レキサルティ、 うつ病・うつ状態の効能追加の承認取得 | kyupinの日記 気が向けば更新

レキサルティ、 うつ病・うつ状態の効能追加の承認取得

 

 

2023年12月22日、レキサルティは「うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)」の効能効果の承認を取得している。レキサルティは従来は統合失調症しか適応がなかったが、今後は、うつ病、うつ状態にも処方可能になった。(注意点として、レキサルティは抗うつ剤と併用で処方しなければならない)

 

レキサルティは日本以外では統合失調症よりむしろうつ病、うつ状態への処方数が多いと言われており、レキサルティの処方が海外に近くなったと言える。

 

過去ログでは、うつ病のオーグメンテーションにおいて、エビリファイとレキサルティの相違点と注意点について言及している。(2023-06-14 )

 

 

今回の大塚製薬のアナウンスでは、

 

<うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)>

通常、成人にはブレクスピプラゾールとして 1日1回1mg を経口投与する。なお、忍容性に問題がなく、十分な効果が認められない場合に限り、1日量 2mg に増量することができる。

 

とあり、用量的には統合失調症と差が付けられていない。つまり統合失調症とうつ病への処方用量は同等なのである。

 

このような違和感は、アリセプトのレビー小体型認知症への適応取得の際にも感じた。以下は、アリセプトのレビー小体型認知症における用量(増減も含め)の添付文書の部分の抜粋である。

 

レビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制〉

通常、成人にはドネペジル塩酸塩として1日1回3mgから開始し、1~2週間後に5mgに増量し、経口投与する。5mgで4週間以上経過後、10mgに増量する。なお、症状により5mgまで減量できる。
投与開始12週間後までを目安に、認知機能検査、患者及び家族・介護者から自他覚症状の聴取等による有効性評価を行い、認知機能、精神症状・行動障害、日常生活動作等を総合的に評価してベネフィットがリスクを上回ると判断できない場合は、投与を中止すること。投与開始12 週間後までの有効性評価の結果に基づき投与継続を判断した場合であっても、定期的に有効性評価を行い、投与継続の可否を判断すること。
(参考)細粒:通常、成人には1日1回0.6gから開始し、1~2週間後に1.0gに増量し、経口投与する。1.0gで4週間以上経過後、2.0gに増量する。なお、症状により1.0gまで減量できる。

 

レキサルティは1mg程度でも、D2レセプターへの関与において、うつ状態には重い非定型精神病薬である。したがって、当初は特に問題がないように見えても、長期的には副作用のため中止せざるを得ないケースも出てくると思われる。

 

以下は、2023-06-14の過去ログから抜粋している。

 

エビリファイとレキサルティは少量の併用で、いずれも抗うつ剤の補助的処方の際に有効のように見えるが、抗うつという視点ではレキサルティの方が効果が上回っているように思われる。(私見)。

 

軽いうつ病だと、レキサルティの少量単剤で良い人もいるほどである。これはパーシャルアゴニストと言う視点で、エビリファイがレキサルティより一層パーシャルということも関係しているのでは?と想像している。

 

つまり逆に言えば、レキサルティはエビリファイに比しD2への親和性がより強く遮断的でもある。だからこそ、レキサルティはエビリファイより幻聴や妄想に効果が大きいのである。またレキサルティはこの親和性により嘔気や悪心を改善する効果もみられるため、トリンテリックスとの併用だと嘔気を抑える方向に働く。SSRIの嘔気はセロトニン系なのでガスモチン(モサプリド)併用が良く、トリンテリックスの嘔気はドパミン系なのでプリンペランの方が相性が良いのと整合性がある。

 

レキサルティはエビリファイほどピンポイント系ではなく、他のセロトニン系レセプターにも親和性が強い。例えば、5HT1Aの親和性はエビリファイより高く、抗不安作用、認知機能改善、抗うつ作用?にも関連している。また、5HT7への親和性もレキサルティはエビリファイより高く、認知機能や抗うつ作用に関連している。

 

つまり、エビリファイとレキサルティはうつ病のオーグメンテーションとして効果の厚みが異なる。多くのレセプターが関与する分、レキサルティの方がより効果的のように見えるのだと思う。

 

これらのことを考えていくと、自然とオーグメンテーションとしてのレキサルティの欠点が見えてくる。

 

高齢者の場合、若い人ほど薬に強くない上、うつ状態の場合、他の疾患の合併が稀ならずある。例えば、パーキンソン病やレビー小体型認知症である。特に疾患の初期にはこれらが明確ではないケースもあり、少量だとしてもレキサルティはこれらの疾患を悪化させる。それはエビリファイよりD2遮断的だからである。しかも、その悪化がすぐには見えず、数か月経ってかたまってくる。その際にはレキサルティを中止してもすぐには改善しない。

 

上のように私見も含め言及している。

 

なぜアリセプトやレキサルティのようにいきなり高用量処方が承認されているかだが、おそらく用量でないと、統計的な有意差が出にくいのではないかと想像している。そもそも、レビー小体型認知症は向精神薬全般に忍容性が低く、高用量を維持すると思わぬ副作用に見舞われかねない(例えば心臓)。

 

忍容性が高くはない若い患者さんでさえ、レキサルティ2㎎を維持すると、次第にパーキンソン症状が出てきて主治医が慌てる経過も出てきそうである。

 

また、幻覚妄想があるタイプのうつ状態(非定型のタイプ)はいかにも良さそうに見えても、中期~長期的には継続できないケースも十分にありうると思う。非定型の病態を呈する人は平均して忍容性が高くはないからである。

 

今回の記事では、レキサルティが うつ病・うつ状態の効能追加の承認取得にあたり、懸念点を紹介している。