ちょうど1週間前の土曜日。

ローカル局大分放送のテレビ番組で、

「おおいた話題のグルメスポット」が放送されていた。


大分では珍しい、本格的味噌カツのお店…

と、紹介している。


味噌カツ 八丁2

(大分放送さんのHPからお借りしました)


「みそかつ」の白抜きの大きな字。

ありゃ、これは大分の常宿近くで、よく見る幟旗だ。

昨年末から、見かけて気になっていた。


どうやら、「味処 八丁」というお店らしい。


今さら言うまでもなく、トンカツは大好物の一つである。

味噌カツを本場名古屋で食べたのは、

もう何年前のことだったろう…

同郷の知人がやっている専門店で食べた味噌カツは、

ジューシーなトンカツに甘辛い八丁味噌が相絡まって、

確かに美味しかった。


だが、こういう幟旗につられて店に入ったりすると、

たいがい後悔することの方が多いものだ。

外から何度か店の様子を覗きながらも、

我慢して素通りしていた。


番組で紹介しているレポーターは、

かつて富くじ当選ロードをご一緒したYアナ。

本当に美味しそうに、

頬張りながら、感激を伝えている。



味噌カツ 八丁1

(大分放送さんのHPからお借りしました)


厨房と向かい合ったカウンター席が、

アットホーム的だ。

愛知県出身のご主人がとつとつと、

八丁味噌は名古屋から取り寄せて、

オリジナルの味噌ダレを作っているのだと話している。


ご夫婦なのだろう。


素朴な感じのご主人と対照的な、

派手な装いの綺麗な女将さんが寄りそう。


Yアナの問いかけに、答えるのはもっぱらご主人。

朴訥とした口調は、味にこだわる料理人の証である。


それにしても、女将は派手な割には、無口なタイプなのか。

ほとんど喋らない。


キツネ色のトンカツに、一見すると辛そうな黒い味噌ダレ。


ところが、見かけと異なる甘辛い味噌ダレと、

熱々の衣に包まれたジューシーな豚肉とのコンビネーション。

これが、味噌カツの美味さの秘訣でもする。


番組を見ていても、

見かけと異なる無口な女将が、

ちょうど味噌ダレのように、

腕のある料理人のご主人を引き立てているように見えた。


食べたい!

間違いなく美味しいはずだ。

番組を見ていて、そう確信した。


先日、その店に近くにある歯医者に治療に行った。

治療が終わった後、その「味処 八丁」で早めの夕食を…

と企んでいたのである。

歯科医院の入っているビルの隣は、

老舗のデパートがある。

目的のない買い物に付いてきた女房も一緒だ。


午後5時半。

その店の暖簾をくぐった。

夕方の営業(17:00~21:00)が始まったばかりで、客は誰もいない。


「先日、大分放送のグルメスポットで見てきました…」


初めての店だ。

ふらっと立ち寄った訳じゃないことを説明する。

言い終わらぬうちに、女将がそばのご主人に説明する。


「あらっ、またテレビのお客様よ。」


そして、愛そうよく近づいてきた。


「カウンターでもいいですけど…

 お二人なら、テーブル席の方が落ち着きますよ…」


派手な装いがとっても似合った粋な女将である。

無口なのかと思っていたが、そうでもない。

闊達な応対で、入口近くのテーブル席を案内してくれる。


「今しがた来られた方も、テレビで見たからって…

 わざわざ国東から来たって言ってたんですよ。」


「実は、僕らも、国東からなんですよ。」


「ありゃ~。

 国東の人はテレビをよく見てんのかしらね?

 あはは…」


女将さんのイメージ、ずいぶん違うな。

受け答えのテンポが早い。

口数もかなり多い。


味見も兼ねて、ロース味噌カツ定食とヒレ味噌カツ定食。

それに、味噌おでんの粟麩(あわふ)と玉蒟蒻(たまこんにゃく)を、

1本ずつ注文する。


「そうそう。

 上手な頼み方ですわ。

 二人で味見できるからね…」


注文の仕方まで褒めていただく。


味噌カツも味噌おでんも、期待を裏切らず本当に美味しかった。

熱いお茶や、継ぎ足し用の水差し、カラシを持って来ては、

味の感想を求められる。


「いやぁ、久々の本場の味噌カツを味わいました。

 Yアナが言っていた通り、本当に美味しい!」


女将の気さくさに甘えて、

言わずもがなのことを口走ってしまう。


「でも、女将さんの印象は、

 テレビと実物でずいぶん違いますね。

 無口で恥ずかしがり屋かと思ってました…」


すると、悔しそうに明かしてくれた。


「取材に2時間かけたのよ。

 私も色々喋ったり、説明もしたんよ。

 だけど、私は全部カット…」


ああ、そういう訳だったのか。


でも、畳みかけるように口惜しさを伝える女将に、

涙をのんで割愛したせざるを得なかった、

テレビ局の制作担当者の気持ちが、

何となく分かったような気もしたのである。


我々に続いて入ってきた女性客は、一人。

カウンター席に腰掛けて、話していたのが聞こえた。


「テレビで拝見して…

 とっても美味しそうだから来ました。

 ヒレ味噌カツ定食をお願いします。」


あの後、きっと彼女も思ったに違いない。


期待通りの美味しい味と、

女将さんのテレビとのギャップに…