優しい医師とそうでない医師 | kyupinの日記 気が向けば更新

優しい医師とそうでない医師

今回の記事は、精神科医ではなくむしろ身体科の医師についてだが、一部、精神科医の話もある。

 

ここで言う優しい医師とは「患者さんに対し人当たりが良い」医師である。もちろん、いつもニコニコしているとか、患者さんを強く叱責しないなども含まれる。これらは接遇と言われており、精神科病院では、時々、院内に講師を呼んで講義をしてもらうなど勉強会をしている。

 

開業医だとこの「人当たりの良さ」は営業的には重要だと思う。勤務医では人当たりはどうでもよいかと言うとそうではないが、いつも不機嫌に患者さんを診ていたとしても、それだけでは滅多にクビにならない。

 

医師の受け持ち患者数のバランス的には、良い接遇をせず、技量も良くない場合、時間が経つと医師の間で受け持ち患者数の乖離が生じる。勤務医は民間病院であったとしても公務員的な職種なこともあり宜しくない。給与に影響があまりないからである。

 

患者さんに悪い接遇の医師は患者数が減少傾向になるが、かといって経験年数が同じなら、給料は他の医師とはさほど差がない。仕事の絶対量が減っているのに給与は下がりはしないのである。

 

結局、接遇や技量も良い受け持ち患者さんが次第に増えていくような医師が、接遇の悪い医師がいるために、余計に働かさせられる結果になる。

 

これは由々しき事態と言える。

 

開業医の場合、良い接遇は売り上げに直結するので、自分のクリニックが潰れても気にならない医師でない限り、悪い接遇のままの医師は稀である。

 

精神科の場合、勤務医の時は、患者さんを叱責して泣きださせる天才だった医師が、クリニックを開業した途端、仏様のように優しい医師になった事例もある。(実話)。

 

彼は、患者さんが来なくなるような診療を精神科病院で続けていたところ、遂に病院に居辛くなり、決断して病院を辞めてクリニックを開業したのである。これはその医師にとっても、患者さんにとっても発展的な結末だった。

 

さて、民間の開業医の医師は昭和の時代の医師に比べ、圧倒的に優しいと思う。以下の2つの記事は僕が子供の頃の病院での経験である。まさに隔世の感があると言える。

 

 

今は民間の病院やクリニックが増えて自由競争時代になっているので、先生が優しいかどうかは売り上げに直結し、経営的には重要である。

 

しかしである。僕の経験や患者さんの話を聴くと、今なお上記のごとき昭和的な医師が生息しており、不思議なことに非常に流行っていたりするのである。

 

僕はその医師の技量を非常に信頼しており時々、入院患者さんを紹介するが、看護師さんが付き添う際は、しばしば厳しく看護師を叱るらしい。さすがに精神科の患者さんは叱りにくいのだろう。つまり、人をきちんと見て叱っているのである。

 

彼は紹介状の返書に、患者の家族が理解力ゼロで話にならないと言う内容を記載していた。これは彼が精神科医でないからこそ、そこまで指摘できると言えた。ライブ感覚で紹介状から彼の怒りが伝わって来るほどである。

 

なお、精神科医から見ると、そういう事態も精神科医の料金に入っているので、問題にならない。以下の2つの古い記事は、まさにその口の悪い昭和タイプの医師本人の話を紹介している。

 

 

 
ある時、火が出るような勢いで電話で病棟に文句を言ってきたので、何かと思ったら、彼に無断で先発品をジェネリックに変更したことが逆鱗に触れ激怒しているのであった。後で調べてみたら、その科にとって、先発品とジェネリックは大差であることはわかった。

 

個人のクリニックだから、ああいうやり方で済んでいるところはかなりある。患者さんを紹介すると、同伴の看護師さんを叱責して辛い思いをさせてしまうので、最近は彼に紹介する機会が減少し、半分くらいの患者さんを紹介している。

 

これは僕にとって、看護師さんに対する働き方改革である。

 

と言うことは、彼の接遇は時代遅れも良いところで、もはや通用しなくなっているのである。

 

一方、これも重要だが、人当たりの良い優しい医師の中に全く技量が伴っていない医師が混じっているのも確かである。

 

参考