高級腕時計を買った話 | kyupinの日記 気が向けば更新

高級腕時計を買った話

僕は、基本、物欲がない男で、とりわけ高級な車が欲しいとかはない。それは腕時計も同様である。

 

ずっと以前、20年ほど前くらいに東京の銀座まで腕時計を買いに行った。特に予算は決めておらず、もし200万とかだったとしても気にいるなら買っても良いと思っていた。

 

ところが、高級腕時計を買うことは僕にはハードルが高いのである。まず、金属アレルギーがあり、ステンレス製でも手首が真っ赤になる。またパテックフィリップのような超高級時計はしばしば革ベルトなので付けられない。革にはクロムが含まれておりそれがアレルギー反応を起こすからである。

 

ローレックスのショップに行き、これなら大丈夫だろうと、ホワイトゴールド仕様の時計をつけてみたが、手首に鎖を付けているような重さで、こんな物を付けて仕事などしたくないと思った。価格も300万円くらいだった。結局、有名どころの腕時計は諦めざるを得なかったのである。

 

結局、購入したのは11万円のセイコーのクォーツで、文字盤が太陽電池になっているので半永久的に使用できる時計だった。しかも海外に行っても簡単な操作で現地の時間に合わせてくれる優れものである。チタン製なのでアレルギーも問題ない。チタンは本来、兵器に使われていたらしいが、冷戦が終わり汎用されるようになり広く使われるようになった。この日、僕の腕時計は思わぬ安上がりになった。

 

予算が余った感じになり、嫁さんが欲張りというか、欲しがり、予定になかったローレックスを買われてしまったのである。これは当時90万円くらいだったので、僕の時計より遥かに高額である。銀座に自分の時計を買いに行ったのに、豈図らんや、嫁さんに時計を買われてしまった話は友人の間で大笑いだった。

 

この時のセイコーはその後も真面目に動いてくれている。ずっと暗いところに置いていると、動かなくなるが明るいところに置いておけば復活する。

 

ある時、これは癌とか、とんでもない病気にかかっているのでは?と思うような体調不良があり、友人の内科医に中核病院に紹介状を書いてもらった。体調不良の原因は2回目ワクチンである。

 

この時の精密検査では、少なくとも癌のような大物ではなく、元々アレルギー体質に由来するワクチンによる特異反応だったようである。ようであると記載したのは、ベテラン主治医によると、ワクチンの副反応はまだよくわかっておらず、確実な診断ではないからであった。多分そうでしょうみたいな。

 

それでも受診の前、急激に食事がろくに取れず、便も真っ白になり、あっという間に79kgが72kgまで体重減少した。便が真っ白になると、一切の油物が食べられなくなるが、なぜかご飯とお味噌汁は食べられる。これを3食しばらく続けることになった。病院の食事はもちろん摂れないので、毎日おにぎり🍙弁当を病院に持って行った。こんな感じの食生活だとダイエットになるようであった。

 

その後、少しずつ特異反応が弱まって来て体重は元に戻ったが、この侵襲以降、食物アレルギーで食べられないものが増えた。これが後遺症である。疲労などが重なりアレルギーが強い時期はウィスキーや酒や芋焼酎が飲めない。しかしなぜか黒糖焼酎は問題ない。

 

その後もワクチンは続けて接種したが、不思議に2回目のような事態にはならず、一時的に食事がとりにくくなる程度に収まっている。あまり問題が起こらないロットもあり、どういう風になっているのか今もよくわからないままである。個人的にはワクチンの1回目と2回目は期間があまり空けてなかったので、強いアレルギー反応が出たのではないかと思っている。

 

この精密検査で問題がなかったという結果は、非常に喜ばしいことで、この機会に何か自分のものを買うことにした。この気持ちはきっとわかる人もいると思う。おめでたいことに対するお祝い的な買い物である。

 

しかし物欲がないためか、そう欲しいものもない。しばらく考えていたら、手頃なもので良さそうものとして、20年前に買い損なった高級時計があると思った。そこでグランドセイコーが良いと思ったのである。グランドセイコーなら、ベルトがチタンなので安全に身につけることができる。

 

 

グランドセイコーは日本製の高級時計ブランドである。歴史的には1960年から始まったらしい。元々、腕時計について詳しくはないが、ネットで調べたところ、時々グランドセイコーは特別仕様の限定品を売っているみたいなので、それを買うことにした。そして時計専門店に行ってみたのである。

 

お店の人に、「グランドセイコーのこれこれという限定品の腕時計が発売されているみたいですが、このショップにありますか?」と尋ねたところ、なんとその話を知らなかった。アルバイトの店員ならともかく、そうでない店員さんが知らなかったことに驚いた。どうもグランドセイコーは特別仕様の限定品を乱発しすぎて、そこまで希少感がないようであった。

 

結局、その特別仕様の時計は1つだけあったのである。グランドセイコーのショップに行ったことがある人ならわかるが、グランドセイコーはどれもデザインが良い。高級感もあるし、買った時計だけでなくそれ以外にも良さそうな時計はたくさんあると思った。ショップの人とちょっと話して即購入。価格は100万は超えたが150万まではしなかった。これがリーゾナブルかどうかはよくわからない。

 

身につけてみた感想。

腕に自然なフィット感があり、高級感もあるしとても良い。これくらい良いなら、早く買えば良かったと思った。グランドセイコーのゼンマイというか自動巻き機はなんと3日も持つらしい。一方、ローレックスなどは2日で終わると言う。そのため週末の旅行の時にギリギリ持って行かないでも済むくらいには動いてくれる。この腕時計を東京や大阪ならともかく、温泉旅行とかには持って行きたくない。

 

驚いたのは、自動巻きの正確さである。月間にほんの数秒、おそらく5秒前後しか進まない。なお、自動巻きが遅れることがなく常に進むのは仕様らしい。4月の半ばに秒針まで合わせて、今9月だが25秒しか進んでいない。10月になったら半年ぶりに秒針まで合わせる予定である。

 

これくらい良いなら、早く買えば良かったという感想は、毎年数回は必ずあり、これは僕があまり物に執着がないことを示している。時計もそこまで大事に扱っていないせいか、買って以降、2回、床のフローリングに落としてしまった。時計に対する貴重感がまるでないからだと思う。

 

と言うのと、形あるものは必ず壊れるという僕の考え方も影響している。これは災害にあった人はよく理解できると思う。そのような信念から、物を集めるのは意味がないと思うし、物欲がないのもそのためだろう。

 

病院職員に時計が趣味で命をかけている人がおり、買った時、すぐに感想を聴きに見せに行った。彼はローレックス、IWCとかそれ以外の僕のよく知らないメーカーの時計を収集しており、パテックフィリップも彼から初めて聞いたメーカーである。彼が購入したのはまだ価格的に買いやすい時代であり、ごく最近に限れば新規には購入していないと言う。

 

彼は「現在、病院内で最も高価な時計を持っているのは院長先生です」と言った。また「この時計をローレックスが作れば2倍から3倍の価格になるでしょう。実際は自動巻きの技術が追いついていないのでできないのですが」と褒めてくれたのである。

 

そして、「精密な腕時計は床に落としたりすると壊れることもあるので十分注意してください。自分だったら、腕時計をうっかり床に落としたら、ショックのあまり仕事をする気持ちが失せて、そのまま早退するでしょう」とまで言ったのである。さすがに、自分のぞんざいな時計の取り扱いを反省した。

 

現在、ローレックスなども含め、海外の高級時計は円安、スイスフラン高、新型コロナの影響もあり、かなり高価になっており、買いたくても時計そのものがないという状況である。現在は中古品価格も高止まりしているが、腕時計に命をかけている彼によると、修理の際に純正部品を使っていない場合、正規品とはみなされなくなるらしいので、怖くて中古品など買えない。

 

ローレックスなどに比べ、グランドセイコーは中古品の値落ちがかなり激しそうである。利殖目的でないのでこれは問題ない。ところで、嫁さんのかつて90万円で買った腕時計は今は倍くらいに値上がりしていると言う。

 

これも世界中で、輪転機であまりにも紙幣を刷りまくっているからだと思う。つまりインフレが生じていて、現金の価値が下がっているのである。