kyupinの日記 気が向けば更新 -789ページ目

精神症状とバウムテスト(後半)

バウムのことを書いた理由だが、カイゼルひげ氏の日記で以下のような文章を見たことによる。そのままコピペしている(本人にも了解を得た)。

オレは携帯でペチペチと日記を打つ。なかなか順番が回ってこない。12:00近くになってようやく診察。

①調子がいいのか悪いのか分からない
②セロクエルに切り替えたため、口渇・便秘はなくなった
③眠前にセロクエルを追加して欲しい
こんな感じの話をした。担当医の意見は下記の通り。


①とりあえず抗鬱剤は増やさずに経過観察しましょう
②それは良かったですね。しばらく様子を見ましょう
③150mgぐらい足してみましょう


最後にオヤジの話。「心理テストの結果、『統合失調症の可能性がある』と出たそうですが」とDr.に聞く。「あくまで心理テストの結果です。臨床の立場から言わせてもらいますと、まだ何なのか病名は分かりません。もうしばらく経過観察する必要があると思います」とDr.。

「統合失調症かどうか、定量的に計る方法はありませんか?」とのオヤジの質問に「ありません。お子さんには色々精神症状があるようですが、それに対しては対策を講じています」と担当医は答えた。

これを読んでちょっと笑ってしまった。親は、どうしても診断が気になるんでしょうねえ。「心理テストで統合失調症を診断する」いかにもありそうなのだけど、一般の人々にかなり誤解されているような気がした。統合失調症を診断できる心理検査法なんてない。よく考えてみれば、こういう検査で統合失調症の診断ができれば、それほど良いことはない。まあそういう風にしたかったのが操作的診断法なのであるが・・

結局、統合失調症は生物学的に疾患としてあるが、確実な証拠と言える検査所見がないのである。だったら、「統合失調症」自体がないのではないかと思う人もいるかもしれない。これも違う。

もうずっと前、僕が26歳頃だろうか、国立病院で働いていたことがあった。ある友人(彼も若かった。精神科になって1ヶ月目)が、「正常も統合失調症もないんじゃないか?」と言ったことがある。

僕は、
「それはない。なぜなら、世界の40%の人が統合失調症だったら、大変なことになるから。統合失調症の人は無治療の状態だと、顔を洗う、食事をするなど、日常生活の基本的なことができない。女性だと育児すらできない。こんな環境だと世界が正常に機能しないだろう。」

こんな変な例えであったが、皆けっこうわかってくれたのである。統合失調症は単に「変わり者」とは全く異なる、ある「精神疾患」なのである。

カイゼルひげ氏に、この時どんな検査をしたか聞いてみた。検査はロールシャッハだったらしい。ご苦労様です。主治医のこの場面での会話は父親へのリップサービスのようなものだと思う。本気にロールシャッハで診断しようとしているわけがないから。

それでもなお、「まだ何なのか病名は分かりません。もうしばらく経過観察する必要があると思います」という部分は意味不明。診察していれば、疑問はないと思うけど。統合失調症の場合、初診でそうか、そうじゃないかがほぼ決まり、その後、それになるってことは滅多にない。すごく若いなら話が違うけどね。

参考
2ちゃんねるのオフ会
プレコックス感
精神症状とバウムテスト(前半)

精神症状とバウムテスト(前半)

バウムテストは1949年スイスのC.Kochによって創始された人格診断法である。

「実のなる木を一本描いてください」と言い、患者さんに自由に描かせるのであるが、描かせることは簡単だけど、その診断というか分析は熟練を要す。精神科医は、バウムを直接患者さんに描かせるのはあまりないと思う。たいていは臨床心理士に頼みその診断までしてもらう。細かいことはわからないのだけど、その絵が健康か不健康かはだいたいわかる。あるとき、一通り勉強したことがあるし。バウムの結果には、統合失調症的な絵も実際にあるのである。

ただ、バウムテストを統合失調症に実施することはあまりないと思う。少なくとも自分の病院の統合失調症の患者さんに実施したことはもう5年以上ない。バウムテストはロールシャッハテストと同じく投影法のカテゴリーに属し、わりに患者さんへの(心理的に)負担がかかるテストに入る。特にロールシャッハテストは。

バウムテストがあまり意味がないと思う理由は診断にほとんど役に立たないから。それに、予後も予測しない。統合失調症であれ、躁うつ病であれ、あるいは神経症のような範疇に属す患者さんでも幻覚妄想が激しいと、みんな酷い絵を描いてしまう。

あれって、僕みたいに治療者だけどバウムの専門家でない場合、無駄に悲観させる面があるのよね。たぶん中途半端に知っているからだと思う。僕は、治療する側のマインドを大切にするタイプなので、そんな先入観とか無意味な悲観は治療にマイナスにしかならないと思っている。バウムはその時の状態像しか反映しないような感覚がある。経験的にはね。

このブログで出てくる急速交代型の女性患者さんに、入院後にバウムをしたことがあった。それはひどい絵で、これはあまりにも・・思えるような結果であった。しかし退院頃には、健康とは言えないけど、かなりまともな木になっていたのである。

あと、バウムなんて、健康な絵を描いた人をあまり見たことがないのがある。少なくとも、僕の友人の精神科医で健康な絵を描いた人は1人もいない。僕も含め。

今から10年前くらいに、1人だけ、精神科医の友人の弟(一般人)が、ほぼ正常な絵を描いたのを生まれて初めて目撃した。僕が結婚前だけど、嫁さんに1回描かせたことがあった。結果だが、

工エエェェ(´д`)ェェエエ工

ま、健康なのを描いた人はあまり見たことないし、僕も人のこと言えないし。だいたい、バウムは駆け出しの頃に、病院の心理士のお姉さんにワナをかけられてテストされてしまったのよね。オマケにいろいろ解釈までされたので、

「強姦された気分だ。。」

と文句を言った。
今は、バウムテストは精神鑑定書を書くときに実施してもらうことが多い。なんだかんだ言ってバウムは時間がかからないし、統合失調症ならひどい結果が出ることが多いので、なんとなく鑑定書の診断にリアリティが出ることがある。脳内ではあまり意味がないと思っているけど、素人の法律家に説明するのには支援材料になるのである。

統合失調症とアスペルガー症候群

最近、アスペルガー症候群の患者さんによく遭遇する。先日の簡易鑑定でもそうだったし、最近転院してきた統合失調症疑いの患者さんもたぶんそうだと思う。

アスペルガー症候群と統合失調症の患者さんの違いなんだけど、診察時の目の動きが決定的に違うと思う。ぱっと見でかなり違いがあるように感じる。ただし、アスペルガーの人は視線を合わせない人もいるくらいなので、ちょっとわかりにくい時ももちろんある。

僕は、診察時に明らかに統合失調症とは違うと思ったら、それ以外の疾患を考えるが、アスペルガーは発達障害の1つに過ぎないので、統合失調症じゃなかったらアスペルガーと言うことは全然ない。アスペルガーは他覚的にそれっぽい所見はあるのだけど、普通にしていると正常と区別がつかない人も多いので、やはり生活歴や現病歴みたいなものが重要だと思う。

基本的に、統合失調症は慢性進行性の要素があるけど、アスペルガーはその逆だ。つまり、ある程度社会的な経験が本人を成長させ、なんとか社会に適応できていく人もきっと多いのだと思う。

アスペルガーは健常人に近い人とかなり重度の人の間になだらかな連続性があって、何パーセントくらいアスペルガー的といった言い方も可能かもしれない。要するに、アスペルガーは突き詰めていくと、おそらく正常も異常もない(正常と異常の境界がないと言う意味。精神疾患の一部には、本人または周囲が苦しんでいて初めて「正常ではない」という病気がある)。

それに対し統合失調症の場合は、正常とは連続していない。ある時、大きな断層があると思う。

僕がアスペルガーは統合失調症とは逆だと書いたが、実際には、ある日、突然発病するように見えることがある。これはおそらく発病しているわけではなくて、社会的というか環境的なストレスのため、ある時、破綻してしまうのである。そのとき初めて不適応が明瞭になる。本質的に本人は何も変わっていないのだけど。

だから、例えば大学生や大学院生などのようにモラトリアムを容認する環境なら、不適応を起こさず生きていきやすいとは言える。もちろん大学の先生もそうだ。医師でもずっと医局にへばりついているような人々。うちの大学でもそうなのであるが、大学を出て関連病院で普通に働ける人は「予後良好」なのである。

社会人になると、なぜ破綻しやすいかというと、いろいろバランスを取って生活しないといけないから。このバランス感覚なるものが彼らには乏しい。例えば、仕事上でこの書類を仕上げてくれとか言われると、これはできる。ただし、「この書類もだけど、忘年会の段取りもお願いね」とか言われると、混乱してしまう。1つの仕事を忠実にやっていくならできるし能力も高いのだけど、平行していくつか仕事をやらせると、なんとなくメリハリをつけてできないので、どうして良いかわからなくなる。

10年前のマッキントッシュは積んであるメモリが8メガバイトだったりした。メモリは1メガバイト1万円の時代もあったのである。このマックに同時にいくつかソフトを立ち上げて仕事をしていると、すぐにフリーズした。これに似ている。

アスペルガーの人々は基本的に真面目なのである。だから、すべて完璧にやろうとする。こういうところがバランス感覚の欠如している部分だと思う。アスペルガーの人で東大に合格してしまう人は、こういう徹底的にやる強迫性が実を結んだとしか言いようがない。

アスペルガーの創造性と統合失調症の創造性は少し違っているような気がしている。限定された場面での創造性がアスペルガーにはある。もちろん統合失調症にもあるけど、統合失調症の場合、自然にほとばしるというか湧き出てくるような感じだ。つまり発想という意味で統合失調症の方が上回っているのである。

アスペルガーの場合、時間をかけてそこに到達している。時間的な推移が必要というか、何か知識を集積してそこに到達していて、創造性でもプロセスが違う。

今回、簡易鑑定の診察時に、

小学校の時、どんな科目が好きだった?
テレビゲームはどんなのが好きですか?
体育で得意なのと苦手なのを教えてください?


なんて質問をしていたので、付き添いの人に、この先生はバカじゃないかと思われたかもしれない。

例えば、他はそれほどでもないけど地理がすごく得意とか、苦手教科が多いけど漢字だけはすごくできた、走るのはそれほど悪くないけど球技が全然ダメ、なんてことが非常に意味があるのである。

社会復帰の能力

先日、24年ぶりに退院した女性患者さんだけど、今、平日はデイケアに参加している。ある時、朝食はどうしているか聞いてみた。すると、

「今日は、ピザトーストを作りました」

という返事。どうも料理は他のメンバーさんの言うことを聞いてもうまいみたい。皆の料理も自分で作ってやっているほどなのである。

このあたりが、例えば中学生くらいに入院してずっと入院しっぱなしで20数年の人と、一度社会に出て働いていた経験のある人は違っている。社会復帰の能力と言うか、潜在的な適応力の相違があるのである。

ちょうど、退院して今日で20日目くらい。このところの気候の急激な変化でも全く影響がなさそうなので、まだまだ大丈夫そう。

まぁ、なるようにしかならんと思うけどね。

参考
24年ぶりの退院

簡易鑑定書終わる

簡易鑑定書は、一応、思い立って24時間くらいで書き上げた。僕はやり始めると早いのである。パソコンに打ち込むのは書くより早い。なんとか検察官に伝えた期日に間に合った。おかげで休みがなくなってしまったが。

ところで、3月3日からJリーグが開幕。この忙しい中、Jリーグも数試合テレビ観戦。スカパーがほとんどだけど。僕は、実はコンサドーレ札幌の熱烈なサポなのであった。昨日負けてしまったけどね。現在、札幌はJ2だが、ここ2年くらいはなかなか面白い試合を見せてくれている。

J2は全然興味がない人がほとんどだろうけど、13チームがこのカテゴリーにある。総当りで計4クール試合を行う。まさに長丁場。なんと、1シーズンの総試合数が48試合に及ぶ。昨年、ほとんどがスカパーの観戦なんだけど、札幌の試合は48試合中、47試合くらいは観た。そんな感じなのである。

札幌に準じて応援しているチーム(要するに好きなチーム)があり、

特A  コンサドーレ札幌

A、  ベガルタ仙台 柏レイソル(J1)
    浦和レッズ(J1)ヴァンフォーレ甲府(J1)

B、  アルビレックス新潟(J1)大分トリニータ(J1)


このBの組合せが昨日あったのであるが、大分トリニータを脳内で応援した(試合は観ていない)

上で浦和レッズ、柏レイソル、ヴァンフォーレ甲府を応援する理由は、試合が面白いから。ベガルタ仙台は特に去年はクソ試合が多かったが、もう6年くらい応援しているので、いまさら応援しないというわけにもいかない。今日はスカパーで柏vs磐田があり、もちろん観戦しつつ柏を応援したが、J2から上がったばかりにもかかわらずあっぱれ快勝した。

柏レイソルvsヴァンフォーレ甲府を楽しみにしている。