野嶋 剛著『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』読みました | J'aime・・・

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私の好きな台湾、五月天、そして宝塚。
好きなものに囲まれた日常の出来事を書き留めていきます。

 2018年6月の発売以来ずっと読みたかった本、野嶋 剛さんの『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』を読みました。野嶋さんの本は殆ど全部読んでいます。どの本も、日本、台湾、中国のことがとても分かりやすく書かれています。台湾好きなら一度は読んで頂きたいジャーナリスト、野嶋さんの本です。

 

■内容紹介■

彼らがいたから、強く、深くつながり続けた
戦前は「日本」であった台湾。戦後に「中国」になった台湾。1990年代の民主化後に自立を目指す台湾。戦争、統治、冷戦。常に時代の風雨にさらされ続けた日本と台湾との関係だが、深いところでつながっていることができた。それはなぜか。 台湾と日本との間を渡り歩いて「結節点」の役割を果たす、多様な台湾出身者の存在があったからである(前書きより)

台湾をルーツに持ち、日本で暮らす在日台湾人=タイワニーズたち。元朝日新聞台北支局長の筆者が、彼らの肖像を描き、来歴を辿りながら、戦後日本の裏面史をも照らす。

■目次■
蓮舫はどこからやってきたか
・日本、台湾、中国を手玉にとる「密使」の一族 辜寛敏&リチャード・クー
・「江湖」の作家・東山彰良と王家三代漂流記
・おかっぱの喧嘩上等娘、排除と同化に抗する 温又柔
・究極の優等生への宿題 ジュディ・オング
・客家の血をひく喜びを持って生きる 余貴美子
・「551蓬莱」創業者が日本にみた桃源郷 羅邦強
・カップヌードルの謎を追って 安藤百福
・3度の祖国喪失 陳舜臣
・国民党のお尋ね者が「金儲けの神様」になるまで 邱永漢
 

 

■感想■

 日本で生まれ、日本人である私。もちろん、国籍は日本、そして母国語である日本語を話す。それは、両親も、祖父母も、その前のご先祖様も皆同じでした。台湾を知るまで、それが当たり前であり、みんなそうなんだと思っていました。台湾に暮らす人びとは、決してそうではありません。日本で暮らす台湾出身者の背景も複雑です。その複雑な歴史の中に、日本が大きく影響しています。台湾統治、台湾放棄、中華民国(台湾)との断交という日本政府の方針が、台湾や台湾に暮らす人、日本で暮らす台湾に人の進路や運命をを何度も惑わせたのです。だから私は、台湾から目が離せないのです。読みながらそんな思いが一層強くなりました。

 

  どの登場人物の紹介も面白かったです。面白かったというより、驚きが多かったです。特に印象深かったのは、蓮舫の章。二重国籍問題は記憶に新しい出来事でした。蓮舫のファミリーヒストリーもとても面白かったです。かっこよく生きた祖母、陳杏村さん。バナナで財を成した話は、台湾朋友さんから教えてもらっていたので、とても分かりやすかったです。そして、哀しいく、悲しいと思ったこと、それは蓮舫の口から出た「生まれた時から日本人」という言葉。政治家・蓮舫、民進党を牽引していく蓮舫にとっては、複雑すぎる心境があったと推測できます。それでも、この言葉は、哀しく、悲しいのです。

 ジュディ・オングも面白かった。そして、名前はよく知ってるけど、著書を読んだことがない陳舜臣、邱永漢の章も面白い。

 

 この本には、コラムもあり、二重国籍問題、台湾独立運動の今昔、台湾人と日本語文学、客家の背景、台湾ラーメンのこと等も分かりやすく説明されています。その中で、やはり、心に刺さるのは「2.28事件と白色テロの傷跡」というコラムです。侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の『悲情城市』は、観なければと思いました。

 

 台湾人に住む人の中には、「日本は台湾を二度捨てた」という方がいます。胸が痛い言葉です。「捨てたんじゃない…」という映画「海角7号」の台詞も浮かんできました。台湾と日本の複雑故に切り離せない関係、大切に育んでゆかねばならない関係に着目し、もっと台湾を知りたいと思わせてくれた1冊です。機会があればぜひ、お読みくださいねYonda?