柯宗明 著 , 栖来ひかり 訳『陳澄波を探して 消された台湾画家の謎』(原題:陳澄波密碼)読みま | J'aime・・・

J'aime・・・

私の好きな台湾、五月天、そして宝塚。
好きなものに囲まれた日常の出来事を書き留めていきます。

台湾で2018年に刊行された柯宗明さん著の『陳澄波密碼)』 を 2024年栖来ひかりさんにより訳された『陳澄波を探して 消された台湾画家の謎』を読みました。

 

本のあらすじ、実在の画家 陳澄波さんの紹介は、台湾の、本や本屋さんにまつわるあれこれを、日本の出版社や読者に向けて発信しているユニット「太台本屋」さんの記事を参照ください。

 

 

本 感想 本

 台湾では、実在した画家 陳澄波さん(1895~1947)を語ることが、1990年代までタブーだった事実に愕然としました。ちょうどこの本を読んでいた5月半ば、与党・民進党の頼清徳さんが新しい台湾総統に就任されました。そして、最大野党国民党が民進党よりも議席を上回るという立法院院会(日本の国会にあたるもの)の強制決議に対する台湾国民のデモが起きました。私の台湾人の友人もこのデモに参加していたので、とても心配でした。改めて、台湾という国、そこに暮らす人々が歩んだ苦難の歴史、それに関わった日本や中国、歴史に翻弄される台湾アイデンティティーの葛藤。自分たちの民主と自由を守るため、いとも簡単に消されたたくさんの命を思うと胸が締め付けられました。

 この本を読むことで、1900年~1947年起きた台湾の歴史が分かると共に、近代台湾の美術史や文化史が分かります。その中には、台湾人にとっての祖国とはなにか?アイデンティティーはなにか?に葛藤した人たちの苦悩を含めた歴史を知ることができます。ぜひ、多くの方に読んでいただき、台湾が歩んだ真実を知ってほしいです。

 物語の舞台は台湾南部に位置する嘉義。阿里山への入り口であり、映画「KANO」でも脚光を浴びた場所です。私も何度か訪れ、たくさんの思い出があります。この本を読みながら、私が訪れた時に待ち合わせしたあの嘉義火車站で、あの公園で、あの噴水で、わずか80年程前にあのような出来事があったことを忘れてはならないと思います。楽しい思いで一杯の嘉義。この本を読み、もう一度行きたくなりました。陳澄波さんが描いた、人々が暮らす嘉義を観光という目線だけでなく、絵画の世界を感じる旅、そこで起きた歴史に触れる旅をしてみたいと思いました。そして、最後に陳澄波さんが着ていたで白いシャツが展示されている台北の「二二八記念館」へも行こうと思います。

 

 本を読みながら「陳澄波さんは、あの時の、あの場所に…」と記憶が甦りました。ブログにもその記事が残っていました。10年程前の記事で、随分とご陽気な内容ですが、懐かしく読み返しました。当時、陳澄波さんをさらっと流してしまい申し訳なくも思っています。もっと早く、もう一歩踏み込んでいたらと思いつつも、10年の歳月を経てこの本に出会い、陳澄波さんに触れられたことに感謝しています。

 

余談ですが、この時一緒に旅した我的小小男朋友小沐は、現在19歳。カメラ好きの彼は、写真の道に進んでいます。