少し前に、JR東海が従業員の一時帰休を行うとのニュースがあった。今回は、このニュースを素材に、一時帰休の性質や問題について述べたいと思う。
JR東海は24日、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、9月1~30日に1日当たり約200人規模の一時帰休を実施すると発表した。JR東海は1~6月にも一時帰休を実施しており、今回が2度目となる。
同社は9月の東海道新幹線の臨時列車を350本程度減便する検討をしており、業務量の減少が見込まれるため。対象は新幹線の乗務員の拠点や車両の保守・検査をする車両所、工場などで勤務している社員約9800人。
〔2021年8月24日 共同通信〕
記事は短めなのでさーっと通り過ぎそうになるが、「1日あたり200人の一時帰休」とある。「一時帰休」と登場しても、多くの方はわかるようでわからないといったところかもしれない。
1 一時帰休ってどういうもの
会社が仕事量を減らすことになり、そのため一時的に従業員を休ませることを一時帰休と言っている。
あらためて聞けば、ああ、どこの会社でもよくある、「仕事減ったから休んで」ということか・・・とピンとくるかと思う。通常は、一時帰休という言葉をあまり口にしないことから、一瞬、面食らうのかもしれない。
一時帰休を実施する理由でよくあるのが、売上減少など会社の経営困難だ。従業員にとってはいいことではないものの、リストラや賃金カットされるよりはましというのも事実である。
法的には、「使用者の責に帰すべき事由による休業」の場合に、平均賃金の60%以上の手当を支払うことになっている(労働基準法第26条)。この「使用者の責に帰すべき事由による休業」は一時帰休と同義と理解していい。
ちなみに、労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」は、経営サイドには厳しいが、不可抗力以外はすべて含まれると考えておいていい。
会社の判断で従業員に休んでもらうわけであるから、会社の責任に帰すわけである。ただし、多くの会社では、法律上の最低保障の60%止まりの支払いのようだ。
2 一時解雇との違い
一時帰休は、休みになるだけで雇用が維持されていることが特徴である。したがって、休業保障60%以上も対象になる。
しかし、よく似た言葉で、一時解雇というのがある。一時解雇はレイオフということばでも言われるので、聞いたことが有る方も多いのではないかと思う。これは、解雇の名の通り、雇用は継続されない。したがって、賃金の支給保障もない。一時帰休とは次元が異なる。
ただ、一時帰休になったことで、会社が危ういと考える従業員等では、休みの間に次の就職先を探す活動をする場合も有るようだ。この辺はそれぞれの任意活動である。、
3 理由を含めて説明を
JR東海でも、新型コロナウィルス感染症の感染拡大の影響で一時帰休を思考するようだ。正式な経営状況までは調べていないが、おそらく、コロナの影響で乗客が減少し、売上低下になっていることが原因なのだろうと推察する。
リストラや賃金減額措置よりは、まだ柔らかい措置と考え、踏ん張るという策が一時帰休とも言える。
会社の労務対策として重要なのは、従業員は様々な受け止め方をするので、誤解のないように、具体的な理由を含めて説明をすることだ。いつからいつまで一時帰休を実施するか、実施期間も重要になる。
【特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄】