台風19号は、強い風と横殴りの雨で、

国東半島では久々に台風らしい台風だった。


であったのに、大きな被害がなかったのは何よりである。


とは言え、道路の冠水もあったし、

昨日は行方不明者騒動もあったのだそうだ。


市道に土砂が崩落しているのを住民が見つけた。

しかも、近くに住む老人一人が見当たらないというのだ。

もしかしたら、その土砂に埋まっている可能性もゼロではない。


消防などが出動して、その土砂を取り除く作業が、

注意を払って進められたのそうだ。


しばらくして、老人が帰ってきた。

山間にある池と、

あふれ出て農業用水路に流れる水量を、

見に行っていたのだという。


テレビやラジオで、

むやみに外に出ないよう、

川や海に近づかぬよう…と、

何度も注意している。


その一方で、強風にあおられて転倒したとか、

川に転落したとい事故のニュースも伝えられている。


被害者は、たいてい50過ぎだ。


「何でこの強風の中、

 雨に打たれて、

 川や水路の水位を見に行かなくっちゃならんのだ?」

と、昔はよく思ったていたものだ。


でも、60歳が近づいた50代後半頃から、

その気持ちがよく分かるようになっきた。


もう、10年ほど前のことだったか…。

近づいてきた台風は、

報道から予想していたよりも、ずっと強烈な風をともなっていた。


洗濯干し場の樹脂製の波トタンの釘が飛んだようだった。

パタンパタンと、激しい音を立て出した。

このままだと、次から次と飛んでしまう。

しかも、飛んだ波トタンが、二次災害をおこす危険だってある。


ビュービューの風が吹き荒ぶ中、

年老いた父と、慌てて屋根に上がった。

ブロックなどで重しをして、その場をしのいだ。

二人とも落ちたりせずに良かった…

他所で屋根から転落して亡くなった方のニュースを聞いて、

そう思ったものである。


早くから対策をしておけばすむものを…

思ったより大した台風じゃなかった時、

徒労に似た疲労感を思うと、なかなか対策を始めないのだ。


そんな訳で、いつも台風の風や雨がピークに近づいた頃、

日頃危なっかしいと思っていた箇所の見回りが、やっと始まる。


今回も、早朝4時ころから風が強くなった。


「しまったぁ~

 アソコのシャッター壊れていたんだっけ。

 早めに修理しておけばよかったな…」

と、ビュービューと寝室の雨戸を揺らす風に、

悪いことばかり考え始める。


6時過ぎ、薄暗くなったところで土嚢をこしらえる。

シャッターの支柱を支えるための土嚢だ。

雨も風もない前日に、済ませておくべき作業だと後悔する。


そして、最接近間近の、昼前。

隣町の集落に、河川氾濫の避難勧告が出た。

昭和36年の大水害のことが頭をよぎる。

隣町とわが町は、台風による大雨と高潮で、

河川が氾濫し、家を流失したり、

死者を出す大きな被害を出したのだ。


「ニュース速報で隣町に避難勧告が出たけど…?」

と、安否の電話もかかってきた。


消防団員の頃の記憶もよみがえる。

河口に近いこの地域は、満潮時と重なると、

川の水位がかなり上昇する。

排水できなかった雨水が、道路にあふれ出てしまう。

床下浸水が始まるのだ。
消防団員として、土嚢を積んだり、

下流の住人を避難場所に運んだりした。


過去の経験と知識からして、現在の状態が知りたくなる。


かくして、人生の経験を積んだ者は、

外に出るのである。


しかし、肉体は衰えてしまっていることに、

あらためて気づかされる。

さした傘が風にあおられ、

足腰の弱い体ごと飛ばされそうになったりする。


思ったほど川は増水していない。


ホッとして、この嬉しい景色を、

心配している他の人と共有しようと、

スマホの動画を取ろうとする。


両手でスマホを構える。

突然、首と右肩で挟んだ傘が、

吹き飛ばされそうになる。


で、やっと撮った動画をフェイスブックにアップした。


台風19号の暴風域にある故郷に残した家族を案じていた人からは、

思ったより少ない水量に安心したコメントをもらったりした。


一方、

「川に流された行方不明者は、

 近くの川の水量を確かめに行く人たち。お気をつけ遊ばせ…」

などと、心配してくれる輩も現れる。


その中に、貴重な情報が。

そんな危ないところをほっつき歩かずとも、

「河川監視カメラ」なるものが設置されているというのだ。


それを見た。

おお、わが見慣れたわが家の前の川が映っているではないか。

動画ではないが、タイムリーな画像のようだ。


これでもう、この次に台風が近づいても、

川の水位を確認に行く必要はなくなった。


何より、この地に育ち、故郷を愛する人たちが、

台風の度に、残した父母の住む故郷の川の水位を心配する必要はない。

しかも、故郷の四季の様子や、

潮の干満で姿を変える故郷の川の様子も楽しむことができる。


こりゃ、過疎の進む田舎にもっと設置したらいいなぁ~



《 Qとんの所在地に、故郷をもつ皆様へ 》


 あなたの育った「小ブナ釣りしかの川」のタイムリーな映像が、

 ネットで見られますよ。
 知りたい方は、Qとんに個人的にメッセージを…