パニック障害の処方の推移(20年間) | kyupinの日記 気が向けば更新

パニック障害の処方の推移(20年間)

パニック障害は1つの疾患単位と言うより、不安障害の1つの症状という感覚なのだが、その1つの理由は僕が精神科医になった頃、パニック障害は神経症に含められていて特別視されていなかったことがある。昔は診断名は今よりざっくりとしたものだった。

 

パニックが頻回に起こるためにはエネルギーが必要で、服薬なしでさえ、長期間経過をみていると次第に症状がやわらいでいくように思う。

 

だったら、50歳以上にパニックが起こらないかと言えば、ないわけではないが、若い人の経過と異なっている。

 

今回は約20年前に初診し経過観察していた女性患者さん。その人は初診した時、リボトリール0.5㎎とパキシルを10㎎だけ処方している。当時はSSRIの選択肢があまりなかった。パキシルはとてもよく効いてその処方で3~4年くらいは通院していたと思う。服薬以降、パニックは起こらなくなったが、多少の不安感はあったようである。

 

ある時、いろいろパキシルの欠点が知られるようになったため、ジェイゾロフトに変更することにした。その後、ジェイゾロフト12.5~25mg単剤になりリボトリールは中止している。過去ログではベンゾジアゼピンはネット上で言われているほど中止しにくいものではないと記載している。なかなか止められない、つまり離脱のようなものが出やすい人たちがネット上にアピールするからそう言われるのである。

 

その後、彼女は通院を止めてしまったのである。来院しなくなったのは初診後10年目くらいで、3年間くらい来院することがなかった。

 

彼女のことは忘れてしまっていた。

 

ところが、再び受診したのである。彼女によると予期不安のようなものが起こるので再診したらしい。今回はしばらくジェイゾロフトを処方し、ある時、レクサプロに変更している。レクサプロは不安に対する効果が良い印象があったからである。レクサプロは5㎎だけ使い、加味逍遙散を併用することにした。

 

その後、次第に通院が不規則になり、レクサプロをとっくに飲み終えて、加味逍遙散が残っているときは、細々と漢方だけ服用するようになった。つまり通院インターバルの後半は漢方だけ数十日間、服薬しているのである。

 

今は、レクサプロも服薬することはなく加味逍遙散だけである。彼女は漢方の処方を受けるために数か月に1度通院している。

 

精神疾患のうち、神経症は内因性疾患に比べ重篤度が段違いに低いと思う。この経過をみてもそれがわかる。

 

現在、彼女の精神疾患は厳密には治っていないのかもしれない。しかし、これは他の代表的内科疾患などと比べても既に治癒しているのにかなり近いと思う。

 

参考

8年ぶりに再診した人の治療(後半)