グランドセイコーのスプリングドライブの話 | kyupinの日記 気が向けば更新

グランドセイコーのスプリングドライブの話

 

 

2022年9月にグランドセイコーの腕時計を買った話をアップしている。これはグランドセイコーの中でも限定品で裏ぶた部分にリトグラフのように何番目か数字が打たれている。ムーブメントはスプリングドライブが採用されており、機械式時計とクォーツの良いところを合わせた腕時計であった。

 

しかし、自分の腕時計がスプリングドライブとはずっと気付かなかった。購入後、1年経ち、ブティックに洗浄のために腕時計を持って行った。グランドセイコーのブティックで購入したためサービスで年に1度無料で洗浄してくれるのである。これが正規店で定価で買ったメリットの1つである。他に初回オーバーホールの際の割引も付いている。

 

僕が「この腕時計は、月間に4~5秒くらいしか進まない。驚異の正確さだ」と言うと、ムーブメントがスプリングドライブだからと言う話を聴いた。しかも、月に4秒差はスプリングドライブでも結構良い個体らしい。全くスプリングドライブとは知らずに使っていたのであった。(つまりそれくらいの知識)。良くみると、盤面(ダイヤル)にスプリングドライブと英語で書かれている。それすら気付かないでいたのである。

 

元々、クォーツと機械式時計の相違はトルクの大きさである。つまり機械式の方がトルクが大きいので、色々な役物を乗せることができる。ここで言う役物とは、ムーンフェイズ、アニュアルカレンダー、パーペチュアルカレンダー、トゥールビヨンなどの本来の時計の機能以外の複雑な機能や装飾である。単にクロノグラフだけなら、クォーツでも可能だと思う。

 

また、機械式だと針などの重さを始め制約がかなり減少し、様々な装飾がしやすくなる点も大きい。

 

スイス時計を頂点とする機械式時計は、1970年代のクォーツショックにより経営危機に陥るメイカーも少なくなかった。その後、上に挙げた機械式時計の利点のトルクの大きさがないとできない複雑系時計や美しい装飾の腕時計を発売するなどで、次第に人気を回復していったのである。

 

ところで、機械式時計のメリットの1つに、オーバーホールや部品交換を行うことで、基本、半永久に使えることがある。半永久は少々言い過ぎだが、IWCは部品交換も含め永久に修理を引き受けることをアナウンスしている。

 

一方、クォーツは永久とはいかず、いつかは寿命が来て、クォーツのムーブメントそのものを交換しなくてはならなくなる。どれくらいの寿命かは個体差があると思うが、10年間くらいと言われている(実際はそれ以上持つことが多い印象)。また、セイコーなどは電子部品の保有期間が7年とされており、永久とは程遠いのであった。

 

そのようなことから、いざ修理をしようとしてもできない可能性がある。これくらいの寿命だと、ムーブメント以外のダイヤル、針、風防、ベゼル、ケース、ブレスなどにお金をかけてデラックスにする意味が薄い。

 

クォーツは正確に時を刻めるが、長期間使用するなら、機械式時計の良い点も多いのである。

 

今回、グランドセイコーの機械式時計を買って最初に思ったのは装着感の良さであった。これはおそらくケース部分とブレスのバランスが優れているからであろう。またそれ以外の要素もきっとあると思う。装着感が良いと、腕時計そのものの重さをそれほどデメリットと感じなくなる。

 

かつて、機械式時計メーカーは装着感はそう気にかけてなかった。しかし、アップルウォッチが発売され、これは24時間でも装着する時計なので、非常に装着感が良いらしい。皮肉にも、アップルウォッチの出現で、機械式時計メーカーは装着感の良い時計を重視して設計し始めたのである。

 

最初に、グランドセイコーのスプリングドライブは、機械式時計とクォーツの良い点を合わせていると記載しているが、どちらかと言うと機械式時計寄りの位置にある。

 

そう思う理由は、スプリングドライブは水晶振動子やICを使用しているが、電子回路は使用していないことがある。もし、IC部分に不具合が生じたとしても、その部品のみ交換で良い。 駆動そのものは一般的な機械式時計と変わらないため、クォーツ時計のような明確な寿命はないと言われている。

 

このような技術は日本メーカーだからこそできたと言える。スイス時計には同じようなスプリングドライブのムーブメントなど難しすぎて作れないのである。

 

その視点で、トヨタのハイブリッド車に似ている。ハイブリッドでも色々な仕様があるが、トヨタのブレーキまで駆動エネルギーに回帰させる仕様のエンジンは外国のメーカーには難しいのである。そのため、外国車はクリーンディーゼルや電気自動車などに舵を切って生産しているように見える。

 

ゼニスのエルプリメロのような優れたムーブメントは、ロレックスなどの他社の上位機種にも搭載されている。グランドセイコーのスプリングドライブは、外国の機械式時計メイカーも希望したようであるが、ムーブメントの供給はしていないようである。

 

グランドセイコーの有名な機械式時計に「白樺」がある。最初、スプリングドライブ仕様でないSLGH005が発表され賞を受賞している。

 

 

盤面(ダイヤル)の仕上げが美しい。スプリングドライブは採用されていないが、80時間のパワーリザーブがある。僕が持っているスプリングドライブは72時間なのでそれを少し超える。

 

 

これは005の裏面である。このシースルーのデザインも美しい。

 

白樺モデル005が発表された翌年、同じ価格でスプリングドライブ仕様の白樺(SLGA009)が発表されているが、少し印象が異なる。

 

 

見た目の印象として、白樺のダイヤル部分の彫りと言うかうねりが控えめになっている。僕はどちらかと言うと、デザイン的に旧モデルの方が好みである。上に挙げた写真ではその差がわかりにくい。どちらもステンレスモデルなこともあり、僕のチタン製グランドセイコーより重いと思った。

 

 

これは、009の裏ぶた部分のデザインである。これもぱっと見は005の方が美しい。009はスプリングドライブでもなんと120時間、つまり5日のパワーリザーブがあり、それをシースルー部分で確認できる仕様である。裏ぶた部分のデザインや美しさは005より劣っていると思うが、パワーリザーブの長さや、パワーリザーブが表示されているのは非常に良いと思う。

 

今日のタイトルは、最初、「ロレックスを買いに行った話」であった。しかし前置きが長くなり、独立させグランドセイコーのスプリングドライブの話に変更している。