先日、「東京ふるさと国東市会」なるものに、
ご招待いただいた。
朝一便の飛行機で大分空港を発つ。
そのまま御茶ノ水駅近くの会場に直行する。
家を出てから、3時間。
10時20分には到着した。
11時から始まる総会にも出席させていただいた。
役員さん方の手回しの良さで、
シャンシャンと総会が終了すると乾杯である。
いつも通りの6時半に起床したというのに、
昼前から東京のど真ん中で、ビールグラス片手に満面の笑顔。
いやはや、交通文化の発展とはありがたい。
あらためて、空港に近いわが家の有難みをかみしめる。
いや、飲み干す。
ふるさと会の副会長は、中学時代の同級生がやっている。
彼が気を遣って、Qとんが出席するからと、
同級生を6人も呼んでくれている。
もう、完全にミニ同級会の雰囲気。
同じテーブルの大先輩のKさんもSさんも、
帰郷度にわが家に立ち寄ってくれるし、
一緒に飲んだこともある間柄だから遠慮がない。
しばらくして、隣のテーブルにもご挨拶に伺う。
わが家の家族構成なんぞはとっくの昔に知っているような方ばかりで、
初対面の方も旧知の人のような錯覚に陥る。
さらに、わが国東市観光親善大使が、
聞きなれた唄など歌っているものだから、
「ここは、どこ?」
もう自分がどこにいるのか分からなくなってしまう。
だから、招待された身でありながら、
二次会を所望してしまったりするのである。
悪い癖だ。
客人の癖して、仕切ったりしている…
二次会は、駅を挟んだ近代的なビルの、
モダンな広場に面したそば屋。
狭い小上がりの部屋に、15、6人が集まる。
幹事役に回った副会長が、
つまみを次から次に頼んでくれている。
食べるものより、生ビールさえあればいい。
後は、愉快な話が酒のつまみになる。
でも、なぜ東京のこんな一等地の飲み屋の生ビールは、
こんなに安いの?
途中から、冷酒に変える。
同級生で、大手広告代理店に勤めていたヤツが、
退職後の野菜作りなんかの話を自慢げにしている。
「そんなの、田舎に帰ってきてやれよ」なんて、
遠慮せずに言う。
彼の実家の立派な家は、
主だったオヤジさんと姉さんを無くして、
すっかり荒れ果ててしまっているのだ。
一流大学を出て、一流企業に就職して、
東京に新たな家族や友達などの生活拠点を作ると、
なかなか田舎に戻れないことなど、
百も承知なのにである。
ふと、尿意を催す。
トイレは店の外。
共有トイレしかないと、
若い店員が詫びれずに教えてくれる。
昔の田舎の家は、
座敷で宴会をしていても、
ちょっと離れた外にある、
肥溜めのトイレを使ったもんだ…
ここは、まだまだ文明開化が遅れてるんだね。
なんて洒落にもならない皮肉を言いながら、
店のゴム製のスリッパを借りて外に出る。
店のドアを開けると、本当に外。
公道から下りてくるエスカレータもあって、
モダンな広場が目に眩しい。
シャツ一枚だと外の空気が冷たいが、
酔い心地には気持ちがいい。
トイレは、サークルの反対側。
結構歩く。
秋の装いに身を包む洒落た若いカップルや、
楽しくはしゃいでいる家族連れとすれ違う。
青空の広がる天気とはいえ、11月初旬。
愉快な雰囲気とお酒で、
すっかり暑くなって上着を脱いでいる。
シャツを腕まくりした、赤ら顔のオイサン…
しかも、店で借りたゴム製のスリッパ履きである。
きっと、違和感あっただろうな…
店に戻って、同級生から離れた席に移る。
隣に座っているFさんが親しく熱燗を注いでくれる。
Fさんのお兄さんは、近くに住むかつて高校の先生だった人。
自己紹介を受けずとも、顔がそっくりだ。
10年ほど前の先生と飲んでいるみたいだ。
「先生も、キューっと空けんかい!」
と、遠慮なしに方言で酒を勧める。
「だから、オレは先生なんかじゃねぇーって。」
酔っぱらっているところまで、先生の仕草と同じだから愉快である。
そんなこんなで、2時半過ぎから5時近くまでの二次会も終了する。
新橋駅近くのうなぎ屋を知っているから…
と、今朝がた大分を出てきたばかりの飲んだくれは、
まだまだ意気軒高である。
同級生にとっては、迷惑だったに違いない。
同級生とちょっと年上のお姉さまを誘って、新橋に向かう。
残念。
当てにしていたうなぎ屋は、休みなのだと言う。
常連客が、土曜日は少ないからなのだそうだ。
結局、同級生の行きつけのバーに行く。
昔話から、わが家の恥話まで…
いつも通りに、この夜も喋りすぎた。
「今夜はいつもに増して体調がいい。
一向に酔った気がしない…」
と、高をくくっていたのは、
しっかり酔っていたせいなのだろう。
そこで、ブラントンのダブルをロックで4杯。
確か、お開きは午後9時過ぎだったと思う。
泊まりは、初めてのホテルだった。
用意してくれていた地図を片手に、
カバンをぶら下げて歩く出張スタイルそのもののオジサンは、
土曜の夜新橋界隈を闊歩する若者の目にどう映ったのだろう?
幸いに迷わずホテルに辿り着いた。
1階のコンビニでイナリ寿司と焼きプリン、
それにペットに入ったミネラルウォーターを買い、
2階にあるフロントでチェックインしたことは覚えている。
早朝、あまりの喉の渇きに目覚めた。
ホテルのベッドだったことに気づいて、
慌ててカバンと財布を確認する。
ちゃんと、あった。
ホッとする。
そして、ハンガーに掛ったスーツと、
几帳面にぶら下がったズボンを眺めて、
わが酔っぱらい習性に、
あらためて拍手喝采…の気持ちではあったのだが。
もう、昼から夜までの深酒は止めるようにしたいものである。