Uber eatsの就労者にも労災保険が適用になるのか | ★社労士kameokaの労務の視角

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ー特定社会保険労務士|亀岡亜己雄のブログー
https://ameblo.jp/laborproblem/

 

1業務中の怪我かどうかが重要ポイントではない

今や、uber eatsはすっかり有名になっている。小職が事業を行っている春日部でもめずらしくなくなった。コロナ禍の中ということもあって、注文した食事を運んでくれるという点では、とても便利なサービススタイルである。その配達員に労災は適用されるのか。メジャーなテーマではあるが、遅ればせながらこのブログでも一度触れておきたいと思う。

 

さて、便利な配達サービスではあるが、その一方で、自転車を使用するケースがほとんどで、交通ルールを守らない行為も度々指摘されているところである。実際、配達員が配達中に事故で怪我をするケースもある。事故や怪我などがなければ、問題として意識されることはないが、何か起きてしまった場合に問題として浮上する。

 

では、uber eatsの配達員は労災を適用されるのだろうか。配達をする行為は、配達員からすれば業務=仕事であり、怪我をすれば仕事中の怪我であることは確かである。通常の労災適用の話であればこの点が重要になる。しかし、uber eats配達員に労災保険が適用されるかどうかの重要ポイントはそこではない。

 

ポイントは配達員が労災保険法上の労働者と言えるかにある。ちになみに、労災保険法上の労働者は、労働基準法上の労働者かということと同じである。労働基準法上の労働者として認められれば労災保険法上の労働者ということになる。

 

2配達員の業務形態

小職が知る限りではあるが、uber eatsの配達員の業務形態は、専用アプリがあって、登録してスマホなどで仕事を受けられる状態にしておくことで飲食店から配達依頼が入る仕組みのようだ。配達依頼が入るまでは待機ということになる。ちなみに待機は業務時間である。

 

配達依頼を受けると配達員は飲食店に配達する食事を取りに行って、顧客の指定場所に配達する。この行為も間違いなく業務である。

 

3労働者といえるための基準

 ここでどのような基準で労働者か否かを判断するのかについて整理しておく。絶対ではないが、以下の内容が強いほど労働者性が否定される方向に動くことになる。

 

①   使用者の指揮監督下の労働か

 仕事の依頼を断るか受けるかの自由があるか⇒自由があれば労働者否定

 業務の内容ややり方について具体的な指揮命令があるかないか⇒なければ労働者否定

 勤務場所や勤務時間が特定され管理されているかいないか⇒なければ労働者否定

 本人以外の者が替わってもよいかどうか⇒よければ労働者否定

②   報酬は労働の対価となっているか

 時給や日給などで計算されていないかどうか⇒いなければ労働者否定

 欠勤すると給料から控除されているかどうか⇒いなければ労働者否定

③   事業者であるとされるかどうか

 所有する機械・器具が著しく高価かどうか⇒高価であれば労働者否定

 同じ業務に従事する者に比べて著しく高いかどうか⇒高ければ労働者否定

④   専属性の程度

 他社など他の仕事をすることの制約があるかどうか⇒なければ労働者否定

⑤   社会保険・税金の徴収

 報酬から雇用保険料や健康保険料・厚生年金保険料、所得税などが引かれているかどうか

⇒引かれていなければ労働者否定

⑥   その他

 就業規則の適用の有無⇒適用されなければ労働者否定

 機械・車両等の修理代の負担の有無⇒あれば労働者否定

 

以上を総合的に判断することとされてる。当事者の主張で決まるわけではなく、実態でこれらを検討していくことになる。また、書面の契約書が請負契約だから労働者ではないと言えるとは限らない点は重要である。

 

社会保険や修理代の負担などは、社会保険料が引かれていない事実だけで労働者ではないというのは禁物である。社会保険に入れなければいけないのに実施していない企業などもある。修理代についても、本来は企業負担とすべきところを給与から引いている場合もあるので留意する必要がある。

 

4uber eatsの労働者性を判断する実態的要素

2で見たuber eatsの業務スタイルだけみても、労働者と言えるのかは見えてこない。労働者かどうかを判断する要素として次の実態があげられる。

 

・配達の依頼を受けられない時間帯がある場合には、「依頼を受けない」という設定にしておく事が可能なうえ、配達依頼そのものを断ることも可能になっている。

・配達の依頼を受けて、配達を完了するごとに報酬を受け取ることができるが、この報酬は手数料である。

 

これらの点が重要な要素になりうる。

 

5uber eats配達員の労働者の判断は

配達の仕事の依頼を受けるか受けないかを配達員がアプリの設定一つで自由に選択できるし、業務を行わないこともOKになっている。他の仕事を行うこともできる。

報酬は配達完了して手数料として支払われる。

配達時に使用する車両は、自分で所有する車両である。

社会保険や雇用保険は適用になっていない。

 

他の要素も細かくあげればあるかと思いますが、小職が知るところでは、これらの要素から、uber eatsの配達員が労働者であると認められるのが難しいと言えそうです。

 

万一の事故や怪我に備えて、自転車保険などに加入して備えて置くことが肝要のようです。

 

【特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄】