拝啓 この秋最愛の人に嫁ぐ、Mちゃんへ


Mちゃん


オイちゃんは、今日、

友達のお見舞いに、あの病院に行っていたのです。

友達は、見舞いの相手をするのが煩わしいのか、

入院情報を非公開にしているようでした。


受付の人に尋ねても、

「その名前の方は入院していません」

と冷ややかに応えられるだけで、

友達の携帯に電話をしても、

「只今、電波の届かないところか、

 電源が切れているため…」

という機械的な応答だけで、

ツーツーと切れてしまいます。


1時間ちょっとの時間をかけてやって来たというのに、

どうしたものか・・・と、途方に暮れていたところでした。


その時です。

Mちゃんのお母さんから、ふいに声を掛けられたのは。


夕方の5時に近い時間。

大分県で一、二の大きな病院とは言え、

ほとんど人のいないロビーで、

「Qとんさん、Qとんさん!」

と呼びかけられたのです。

さすがのオイちゃんも、驚いてしまいました。


声の主を探すと、

ロビーには、Mちゃんのお母さんと、

そして、この秋に結婚を控えたMちゃんが立っていました。


どうして、結婚を間近にした女性は、

光り輝いているように美しいのでしょう。

小さい頃から良く知っているMちゃんだけど、

本当に眩しいくらい綺麗でした。


繰り返しますが、

オイちゃんは、友達の見舞いに行っていたのです。

しかも、その友達の病室が分からず、

どうしたものかとうろたえている時でした。


二人を見つけて、

特に、眩いばかりのMちゃんを見て、

狼狽したのは想像できるでしょ。


「え、誰か悪いの?」


こう言ったのは、

Mちゃん達も誰かのお見舞いに来ているのだろう、

と思ったからです。


後で落ち着いて考えれば、

その病院に二人がいる理由など、自明の理でしたね。


二人して、怪訝そうな顔をしました。

こう見えてもオイちゃんは、

他人の顔色を読み取るのは得意なのです。


ところが、今日に限って、

読み違えてしまいました。

こりゃ、内緒で来ているんだな…

と思ってしまったのです。


「Mちゃん、赤ちゃんできたの?」


Mちゃんの顔色が変わるのが分かりました。

お母さんが遮るように、きっぱり言われましたね。


「Rイチ君の検査!」


そうでした。

うっかり忘れてしまっていました。

Mちゃんのお父さん、

オイちゃんの大の酒飲み友達のRちゃんが、

この病院で定期的に検査を受けながら、

治療をしていたことを、すっかり忘れていました。

いの一番にお父さんの、

今日の検査結果を案ずるべきでした。


「え~、オイちゃん、

 私が出来ちゃった結婚だと、思うちょんの?

 オイちゃんもこの病院に、

 お父さんと一緒に入院しよっ!!」


本当にごめんね。


しっかりした厳しい家庭に育ち、

Mちゃんもご両親の期待に応えて、

聡明で美しい淑女となったというのに…、

出来ちゃった結婚など、

あろうはずもありません。


でも、悪い意味で言ったんじゃありません。


言い訳がましいけど、

もうオイちゃんの歳になると、

結納のめでたさも、

婚礼のめでたさも、

赤ちゃんが出来たというめでたさも、

どれもそう変らないおめでたい出来事なのです。


おめでたい事が重なったつもりで言ったんだけど、

この秋に厳粛な挙式を控え、

純粋で潔白な花嫁として嫁ぐMちゃんには、

失礼な言葉でした。


本当に、ごめんなさいね。


大好きな彼と厳粛な式典を挙げ、

幸せな家庭を築いてくださいね。

そして、早く玉のような赤ちゃんに恵まれますよう。

オイちゃんも、心から祈っています。


そばにいたお母さんと、

きっと帰りの車の中で、この話題になったでしょう。

それを聞いて、

烈火のごとくお怒りになったであろう父上にも、

くれぐれもよろしく、お詫びしておいてください。


                       敬具