人に差別的な扱いが生じないよう配慮する。

 

なにげない数行の記事なのだが、とてつもない問題を案内しているメッセージ記事である。

 

ワクチン接種をしないことを理由の解雇や雇止め(=有期雇用契約の更新拒絶)、これは雇用契約の出口の話である。そして、ワクチンを接種することを採用条件にすること、これは雇用契約の入口の話である。

 

企業でこのようなことが横行したらと思うと背筋がぞっとする。社会的な問題に発展しかねない。小職自身もネット上の求人広告で、ある企業が、「ワクチン2回接種後1週間経過した方が応募の対象です」という告知を偶然目にした。

 

社会が、地球規模でワクチン接種が当たり前といった風潮、空気になっているため、企業が、ワクチンを条件・理由にすることについて、法的問題などを何も考えもせずに、平然と通知している状況が散見される。

 

まず、厚生労働省や政府ではどのようになっているかについて、その案内を見てみる。

 

 

厚生労働省の「新型コロナワクチンQ&A」には以下のようにQとAを記載し、広く案内している。

 

今回のワクチン接種の「努力義務」とは何ですか。

「接種を受けるよう努めなければならない」という予防接種法の規定のことで、義務とは異なります。感染症の緊急のまん延予防の観点から、皆様に接種にご協力をいただきたいという趣旨から、このような規定があります。

今回の予防接種は感染症の緊急のまん延予防の観点から実施するものであり、国民の皆様にも接種にご協力をいただきたいという趣旨で、「接種を受けるよう努めなければならない」という、予防接種法第9条の規定が適用されています。この規定のことは、いわゆる「努力義務」と呼ばれていますが、義務とは異なります。接種は強制ではなく、最終的には、あくまでも、ご本人が納得した上で接種をご判断いただくことになります。:

  https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/all/

 

ポイントは、接種を受けるよう努めるという努力義務となっており、あくまでも協力で強制ではないこと、接種は本人が判断できることである。

 

これだけ取り上げると、一見、きちんと案内されているように見えるかもしれないが、このQ&Aが記載されている箇所は、「新型コロナワクチンQ&A」のテーマ別の下から2番目の「その他」というブロックである。

 

ほとんどの国民はまずそこまでスクロールしてクリックして読むことはないのではないかと思われる場所に書かれている。本来であれば、接種が強制ではなく自分で判断していいことの案内は、最重要事項として、一番目立つ最初の位置に記載されてもいい事項である。

 

この「その他」のブロックの前までは、接種をする前提でのQ&Aがほとんどである。これは偏向案内とも言えるものである。

 

また、予防接種法では以下のように附帯決議がある。関係個所のみ抜粋して掲載する。全文は衆議院のページで確認できる。

 

予防接種法及び検疫法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 

 政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

 

一 新型コロナウイルスワクチンの接種の判断が適切になされるよう、ワクチンの安全性及び有効性、接種した場合のリスクとベネフィットその他の接種の判断に必要な情報を迅速かつ的確に公表するとともに、接種するかしないかは国民自らの意思に委ねられるものであることを周知すること。

 

二 新型コロナウイルスワクチンを接種していない者に対して、差別、いじめ、職場や学校等における不利益取扱い等は決して許されるものではないことを広報等により周知徹底するなど必要な対応を行うこと。

 

三 新しい技術を活用した新型コロナウイルスワクチンの審査に当たっては、その使用実績が乏しく、安全性及び有効性等についての情報量に制約があることから、国内外の治験を踏まえ、慎重に行うこと。

 

五 新型コロナウイルスワクチンによる副反応を疑う事象について、広く相談窓口を設置し、国民に周知すること。また、海外における情報も含め、医療機関又は製造販売業者等から迅速に情報を把握し、情報公開を徹底するとともに、健康被害が拡大することのないよう、的確に対応すること。

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_rchome.nsf/html/rchome/Futai/kourou95509A0BDB55A3044925862400328414.htm

 

ポイントは、ワクチン接種にあたっては、適切に判断できるように、リスクとベネフィットを公表すること、国民自らの意思で決めてよいこと、接種していない者に不利益扱いはしないことである。

 

おそらく、余分な解説はいらないかと思う。ワクチン接種を条件にし、接種しない者を採用しないことは差別にあたり、ワクチン接種を拒否することを理由の雇用契約の解約(解雇や雇止め)は、差別であり不当解雇にあたる。重大な不利益扱いである。

 

ワクチン接種が推奨されている空気があり、企業でもその空気を当たり前と捉え、流れに乗って当たり前に動いてしまっている。きとんと考えて、調べて、知ってほしいと切望する。

 

社内案内文書では、「ワクチン接種は強制ではありません」としておいて、会社の空気や態度などが、ワクチンを打たざるを得ないようになっている場合もある。こうした巧妙なやり方も目に付くが、強制とは言っていないから問題がないわけではない。

 

労働者側のワクチン接種強制、あるいは、半強制の証明は簡単ではないが、労働問題は実態がポイントになるため、納得できない場合には記録するなど詳細な事実を残すべく努力する必要はある。

 

企業側は、強制と言わなければいい式の手法はやめて、堂々と誠実に案内し、本人の自由意志に委ねるように取り組んでほしいところである。ちなみに、企業としては、ワクチンを「打て」も「打つな」もレッドカードである。

 

身体的事情からワクチンを打てない者も多くいるのも事実である。2021年11月9日時点で、医療従事者等を除くと、ワクチン2回接種者は69%ほどで、「一般人」は、60%ほどのようだ。つまり、一般人は10人のうち4人は、ワクチン未接種という実態にもある。もちろん、数値は今後、変化していくであろう。

 

参考:「データでみるコロナワクチン 日本の接種状況」(朝日新聞デジタル)

データで見るコロナワクチン:朝日新聞デジタル (asahi.com)

 

公表されているデータは内閣官房IT総合戦略室が公表しているデータをもとにしており、医療従事者等のデータは入っていないとされている。また、高齢者の接種者も別に把握できるため参考になると思われる。

 

今後、3回目、4回目と接種が進んでいく可能性があることを考えると、間違っても、「3回目を接種していることが応募条件です」はやめてほしい。3回目を打たない者は「解雇する」、あるいは、人事評価が故意に悪くなる、配置転換が不当になされるということも止めてしてほしい。

 

このままいくと、ワクチン接種をめぐる労働問題が、増えてしまうことが懸念される。

 

世の中の趨勢を思うと、メディア報道等に左右されずに、きちんと、エビデンスのしっかりした情報や知識を得て、知って、考えてほしいと願わずにはいられない。

 

【特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄】