月に一度、大スクリーンでオペラ演目のライヴ映像を鑑賞している愛好会です。7月開催日は、いつもの第3木曜日が取れなかったので、第4木曜日の7月24日です。

内容は、ヴェルデイ『アイーダ』です。

会場は、東急線「元住吉」下車、川崎市国際交流センター、大ホールです。

開場は13時05分、開演13時25分、終了予定17時。

鑑賞は、年12回6000円の会員になっていただくか、

1回鑑賞券1500円、のいずれか。

どちらも、当日、会場にて受け付けますので、

開場時間までに、おいでください。

 

以下は、当日も上映前に解説をしてくださる音楽評論家、竹内貴久雄さんの

演目紹介文です。

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§ 晩年のヴェルディが創作意欲を取り戻した〈古代の恋愛物語〉

 ヴェルディは、23番目のオペラ『ドン・カルロ』を1867年に初演した時にはまだ50歳代でしたが、自らの〈理想のオペラ〉を書き終えたという思いがあって、その後は、悠々自適の生活に入ってしまいました。その背景には、愛国者だったヴェルディの念願だった〈イタリア独立〉が成立したということもあったと思われますが、そうしたヴェルディに〈新作オペラ〉を書かせるために、ヴェルディの関心を引く題材として提示されたのが、この『アイーダ』です。これが契機となって、引退を決めていたはずのヴェルディは、結局、その後に『オテロ』と『ファルスタッフ』と、2作も完成させて世を去ることとなりました。

 アイーダには、いわゆる「原作」という〈物語本〉はありません。ルーブル美術館からエジプトに派遣されたフランスの考古学者オーギュスト・マリエット(1821~1881)が、自らの研究と学識経験をもとに、ストーリーの「原案」を発想・作成し、それをフランスの作家カミーユ・デュ・ロークルが散文で台本化したものが、ヴェルディの新作オペラのために用意されたのです。

 「考古学者オーギュスト・マリエットが〈発想〉した」と言うのは、それが決して学問的に根拠のある事実ではなく、マリエットの空想の産物だからです。マリエットは10代の頃から古代エジプトに関心を寄せる青年でした。勉学に励み、その甲斐あって1849年にはルーブル美術館考古部にポストを得て、翌年、念願かなってエジプトに派遣されたという人です。マリエットは、本来の目的だった古文書の蒐集の傍ら、神殿の発掘作業に熱中する日々を過ごしていたといわれています。そして1858年には、新たに創設された「エジプト考古局」の初代長官に就任し、アスワンから地中海沿岸に至る35カ所の発掘地点で、3000人の作業員を使って発掘作業を指揮・監督しましたが、やがて、そうした出土品をフランスへと持ち出すことに疑問を持つようになり、エジプトのカイロに考古学博物館を設立する運動を興したという〈エジプト愛〉の人なのです。

 そのマリエットが1870年に書いた古代エジプトを舞台とした架空の若い男女の悲恋物語が、オペラ『アイーダ』の原案です。発掘作業で発見した一組の男女の遺体にインスピレーションを得たと言われています。いわば〈抱き合って心中した男女のミイラ〉です。そこから生まれた空想の物語が、老いたヴェルディの最後の〈創作意欲〉を目覚めさせたのです。

 マリエットは、オペラ『アイーダ』創作の過程でも協力を惜しまなかったと伝えられています。考証的な観点から、衣装、舞台装置の作成にも関与しているというのです。

 そんな「古代のロマン」を、ヴェルディの名旋律に乗せてお送りします。お楽しみに!