親戚みんなが帰ったあと、父親はこう言った。
「今日はもう、眠りたい。」
まだ日は高かったが、医者に話し、睡眠薬を投与してもらった。
そして、これが最後の言葉になった。
夜中、まるで迎えが来ているかのように、空中に手を伸ばす父。父親の周りを走る得体の知れない黒い影。
もう意識もない。ただ、腕を空に伸ばす。それがなんだか嫌で嫌で、逝かせまいと手を握った。まだ生きているのに、冷たかった。
そして5月14日午前11時。父親の心音は聞こえなくなった。
「もういいよ。よく頑張ったね。」
母親はそう言いながら、泣きながら、手を握った。頭を撫でた。
自分も泣いた。嫁も泣いてくれた。
空はずっと遠くまで青かった。