精神科医は持続性のある仕事 | kyupinの日記 気が向けば更新

精神科医は持続性のある仕事

精神科に初診する際、精神科病院と心療内科クリニックのどちらにかかるのか迷うと思う。かなり前に同じような記事をアップしたことがあるが、今回はタイトルの視点で考えてみたい。

 

今から20年くらい前は特に地方だと距離的に選択肢がなく、そこしかないということも多かった。そこしかないとはつまり単科の精神科病院である。現在はクリニックがずいぶん増えて、選択肢が増えてきている。

 

しかし、クリニックから他の病院またはクリニックに変わりたい時は、選択肢が少なく市外まで行かないといけないなど、不便になることも多い。

 

一般的に言えることは、入院が頻回に必要とか、しばしば深夜に悪化して輪番や精神科救急にかからざるを得ない人たちはクリニックに行くべきではない。これはどう意味かというと、クリニックからクリニックに転院すべきではないことを言っている。ただし精神科病院のサテライトのクリニックの場合、精神科病院とのアクセスが良いのでほぼ精神科病院にかかるのと同じである。

 

精神医療は同じ医師に継続して診てもらうことは重要で、その点ではクリニックは良いと思われる。閉院ないし退職しない限り同じ医師が診療し続けることが多いからである。

 

良くないパターンとして、大学病院や地域の中核病院の精神科外来で治療を受ける際に、転勤のために主治医が数年ごとに替わってしまうケースが挙げられる。この場合、その患者さんについて誰も深く理解していないといったことが生じる。

 

抗うつ剤や抗精神病薬について、「忍容性や効果のバランス的に禁忌とまでは言えないが良くはない」といった微妙な判断をすることがある。この場合、禁忌とまでされてないので、次の医師が同じ失敗をするリスクがある。

 

実際には、「あの時の病状ではうまくいかなかったが、今だとうまくいくかも?」と思うことがあるので、その微妙な薬を再トライしてはいけないわけではない。

 

しかし不調の細かい内容を体験しないでトライするのと、把握してトライするのは大違いである。つまり治療の持続性は重要だと思う。

 

精神科の場合、特殊な疾患、病態以外は、地域の精神科病院やクリニックと大学病院と診療にあまり差がないのである。

 

精神科医は病院ではなく、相性も含め医師が重要だが、主治医交代が多いというのは大変なリスクである。

 

他、特別なものとしてクリニックは閉院が意外にあり、障害年金のための初診の証明ができないことがあること。特に未成年で精神科に受診した人は納付要件がクリアできるが、それができない人がいる。このクリニックの閉院リスクは結構大きいと思う。これも精神科の持続性と関係している。

 

ある時、輪番で初診し治療するようになった患者さんがいた。その患者さんは未成年で心療内科クリニックに受診したと言うが随分前に閉院しているため証明する方法がなかった。以前通院していた精神科病院で難しいと言われたらしいが、このケースでさえ全く可能性がないわけではないのである。

 

そのクリニックの医師は僕が知っている医師で、ひょっとしたら本人に電話して問い合わせると、その患者さんのカルテが手元に残っているかも?と思ったからである。(第三者の証明のケース)。

 

しかしその患者さんはその後、順調に回復し数か月で障害年金を受給できるレベルではなくなったため、問い合わせる必要もなくなった。その人は幻聴を主に治療すべきではなく、他のアプローチが良かったのである。

 

もし、その人が十分に年金受給できるレベルだった場合、大変な損失だったかもしれないと思う。

 

参考

精神科と心療内科は (例えばこの記事、かなり古い)