4月29日の読売新聞ニュースに新型コロナ関連の記事があったので、少し触れさせていただきます。
まずは、記事を掲載します。
マスクを着けずに会議に出席したことなどを巡り、大阪電子専門学校(大阪市天王寺区)を運営する学校法人木村学園(同)が、嘱託職員の男性(60)を出勤停止の懲戒処分にしていたことが28日、わかった。同校職員らの労働組合は「行きすぎた処分」として同日、法人側に団体交渉を申し入れ、来月には抗議文を提出する方針。
組合などによると、男性は今月7日、新年度の授業内容を話し合う会議にマスクを着けずに出席。会議後、法人幹部に未着用の理由を聞かれ、「どこに行っても買えない」と返答したという。後日、男性は面談した幹部から「感染源になったらどうするんだ」などとただされ、顛末(てんまつ)書を提出して説明しようとしたが、「受け取れない」と言われ、4日間(5月12~15日)の出勤停止の懲戒処分を受けた。
法人側は取材に「学園内のことであり、お答えできない」としている。
あくまでも記事になっている限度で触れることになりますので、ご了承ください。
新型コロナウイルスに対する受け止め方が如実に表れた例です。医療専門家の多くは、マスクで防止できるわけではないことを話しています。マルクは、自分ののどなどの保湿、感染した場合に他人に飛沫が飛んでしまうことを少しでも防止する点を指摘してるだけで、万能ではないようです。問題の短所は、学校法人木村学園も世間一般と同様に、”マスクありき”で受け止めていたことにあると思われます(「思われる」とは、そうだと決めつけているわけではなく、推測にすぎないという意味です)。
今回の例では、X(処分を受けた嘱託男性)は、努力してもマスクを買えなかったというやむを得ない事情にありました。また、賢明に顛末書で説明しようともしていました。こともあろうにYは顛末書の受け取りを拒否しています(顛末書にウイルスがついていることを想定しているのかもしれません)。
仮にそうだとすれば、「マスクなしイコール顛末書ウィルス」、こんな見方をしていること自体に問題があります。そもそも、ウィルスが顛末書などペーパーについていて、それに触れたからといってウィルスが体内に入るわけではありません。接触感染は、ウイルスに触れた手で目・鼻・口などの粘膜を触ってしまってそこから入ることとされています。
いずれにしても、Y(学校法人木村学園)は、有無を言わず、懲戒処分にしたという経緯です。ここが本件の問題行為になります。Xの事情を考慮する必要があったことは明らかです。また、Y内で、Xがマスクを着けなかったことが原因で感染者が出て、事業に支障がでる状態に至ったわけでもありません。出勤停止の処分をするにしても、Xの状況や言い分をよく聞いたうえで、Yとしてマスクがないと勤務することができないなどの事情があるのであれば、マスクを入手できる段取りを考えるほうが先だったと言えます。
そもそも、懲戒処分の規定がどうなっているのかが関係してきます。就業規則の懲戒処分規定で、処分検討にあたって弁明の機会を与える内容の規定があったのか否かが重要です。もし、ないのであれば、弁明の機会なくても処分できるということになり、懲戒処分そのものが妥当か否かは別としまして、処分手続き上の違法性はないと言えます。
さらに、ウイルス蔓延防止を対象にマスクあるいはそれに代わるものを装着して勤務しなければならないことが雇用契約上の義務になっていたかが重要です。推測ですが、「ウイルス蔓延のために・・・」を想定した規定があることは考えにくいところですので、Xの雇用契約上の義務とは言えないのではないかと思われます。
付言すれば、新型コロナに対する過剰反応が不適切な行動になったとも言えます。事情を聞いてマスクがないのがやむを得ないものであることを確認したうえで、「申し訳ないが、話すと飛沫が飛ぶため、万一に備えて、今日は会議中は話をするな。参加して聞いておいてくれればいい」などと指示すれば、その日は済んだのではないかと思います。
世の中の人々がみんなマスクをしていることばかりがインパクトとなり、マスクありきにとらわれすぎた例で、新型コロナウイルスに対する知識を正しく会得して、正しく対応しなかったことが誤った行き過ぎた対応になったものと考えます。
今回の事案は職場環境の例でしたが、労働問題のテーマから脱線して、新型コロナに限ったことではないために少し補足しておきたいと思います。みな自分が感染したくないために、近くにいる人間がマスクをしていないだけで一瞬、煙たい目になりがちです。
しかし、感染症の領域だけではなく、様々な専門家の見方・意見などをよーくよみますと、くしゃみや咳を浴びたり、ある程度の時間マスクなしで会話をしたりしない。つまり、口を開かないのであれば飛沫を浴びることはないと考えられますし、接触感染も手や衣類についただけでは目・鼻・口からはウィルスは入らないと考えられます。
事実、日本感染症学会では、一般向けに、”手を念入りに洗うまでは、不特定なものに触れた手で、目・鼻・口をさわらいように注意しましょう”といった旨がいくつも書かれています。小職は医療の専門家ではありませんが、医療の研究者のみなさんの見解やコメントを読むと、防止の急所は、近距離で飛沫を浴びないことと自分の手で目・鼻・口に触らないことにあると思えます。なぜかテレビではこのことをほとんど言っていません。
とは言っても、無意識のうちに人間は1時間に23回も顔を触っているそうですので、触らない意識を持てといっても無理だとなり、わかりやすのは、「人に近づくな」、「2メートルは開けろ」となるのかもしれません。
ただ、この案内ばかりが毎日強調されたために、人間が人間に近づくと感染するかのような出来事になって普及しているのかとも思います。
補足が長くなりましたが、本件の懲戒処分は行き過ぎであり、権利濫用にあたると考えます。
ご参考になりましたら幸いです。
【2020.05.01】