私(大崎)は夜な夜な展足→同定→ラベル記入を繰り返しています。が、今になってもう少し展示内容かえちゃおうかな、なんて魔が差してきたりして結構混沌とした日々であります。
同定つながりで、最近の同定ばなしをば。
6月の下旬に西表へ採集に行ったのですが、そのときに毎回19:30ごろの薄暗くなった頃から飛び始めるヤンマがいました。小型のヤンマでしたが、ライトトラップの準備を始めるときにいつも遭遇するので採ってもすぐに照らして見ることもなく三角紙に入れ、そのまま家の冷蔵庫に放置…。
当然のことながらいざマウントせむと冷蔵庫から召還したときには時既に遅く、全身見事に褐色で腹部も湾曲してカチカチになった3♂がお目見え。
しかし微かに残る腹部黄斑と尾部上附属器、そして顔面のはっきりとしたT字斑から、カトリヤンマ Gynacantha japonica かなー、と考えていました。
Gynacantha属にはカトリヤンマとリュウキュウカトリヤンマGynacantha ryukyuensisの2種がいます。種小名の示すようにリュウキュウカトリヤンマのほうが主に琉球列島に分布しており、2種が同所的に分布する地域でも棲み分けが行われているそうです。(文一総合出版 『日本のトンボ』 より)
2種と識別する特徴として、カトリヤンマでは顔面にT字型(私にはタマゴタケ型という感じがしましたが)の模様が顕著であること、尾部上附属器の長さが腹部第9、10節の和より長いことなどがあります。腹部黄斑がリュウキュウカトリの方がはっきりしているともありましたが、標本の状態からしてあまり参考にはならないと判断しました。
尾部上附属器、ぎりぎり9+10節の1.5倍・・・ある?
しかし、『日本のトンボ』をよく読むと西表島でのカトリヤンマの記録は最近の生存を裏付けるものはないというではないか!
此は如何に!
ということで知り合いのトンボ屋の方に写真を送って相談してみた。
そのお返事は
「腹部黄斑が強いからリュウキュウでは?」
おや。
あの粗悪な写真でよく見てくださったものだと思ったが、一番に腹部の黄斑を同定形質に挙げたのが意外だった。リュウキュウは生きているうちに観察すると黄斑がとても印象的なのだという。手持ちのカトリ標本写真も見せて頂き、カトリならば尾部上附属器が余裕で9+10節の1.5倍を超すことが定規で測るまでもなく分かった。
「八重山のGynacanthaの判別は難しい」そうで、T字斑が頼りにならないことなどもその1つということなのだろう。
『日本のトンボ』の「過去の記録」がいつのものかは分からないが、カトリヤンマがいなくなって、それまで特徴のあったリュウキュウカトリヤンマがだんだんとカトリヤンマと同じような特徴を示すようになってきているのかもしれない。
さすが八重山、なかなかロマンがあるものだ。