東京労働局が、パワハラ防止措置の義務化で、中小へ自主点検を要請したとのニュースが流れた。
意識していなければ、「だから何?」なりそうな事項ではある。しかし、求められるのは法的な義務であるため、中小企業には、今、気づいてほしい、知ってほしいとの思いから、今回は執筆となった。
ニュースによれば、東京労働局が、中小企業焼く5,000社に対し、自主点検と対策の実施に関する文書を送ったとのことである。
これは、2020年6月1日から施行されている労働施策総合推進法が2022年4月1日から中小企業にも適用となることからの動きである。
背景には、労働相談件数のうち9,072件がいじめ・嫌がらせであり、また、いじめ・嫌がらせに関係して発症した精神疾患の労災請求件数が増加傾向であることがある。
ここ数年の傾向をみれば、余談を許さず、待ったなしの状況と見ている。勝訴・敗訴、損害賠償金の水準などは別として、パワハラに関する裁判例も、相応に起きている。
もっとも、刊行物になった裁判例を探求している限りでは、パワハラの場合は、裁判に踏み切るには証拠は弱い場合が多く、勝訴の場合でも損害賠償金が原告の望む水準になるのは厳しい状況だ。ただし、労働局などのあっせんによる解決はまったく別物かもしれない。あっせんは、証拠のあるなしで結論付けるわけではないからだ。
話を戻すが、今回の自主点検は、「事業主の方針の明確化と周知・啓発」や「相談体制の整備」、「相談後の迅速・適切な対応」など、パワハラ防止に関する指針において講ずべき措置として挙げられている項目への対応を促すものとされている。
東京労働局のWEBサイトをみると、自主点検票、点検解説書、自主点検解説動画なども作成されている。義務化までに就業規則の見直しや相談窓口の設置などの準備を進めるよう呼び掛けている様子なので、中小企業は確認してほしいと切望する。
何をしてよいかピンとこないこともたくさんあるはずなので、東京労働局のサイトが参考になると思う。
【特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄】