コレ、食べたい~っ!
アレ、したい~っ!
とか、まったく言わない孫に、爺さまが誘う。


これから、イルカでも見に行こぉ~~!


昼食は、佐伯市にある「海の市場まる」の握り寿司。

バイキング方式だ。

ナイロンの手袋をして、好みの寿司をワシづかみ。

自分専用のトレイに並べていく。


「どれでも好きなのを選んでいいぞ!

 値札なんて、気にする必要なしっ。」


爺さまは、大盤振る舞い。

楽しい雰囲気づくりに、威勢のいい掛け声は大事である。


「あっ! でも、食べれるだけだぞ…

 調子にのって取ってると、

 食べれなくなって残してしまったりするから…」


とセーブしたのは、パッパッと上トロにぎりを、

8個も一気にトレイにのせた息子を見たからで、

決して財布の中身を心配したからだけではない。


いつもながら、どれも美味い。

新鮮なネタである。

あっという間にリッチなランチが終わると、

イルカ島のある四浦半島に向かう。


途中、造船場の大型クレーンや、

県南特有の深緑の綺麗な海に、

大げさに感激してみせる。


孫はと言うと、

絵本代わりの ipad を広げていて、

「ワーすごいぞ、ほら、綺麗な海だぞぉ~」

という爺さまの感嘆詞に、

ちらっと窓越しの風景を眺めるものの、

また ipad に目を落としている。


何でも感激するタイプのQとん家の血筋。

これもじわじわ仕込んでいかねばならないな。


佐伯から、40分ほどでつくみイルカ島に到着する。


暑~い。

車を停めて外に出ると、駐車場には熱気がみなぎっている。

デレッと立っていると、ローストビーフになりそうな暑さだ。


かつて小学生時代の夏。


昼飯が終わると海水パンツ一丁になって、

バスタオルを正義の味方のマントのように翻し、

自転車で自宅から5~600mほどの海岸まで、

天気さえ良ければ毎日泳ぎに行ったものだった。

我は海の子だったのだ。


あの時の夏は、こんなに暑かっただろうか?

イルカ島の暑さは異常。

いや、こちらが歳をとって、

暑さに対応できなくなっただけなのかもしれない。


夏の暑さなど屁ともなかった、

真っ裸にマントの鼻たれ小僧も、

大きな雨傘を日傘にして影をつくらないと歩けない。


イルカのショーが始まるまで、

孫と父親と一緒に生け簀の魚に餌やりに行く。


シマアジやタイ、ブリの生け簀に、

真剣な顔をして餌を投げ入れている。
餌を競い合って群れると、
水面に出た魚の鱗が鮮やかな青緑に光る。


孫に声をかける。


「この緑色したお魚は、

 メジナって言うんだよ。

 お刺身にすると美味しいよぉ~

 さっきのお寿司より、ずーっとね…」


ジョーク混じりの説明が、

聞こえてないのか解からないのか、

爺さまを無視して父親に駆け寄り、

今度はイルカとアザラシに餌をやりたいとねだっていた。


スタンド席の照り返しを浴びながら、

イルカショーを楽しんだ。

仕事で何度もお客さんを連れてきたが、

孫を連れての見物は、また格別である。


婆さまも、イルカ島は初めてだったという。

孫の父親と母親も、

他の大型施設の水族館にはない素朴さが魅力的。

もっともっと人が来てもいい観光施設だと感激をしていた。


「イルカ島のイルカは全頭、

 和歌山沖の追い込み漁で獲ったイルカたち。

 自分たちの価値観だけで、

 イルカたちが可哀相だという人がいるけれど、

 今後人工繁殖だけのイルカとなると、

 こういう施設の維持自体が難しくなるかも。

 今日みたいにイルカや魚を身近に感じるためにも、

 人類にとっての海の資源を考えるためにも、

 一方的な感情的でない議論が大事だね…」


と、帰りの車でウンチクを垂れたりしたのだけど、

誰も耳を貸す者がいなかった。


何てったって、あの暑さ。
帰りの車の中では、皆 zzzz… だったのだ。