昨夜は、知人の見舞いから戻って、遅い夕食。

先にすませた家内がテレビに見入っている。


どうやら野球観戦のようだ。

日本シリーズの第5戦。

3勝1敗のソフトバンクホークスが勝てば、優勝である。

試合は、もう中盤戦…


冷えた缶ビールでの野球観戦は、

暑い夏と相場が決まっている。

数日前から夕刻になると、肌寒く感じるこの季節には、

海水浴客の減った夏の終わりの浜辺のようで、

野球観戦には似つかわしくないな…

と、そんなことを思ったりする。


決勝戦にふさわしい投手戦。

スコアボードには、ゼロが並ぶ。


 次男坊 が始球式で、ドームのマウンドに立った…

 ありゃ、小学校の何年生の時だったかな…?


 スーパーボックスのベランダ席で、

 ビールジョッキー片手に大声で声援したっけなぁ~

 あれは、何のグループで行ったんだったかな…?


 そういや、大のホークスファンが高じて、

 博多に移り住んだシンちゃんは、

 今夜もきっとあの大応援団の中、
 きっと、メガフォン振って踊っているに違いない…


ビールのアテには、派手な打撃戦の方がいい。

ゼロが上下に6つも7つも並ぶと、玄人向きの野球となる。


今一つ盛り上がらない声援の中で、

昔の子育ての懐かしい時代を思い出したり…、

観客の中に混じっているシンちゃんを探そうたって、

若い女の子のアップばかりじゃ、見つかりっこないと、

偏った趣向のカメラマンに腹を立てたり…、

酒の酔いも手伝って、どうやら集中力にかけてきたようだ。



「ダレに電話しているの?」

「シンちゃん…」

「あの騒ぎの中じゃ、着信音が聞こえる訳ないじゃない。」


いつの間に始めたのか、

孫のセーターを編んでいた妻が、

手を休めて言う。


やはり、投手戦の変わりばえのしない展開に、

シンちゃんがあの中のどこかにいないだろうか…

とか、思っていたに違いない。


大分県出身の内川と今宮以外、顔も知らない選手が多い。

かつてホークスファンを公言して、

ファンクラブ・カードも持っていた我われ夫婦にとって、

あのカードは野球好きの子供たちの、

子育て真っ最中の証みたいなものだったのだ。


ビールから焼酎のロックに替えて、

すっかり酔っぱらった頃、決着がついた。

福岡ソフトバンクホークスの1-0で優勝が決まった。


秋山監督が、宙を舞う。

我われがドームに通った頃、秋山は主流の選手だった。

秋山監督はこの試合を最後に、ホークスを去るのだという。


あぁ~また一つ、思い出の時代が終わったな…
そんな寂寥感も、野球を眺めながら、

子育て時代を回想していたからだと思う。


風呂に入って、髪を拭いているところに電話が鳴った。

時計の針は、午後10時45分。

シンちゃんからだ。


「何かぇ? 電話もらっちょったみたいだけど…

 もちろん、今、ドーム!

 えっ? 急な用じゃないんかぇ?

 それじゃ悪りぃけど、電話切るで!

 これからパレードが始まるけん…

 写真を撮らなならん… 」


それだけ慌ただしく言って、電話は切られた。


シンちゃん、ホント若いわ。


外野応援席の通年チケットを購入して全試合応援して、

球場でできた若い応援友達に、

声援用のプラカードを作成してあげて…


「ワシのことを、きっと64、5歳くらいにしか見ちょらん…」

と、笑う。

70代半ばを過ぎたというのに、気持ちも格好も若い。


高齢化社会の到来…。

社会の大問題だと世間は騒いでいるが、

シンちゃんみたいな高齢者ばかりだったら、

何ら心配する必要はないのかもしれない。


感慨深く昔を懐かしんでいたのが、

妙に恥ずかしくなった夜のヒトコマ…である。