デエビゴ | kyupinの日記 気が向けば更新

デエビゴ

今日は令和2年7月6日に発売されたデエビゴ(レンボレキサント)という眠剤の話。エーザイが創薬したオレキシン受容体拮抗薬である。基本的にベルソムラに似た作用機序を持つが、様々な点でより優れており次第に処方数が伸びていくと思われる。なお、アメリカでは昨年(令和元年)12月に承認されている。今回の記事はスボレキサントベルソムラ(スボレキサント)のパンフレットなどの過去ログを読むとわかりやすいと思う。

 

エーザイはベルソムラの構造式からヒントを得て創薬したわけではなく、独自に開発している。そのため構造式も全く異なっている。剤型は2.5㎎、5㎎、10㎎の3種類で、最初5㎎服用し10㎎を超えない範囲で適宜増減できる。エーザイはこの辺りは細かいと思う。ちょうどルネスタの剤型のようである。

 

デエビゴの特徴としてベルソムラよりオレキシン2受容体への選択性が高いことが挙げられる。オレキシン受容体は1と2があるが、いずれも睡眠に関係しているが、2受容体の方がより睡眠・覚醒のリズムやノンレム睡眠への移行に関係していると言われている。

 

なお、ベルソムラはこの受容体1、2の選択性の傾斜がデエビゴほどないため、眠剤としての効果が十分ではないのである。そのような理由で、いったんベルソムラを服用し始めても、患者さんが希望しベンゾジアゼピンに戻った人も多かった。

 

ベンゾジアゼピンは抑制的な要素があるが、ベルソムラやデエビゴは自然な眠りをもたらすタイプなので、できるならベルソムラやデエビゴで眠った方が良い。あるいはメラトニン系のロゼレムである。現在はデエビゴは14日制限があるが、発売後1年経過するとベルソムラやロゼレムのように長期処方が可能となる。(概ね3か月以内)

 

デエビゴは5㎎錠において、マイスリー(ゾルピデム)5㎎相当との比較試験で上回っている。今回のオレキシン受容体拮抗薬は効く薬なのであった。

 

ベルソムラは内科薬と併用禁忌がある。

CYP3Aを強く阻害する薬剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン、リトナビル、ネルフィナビル、ボリコナゾール)を投与中の患者

 

この禁忌がデエビゴにないのも優れた点の1つである。デエビゴの禁忌として、過敏症の既往がある人と重度の肝障害の人が挙げられている。なお、CYP3Aと無関係ではないので用量調整のために2.5㎎剤型が発売されているようである。

 

さて、発売後2週間ほど経っているが、デエビゴは処方する方からみると、切れ味鋭い眠剤に見える。これほど発売直後から効く眠剤は初めてである。汎用されているベンゾジアゼピンより効果の点で上回るか、同等の眠剤は初めてという意味である。

 

副作用として最も多いのは傾眠(10.7%)である。もともとデエビゴはこのタイプの副作用も少ない仕様だが、それでも翌朝、眠い人がいる。その他の副作用として、頭痛(4.2%)が挙げられる。

 

かなり幻覚妄想が活発な重い病態の保護室入室中の統合失調症の患者さんにデエビゴを処方したところ、本当に寝たのにはびっくりした。その患者さんは既に強力なベンゾジアゼピンが処方されていても全然眠れなかったのである。

 

重い統合失調症の患者さん数名に処方したところ、デエビゴにより、あるいはデエビゴによる自然に近い眠りをもたらす結果なのか、精神症状が改善傾向になったことも驚いた。デエビゴはおそらくこのタイプの向精神作用はないと思うが、少なくとも精神面に妙な影響を及ぼさないようには見える。

 

まだ発売されたばかりだが、最初の印象はかなり良かったのである。