著者の栖来ひかりさんは、台湾で話題の作家さん。『在台灣尋找Y字路/台湾、Y字路さがし』。(玉山社/2017) 『山口,西京都的古城之美:走入日本與台灣交錯的時空之旅』(幸福文化) という本を出版されれいます。この本、『台湾と山口をつなぐ旅』(西日本出版社/2018)は、栖来ひかりさんのはじめての日本語の本です。
内容紹介
山口出身で台湾をベースに活躍する作家が、故郷である山口県と台湾とのつながりに焦点を当て、台湾と関わりのある先人たちの足跡を描いたエッセイです。
明治維新を彩った山口出身である桂太郎、乃木希典、児玉源太郎、佐久間左馬太、上山満之進が、台湾で総督を歴任。
芝山巌事件や二二八事件など様々な記録をなぞりながら山口の街をめぐると、目の前に現れるそこかしこに残る台湾の記憶。明治・大正・昭和・平成の時代を越えて山口と台湾で交錯しています。
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感想
台湾と山口がこんなに深い関係にあったとは驚きです。海を越えて台湾と山口はつながっているんです。
歴代台湾総督の中で、山口県出身者が5人もいるとは驚きです。それだけじゃなく、芝山巌事件で殉職した「六氏先生」の一人、楫取道明は、吉田松陰の甥であり、山口県知事を務めた小沢太郎が湾生で、二二八事件で殺害された台湾人銀行家陳炘の友人だったとか。他にも、鉄道技師・長谷川謹介や同じく建築技師の野村一郎も山口県出身。瑞芳の鉱山を開発した藤田組創業者の藤田傳三郎、実業家の賀田金三郎や三巻俊夫も山口県出身。台北の菊元百貨店の重田栄治や台南の林百貨店の林方一も同じ山口県出身。ページをめくるたびに台湾と山口の関係に驚きです。
まだまだあります。台湾人ピアニストの高慈美が留学したのは、下関の梅光女学院。台湾の画家陳澄波の行方不明だった作品「東台湾臨海道路」が見つかったもの山口県(2005年)。磯栄吉が開発した蓬莱米のルーツは山口県のお米、穀良都。李登輝の指示で育成事業が始まった「源興牛」のルーツも山口県の「見島牛」だとか。これを知っただけで山口へ行ってみたくなりました。
著者が旅した街は…
山口 長門 萩 美祢 山陽小野田 宇部 新山口 防府 周南 下松 柳井 岩国 下関 小倉
山口には行きたい場所が満載です。
行きたい場所に付箋を貼りながらよんでいきました。
こんなにたくさんの付箋に自分自身も驚いてます
美祢市
・秋芳洞(秋芳洞の出口を内側から眺めたら、その出口の形が台湾にそっくりらしい)
・美祢のクイーンズヘッド(美弥市が友好提携を結んでいる台湾の野柳地質公園から送られたモニュメント)冬のある日、雪の降り積もったクイーンズヘッドの写真が台湾のSNSで話題を呼んだそうです。
周南市
・第四代台湾総督:小玉源太郎誕生の地
・小玉神社には李登輝元台湾双頭の言葉が刻まれた記念碑や、台湾五葉待つの大木がある
・漢陽寺の地蔵遊化の庭
下松市
・笠戸島、笠戸大橋
・笠戸島の国民宿舎大城→ここから見る瀬戸内の島々が美しい
岩国市
・錦帯橋
門司市
・門司港地ビール工房(門司で作られたビールが台湾に運ばれたらしい。台湾のサクラビール)
下関市
・日清講和条約(下関条約/馬関条約)が調印された春帆楼
・関門海峡を歩いて渡る(山口から福岡へ)
・安徳天皇入水の場所「みもすそ公園」
台湾と山口のつながりを知ると共に、山口への誘いとなるこのエッセイ。ぜひお読みいただきたいと思います。
まだまだ暑いですが、季節は秋へと近づいています。読書の秋、BGMは五月天。秋の夜長は眠れない