ご案内の順序が前後してしまいました。

来月、7月から、当会は「第12期」に入ります。下記が、12期1年間の鑑賞演目です。

入会は随時受付で、入会から1年間、12演目の鑑賞ができます。

(来月でなく、他の月からの入会の場合は、入会月から13期まで延長しての12演目鑑賞となります。)

 

映像オペラを楽しむ会/2025~2026年度《第12期》演目一覧

01)ヴェルディ「アイーダ」(7月24日開催)

  古代エジプトを舞台にした大規模な「歴史絵巻」と思われがちなオペラですが、その陰に二人の女の葛藤が…

02)レハール「メリー・ウィドゥ」(8月21日開催)

  ヨハン・シュトラウス「こうもり」と並んで、ウィーンの街の人々に大人気の傑作オペレッタ! 名舞台で鑑賞を!

03)プッチーニ「マノン・レスコー」(9月25日開催)

  若きプッチーニの名声を不動にした傑作。じつは人気の大ベストセラーのオペラ化を、さらにリメイクした作品でした

04)マスネ「マノン」(10月16日開催)

  このマスネの作品と同じストーリーに敢えて二番煎じで挑戦したのがプッチーニでしたが、この2作、未だ対決中!

05)モーツァルト「フィガロの結婚」(11月20日開催)

  低迷していたイタリア・オペラに「喝」を入れたモーツァルトの傑作オペラ。数多い録画から今回は、どんな名唱が?

06)ウェーバー「魔弾の射手」(12月18日開催)

  ドイツの国民オペラは、深い神秘の森の中から生まれた? ワーグナーが影響を受けたドイツ・オペラの原点を!

07)プッチーニ「ラ・ボエーム」(2026年1月開催予定)

  青春の光と陰を美しく歌い上げ、作曲者自身が書いていた楽譜に涙を落したと伝えられる感動作。名舞台を厳選

08)ギルバート&サリバン「ミカド」(2月開催予定)

  〈日本ブーム〉の中で制作された喜劇オペラ。その荒唐無稽ぶりが災いし大正時代の日本では上演禁止の幻作に

09)ボロディン「イーゴリ公」(3月開催予定)

  作中の「ダッタン人の踊り」が有名ですが、全曲を鑑賞した人はなかなかいません。ロシア・オペラの傑作をぜひ!

10)ドニゼッティ「愛の妙薬」(4月開催予定)

  ロッシーニに続いて美しい〈ベルカント・オペラ〉を書き続けたドニゼッティ。イタリア・オペラの精華を名舞台で鑑賞

11)ベルク「ヴォツェック」(5月開催予定)

  現代人の不安を描いた20世紀オペラの傑作には刺激がいっぱい! 今こそ、生と死を改めて問い直したい傑作

12)ヴェルディ「オテロ」(6月開催予定)

  イタリア・オペラの巨匠が晩年に辿り着いた世界はシェイクスピアの悲劇に触発された心理劇。名唱で聴く心の闇を

月に一度、大スクリーンでオペラ演目のライヴ映像を鑑賞している愛好会です。7月開催日は、いつもの第3木曜日が取れなかったので、第4木曜日の7月24日です。

内容は、ヴェルデイ『アイーダ』です。

会場は、東急線「元住吉」下車、川崎市国際交流センター、大ホールです。

開場は13時05分、開演13時25分、終了予定17時。

鑑賞は、年12回6000円の会員になっていただくか、

1回鑑賞券1500円、のいずれか。

どちらも、当日、会場にて受け付けますので、

開場時間までに、おいでください。

 

以下は、当日も上映前に解説をしてくださる音楽評論家、竹内貴久雄さんの

演目紹介文です。

  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~

§ 晩年のヴェルディが創作意欲を取り戻した〈古代の恋愛物語〉

 ヴェルディは、23番目のオペラ『ドン・カルロ』を1867年に初演した時にはまだ50歳代でしたが、自らの〈理想のオペラ〉を書き終えたという思いがあって、その後は、悠々自適の生活に入ってしまいました。その背景には、愛国者だったヴェルディの念願だった〈イタリア独立〉が成立したということもあったと思われますが、そうしたヴェルディに〈新作オペラ〉を書かせるために、ヴェルディの関心を引く題材として提示されたのが、この『アイーダ』です。これが契機となって、引退を決めていたはずのヴェルディは、結局、その後に『オテロ』と『ファルスタッフ』と、2作も完成させて世を去ることとなりました。

 アイーダには、いわゆる「原作」という〈物語本〉はありません。ルーブル美術館からエジプトに派遣されたフランスの考古学者オーギュスト・マリエット(1821~1881)が、自らの研究と学識経験をもとに、ストーリーの「原案」を発想・作成し、それをフランスの作家カミーユ・デュ・ロークルが散文で台本化したものが、ヴェルディの新作オペラのために用意されたのです。

 「考古学者オーギュスト・マリエットが〈発想〉した」と言うのは、それが決して学問的に根拠のある事実ではなく、マリエットの空想の産物だからです。マリエットは10代の頃から古代エジプトに関心を寄せる青年でした。勉学に励み、その甲斐あって1849年にはルーブル美術館考古部にポストを得て、翌年、念願かなってエジプトに派遣されたという人です。マリエットは、本来の目的だった古文書の蒐集の傍ら、神殿の発掘作業に熱中する日々を過ごしていたといわれています。そして1858年には、新たに創設された「エジプト考古局」の初代長官に就任し、アスワンから地中海沿岸に至る35カ所の発掘地点で、3000人の作業員を使って発掘作業を指揮・監督しましたが、やがて、そうした出土品をフランスへと持ち出すことに疑問を持つようになり、エジプトのカイロに考古学博物館を設立する運動を興したという〈エジプト愛〉の人なのです。

 そのマリエットが1870年に書いた古代エジプトを舞台とした架空の若い男女の悲恋物語が、オペラ『アイーダ』の原案です。発掘作業で発見した一組の男女の遺体にインスピレーションを得たと言われています。いわば〈抱き合って心中した男女のミイラ〉です。そこから生まれた空想の物語が、老いたヴェルディの最後の〈創作意欲〉を目覚めさせたのです。

 マリエットは、オペラ『アイーダ』創作の過程でも協力を惜しまなかったと伝えられています。考証的な観点から、衣装、舞台装置の作成にも関与しているというのです。

 そんな「古代のロマン」を、ヴェルディの名旋律に乗せてお送りします。お楽しみに!

月に一度、大スクリーンでオペラ演目のライヴ映像を鑑賞している愛好会です。6月開催日は、いつもの第3木曜日、6月19日です。

内容は、ワーグナー『さまよえるオランダ人』です。

会場は、東急線「元住吉」下車、川崎市国際交流センター、大ホールです。

開場は13時05分、開演13時25分、終了予定17時。

鑑賞は、年12回6000円の会員になっていただくか、

1回鑑賞券1200円、のいずれか。

どちらも、当日、会場にて受け付けますので、

開場時間までに、おいでください。

 

以下は、当日も上映前に解説をしてくださる音楽評論家、竹内貴久雄さんの

演目紹介文です。

 

■ワーグナー・オペラの〈原点〉となった世界を堪能する

 『さまよえるオランダ人』は、ワーグナーにとって青春期の作品のひとつですが、生涯にわたってひたすら追い続けていたテーマ、すなわち「永遠に安息が得られない男性の苦悩を救うことができるのは、女性の自己犠牲による救済のみである」という考えを、表現の中心に据えた最初の作品でもあります。言い換えるなら、ワーグナー・オペラの原点といえるのが、この『さまよえるオランダ人』です。

 ワーグナーが、この物語を発想したきっかけは、1837年、24歳の時のことです。ドレスデン歌劇場での見習い指揮者を経て、楽長となって赴任したバルト海に面したラトビアの首都リガに滞在中、ハインリヒ・ハイネ(1797-1856)が書いた『シュナーベレウォプスキー氏の回想』と題された物語集に収録された「さまようオランダの幽霊船」伝説に強く興味を持ったのです。それは、「このオランダ船の船長は、7年ごとにしか岸に着くことが許されず、その時に出会った女性の献身的な愛を受けることができるまで、洋上を漂い続けるしかない」というものでした。この設定が受け継がれて、数年後にワーグナーによって創作された物語が、オペラ『さまよえるオランダ人』です。

 1839年の暮、野心家で誇大妄想癖のあったワーグナーは、多額の借金を負ってラトビアを逃げ出し、起死回生を狙って海路パリへと向かいました。ところが、途中で激しい嵐に遭遇し、船がノルウェーのサンドヴィーケ港に緊急避難。この時に閃いたのが、この物語です。

パリに到着後、貧困生活の中で構想を進めて台本スケッチを書き上げ、オペラ座の支配人に直接持ち込みました。ところが、この支配人は、ワーグナーにわずかばかりの謝礼金を渡しただけで、このアイデアを別の台本作家、作曲家に発注してしまったのです。

 自作のパリ公演を断念したワーグナーは、自ら10日間で台本を書き上げ、その後、わずか7週間で作曲を終えています。一気呵成に書き進められたのは、青春の閃きの成せる力ですが、この。せっかくの「素晴らしい発想のオペラ」を、他人に先を越されたくないという強い思いもあったからだと考えていいでしょう。それほどに、この『さまよえるオランダ人』の物語は、若きワーグナーを夢中にさせたものでした。

幸い『さまよえるオランダ人』は1843年1月に、ドレスデン歌劇場で初演されましたが、当時の聴衆は、ワーグナーのこれまでと大きく異なった〈新しいオペラ〉の様式が受け入れられず、たった4日間で上演は終わってしまいました。今では考えられないことです。

 ワーグナーが、『タンホイザー』で一流のオペラ作家の仲間入りをする直前、ワーグナーの〈出発点〉となった意欲作『さまよえるオランダ人』が6月の演目です。お楽しみに。