地方の人口減少が、社会問題となって久しい。
若者は都市をめざす…
経済的な環境も、文化的な環境も、子育ての教育環境も、
若者にとって、魅力的だからだ。
それでも、自分を育ててくれた自然豊かな地方に残り、
代々続く家業の、農業や漁業それに商店を、
切り盛りしようとする若者も残っている。
ただ、そんな若者の数は少ない。
当然、地方に残る若者たちが、異性に出会う機会も減る。
しかるに、恋をする機会も減ってしまうのである。
結婚したいのに出会いのない彼らに、
出会いの場を作るのが、
「婚活応援団」である。
かつては、どの地域にも独身男女にお見合いを勧める、
お節介オジサンやオバサンがいた。
いわゆる仲人さんと呼ばれるオジサン、オバサンたちである。
「○○さんちの娘は、
かあちゃんに似て気立てがいいんやけど、
■■さんとこの息子とどうじゃろうか?」
と情報交換をしては、見合いの席を設ける。
まとまるかどうかなど、時の運である。
結果など恐れはしない。
どちらかが、あるいは両方とも興味を示さない時ある。
「縁よ、縁。
縁がなかったんやわ…
次は、▽▽さんとこの人と見合いしてみるかぇ?」
と、その出会いなど最初からなかったかのように、
一向に悪びれず次の出会いの場を提供するのだ。
こう言う世話好きの仲人さんに紹介され続けると、
いつかは、どんな男女も「良縁」に恵まれることになる訳である。
ところが、100組以上も縁づけたというベテラン仲人さんも嘆く。
今や地方に若者がいないというのだ。
それでも懲りずに、数少ない若者たちに、出会いの場を設ける。
ところが…
相手の女性が気に入ってくれれば、自分はあの女性でもいい…
と、男は消極的に、相手任せの交際を望むのだという。
それに対して、女性はというと…
もっと自分にふさわしい男性が、この世の中のどこかにいるから
と、合格基準が高く、ズバッと断るのだそうだ。
つまりは、地方は若者の数自体が少ないうえに、
最近の風潮に違わず、
草食系男子と肉食系女子も多くなっているのだという。
そんなすっかりあきらめムードの仲人さんや、
わが子の縁談を頼まれた田舎の市議会議員やらで構成されているのが、
「婚活応援団」である。
テレビでおなじみのお見合い番組さながらに、
あれやこれやのイベントを企画するのは、
市の政策企画課の面々である。
昨日、「婚活応援団」のイベント会議の後、
2月になっての遅い新年会も開催された。
市役所に近い割烹が、その会場である
この店は、玄関を入ってすぐのゲタ箱に、
靴を間違わないようにと、
それぞれの団体名を書いた木札を下げている。
また、それぞれの宴会場の部屋の入り口にも、
同じように団体名を書いた木札がぶら下がっている。
「婚活応援団 御一行様」という、
手書きの白い字が、
黒い板に目立つ。
宴もたけなわになった頃、トイレに行こうと部屋を出た。
開けたばかりの廊下で、知人のキョーちゃんと鉢合わせした。
キョーちゃんは、65、6歳のオイサンである。
キョーちゃんの背中に隠れるようにしているご婦人も、
キョーちゃんと同年代くらいか。
二人して、開けた襖越しに、中の座敷を覗き込んでいる。
「キャーキャー、ワイワイ騒いじょるから、
若い連中を集めた、
流行りの集団見合いかと思うた…」
どうやら、婚活中の若者の達のイベントかと勘違いしたらしい。
と、キョーちゃんが、残念そうに言い訳をする。
若い人の婚活イベントに間違われるほどに、
賑やかで大いに飲んだ新年会も、
時間を10分ほどオーバーして幕となった。
土産用に別注した、
この店の名物のモモカラをぶら下げて廊下に出る。
「○○家 御一行様」の木札のぶら下がった、
キョーちゃん達とは別のグループの、
隣の部屋の宴会も、ちょうど宴を閉じたばかりのようである。
酒の力はうれしい。
初対面の人だというのに、話も弾む。
皆さんかなりの高齢だが、楽しいお酒の後のようである。
旧知の知人のように親しく尋ねられる。
「『婚活応援団』っちゅうのは、
応援しよる年寄りばかりの集まりかぇ?
応援されよる若ぇーしは、一人も、居(オ)らんのかぇ?」
地方の老人パワーは、侮れないと思う。
バワフルな老人が多くいることは、
高齢化社会問題の課題減少につながる。
しかるに、地方の問題は…
老いてなお恋をしそうな元気な高齢者が数多くいる中で、
恋をするも何も、若者たちがあまりに少ない現状なのである。