レキサルティOD錠のうつ病治療における抗うつ剤との併用療法 | kyupinの日記 気が向けば更新

レキサルティOD錠のうつ病治療における抗うつ剤との併用療法

 

 

現在、レキサルティODはうつ病における抗うつ剤との併用療法が認められている。つまり条件付きだが、うつ病への治療が認められたことになる。現在のレキサルティODの添付文書では以下のように記載されている。

 

 効能又は効果
○統合失調症
○うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)

 

なお、レキサルティ錠は2023年7月に発売中止のアナウンスがされ、2024年6月以降は出荷されなくなる。つまりレキサルティとレキサルティOD双方の同時発売はなくなる。

 

レキサルティOD錠が発売時、レキサルティOD錠に変更した際に、どうしてもレキサルティ錠の方が飲み心地が良いと言い、レキサルティ錠の継続投与を希望した人がいた。その時はまだ双方の剤型が院外薬局にあったので、レキサルティに戻したのである。このような剤型変更の際、賦形剤などの相違なのかよくわからないが、効き味に敏感な人がおり、必ずこのようなことを訴える人がいるものだ。そういう人も今後はOD錠を服薬せざるを得なくなる。

 

今回のうつ病の適応で「既存治療で十分な効果が認められない場合に限る」という文言だが、以下のように記載されている。

 

 効能又は効果に関連する注意
〈うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)〉
5.1 本剤の併用は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤等による適切な治療を複数回行っても、十分な効果が認められない場合に限り、本剤による副作用(アカシジア、遅発性ジスキネジア等の錐体外路症状)や他の治療も考慮した上で、その適否を慎重に判断すること。

〈うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)〉
7.3 本剤は選択的セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤又はミルタザピンと併用すること。[本剤単独投与での有効性は確認されていない。][17.1.4参照]
7.4 本剤投与による副作用(アカシジア、遅発性ジスキネジア等の錐体外路症状等)を考慮して、本剤の投与量及び投与期間は必要最小限とすること。[11.1.2、17.1.4参照]
7.5 臨床試験における有効性及び安全性の結果を熟知した上で、本剤2mgへの増量の要否を慎重に判断すること。本剤2mgへの増量を考慮する場合には、本剤1mg投与開始後6週間を目処に本剤2mgへの増量の要否を検討すること。[臨床試験において、本剤1mg群と2mg群で有効性は同程度であり、本剤2mg群では本剤1mg群と比べアカシジア等の錐体外路症状の発現割合は高くなる傾向が示されている。][17.1.4参照]
7.6 本剤2mgへの増量後はより頻回に患者の症状を観察し、錐体外路症状等の副作用の発現に注意すること。副作用が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。また、増量後は、6週間を目処に本剤2mgの投与継続の要否を検討し、期待する効果が得られない場合には漫然と投与を継続しないこと。
7.7 本剤と中程度以上のCYP2D6阻害剤(キニジン、パロキセチン等)及び中程度以上のCYP3A阻害剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン等)を併用する場合等には、本剤の血漿中濃度が上昇することから、これらの薬剤との併用は可能な限り避けること。やむを得ず併用する場合には、以下の表を参考に用法及び用量の調節を行うこと。

 

上の添付文書の内容をみると、SSRIまたはSNRI、ミルタザピンに併用で処方できるように記載されているが、トリンテリックスと併用したとしてもほぼ査定されないと思われる(確実ではない。このような査定基準はしばしばローカルだからである)。

 

もう少し古い抗うつ剤、例えばトフラニールやアナフラニールなどの旧来の抗うつ剤でもおそらく併用しても大丈夫だと思うが、これもローカルな事案であろう。ローカルと言う意味だが、都道府県により査定基準が異なることを言っている。


今回のうつ病治療における抗うつ剤+レキサルティODの治療だが、意外に高用量まで認められていることは注目される。用量については以下のように記載されているのである。

 

現在のレキサルティODの添付文書の適応

〈統合失調症〉
通常、成人にはブレクスピプラゾールとして1日1回1mgから投与を開始した後、4日以上の間隔をあけて増量し、1日1回2mgを経口投与する。

〈うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)〉
通常、成人にはブレクスピプラゾールとして1日1回1mgを経口投与する。なお、忍容性に問題がなく、十分な効果が認められない場合に限り、1日量2mgに増量することができる。

 

この内容だが、注意書きはあるものの、実質的に統合失調症とうつ病のレキサルティOD用量上限は変わらないのである。当初、1㎎から開始するように記載されていることは、臨床家としてはとても違和感を感じるが、これは抗うつ剤の併用の際に0.5㎎と1㎎には有意差がなかったからという。

 

なお、レキサルティの治療用量は、アメリカなどの海外では、

統合失調症 1㎎から4㎎

うつ病   1㎎から3㎎

 

くらいに設定されている。つまりうつ病のオーグメンテーション的処方の上限は低く設定されている。

 

日本では、

統合失調症 1㎎から2㎎

うつ病   1㎎から2㎎ 

 

となっており、このような用量設定をみる限り、日本の統合失調症のレキサルティODの処方上限は低すぎるのでは?と言う疑念がわく。実際、当県では、レキサルティODの統合失調症への3㎎処方は、レセプトで注記すれば査定されない。しかし4㎎だと必ず査定される。これもおそらくローカルなものだと思う。

そもそも、レキサルティODの添付文書は謎の1文章が今も記載されている。それは以下の通りである。

 

用法及び用量に関連する注意 

〈統合失調症〉 7.1 本剤の1日量4mgを超える用量での安全性は確立して いない(使用経験が少ない)。

 

普通、2㎎上限と決めるなら、添付文書では、

 

本剤の1日量2mgを超える用量での安全性は確立して いない(使用経験が少ない)」

 

と記載する方が自然である。この奇妙な文章があるからかどうか知らないが、レキサルティ3㎎で査定された場合、裁判では勝つ確率が高いという弁護士さんの話である。とにかく、ここまで不明瞭な添付文書も珍しい。

 

なお、このような治験を実施して用量を決定した際に、比較的高用量になりやすいのは、そのくらい上げないと有意差が出にくいためと思われる。特におかしな用量設定は、アリセプト(ドネペジル)のレビー小体型認知症への用量である。

  • 〈アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制〉

    通常、成人にはドネペジル塩酸塩として1日1回3mgから開始し、1~2週間後に5mgに増量し、経口投与する。高度のアルツハイマー型認知症患者には、5mgで4週間以上経過後、10mgに増量する。なお、症状により適宜減量する。
    (参考)細粒:通常、成人には1日1回0.6gから開始し、1~2週間後に1.0gに増量し、経口投与する。高度のアルツハイマー型認知症患者には、1.0gで4週間以上経過後、2.0gに増量する。なお、症状により適宜減量する。

  • 〈レビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制〉

    通常、成人にはドネペジル塩酸塩として1日1回3mgから開始し、1~2週間後に5mgに増量し、経口投与する。5mgで4週間以上経過後、10mgに増量する。なお、症状により5mgまで減量できる。
    投与開始12週間後までを目安に、認知機能検査、患者及び家族・介護者から自他覚症状の聴取等による有効性評価を行い、認知機能、精神症状・行動障害、日常生活動作等を総合的に評価してベネフィットがリスクを上回ると判断できない場合は、投与を中止すること。投与開始12 週間後までの有効性評価の結果に基づき投与継続を判断した場合であっても、定期的に有効性評価を行い、投与継続の可否を判断すること。
    (参考)細粒:通常、成人には1日1回0.6gから開始し、1~2週間後に1.0gに増量し、経口投与する。1.0gで4週間以上経過後、2.0gに増量する。なお、症状により1.0gまで減量できる。

臨床的には、レビー小体型認知症の人は平均して忍容性が低く、少量から開始しあまり増量しない方が望ましいように見える。レビー小体型認知症の人は薬に敏感なので、3㎎の4分の1錠、つまり0.75㎎錠で幻視はぴったり止まることも稀ではない。なぜこのような用量設定になったのか不思議だが、1つは認知症への効果が少量ではほぼなかったからと想像している。
 
アリセプトの添付文書では、高用量のリスクに言及する記載になっていることに注意してほしい。以下の内容である。
 
投与開始12週間後までを目安に、認知機能検査、患者及び家族・介護者から自他覚症状の聴取等による有効性評価を行い、認知機能、精神症状・行動障害、日常生活動作等を総合的に評価してベネフィットがリスクを上回ると判断できない場合は、投与を中止すること。投与開始12 週間後までの有効性評価の結果に基づき投与継続を判断した場合であっても、定期的に有効性評価を行い、投与継続の可否を判断すること。
 
さて、レキサルティODの話に戻るが、うつ病の人へのオーグメンテーションの際に最も注意したことは、EPSであろう。実際、パーキンソン病になりかけの人(診断未満)へのレキサルティODの併用療法は著しくパーキンソン症状を悪化させる(進行させるというべきか)。特にエビリファイよりレキサルティの方がそのリスクが大きいように見える。
 
うつ病と診断しオーグメンテーションでレキサルティを0.5から1㎎程度併用したとしても薬剤性も含めたパーキンソン症候群が悪化し、その後の改善に苦労する経過になることがある。
 

2023年6月の上の記事では、うつ病のオーグメンテーションの際に、レキサルティの懸念点について言及している。また、そのような事態になった時、どのような視点で、いかなる対処をすれば良いかも記載しているので、読者の方にも参考になると思う。