交通事故の被害者(ここでは個人とします)が破産した場合、その被害者が有することになる損害賠償請求権はどうなるでしょうか(そんなことあるのか?と思われるかもしれませんが、なぜか結構あります・・・)。
破産財団に属するとされて破産者の手元には入らないのか、「自由財産」として破産者のものになるのか、という問題です。
1 破産手続開始後に交通事故が起きた場合
この事故に基づく損害賠償請求権は、破産者のもの(自由財産)になります。
2 破産手続開始前に交通事故が起きた場合
破産法では、「破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産」は破産財団とするとされています(破産法34条1項)とされています。そのため、交通事故が破産手続開始前であれば、それに基づく損害賠償請求権も破産財団に帰属し、破産者のものには1円も入ってこないのではないかと思われます。
もっとも、実際には、損害の性質に応じて、個別の検討が必要となります。
①財産的な損害
物損の損害賠償請求権は、破産財団に帰属し、破産者のものにはなりません。
治療費は、被害者である破産者の生命や身体の回復にかかわるものですので、自由財産とされると考えられています。介護費用や入院費用も治療関連費なので、同様です。
休業損害や逸失利益については、破産財団に帰属するとされていますが、本来もらうべきだった将来の給与が減るという側面もあります。このようなことから、かなりの部分(全部のこともあり得ます)について自由財産とされると考えられます。
②精神的な損害(慰謝料)
これについては、一応、破産財団に帰属するとされています。
ただ、慰謝料は、精神的な損害の補填であり、本来破産財団を構成したはずのものとも言えませんので、その全てを破産財団がもっていくということは妥当ではないとされています。実務上では、相当部分について自由財産の拡張が認められることが多いようです。
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