私は肉体労働が良いです | kyupinの日記 気が向けば更新

私は肉体労働が良いです

以前、IT関係の仕事をしていたような人でも、精神疾患に罹患し時間が経つと、希望する仕事が変わることがある。これは本人が精神面でハードな労働環境を望まないこともある。

そのような際に、あまり頭を使わなくてよく、またコミュニケーションにも苦労しそうにない肉体労働を希望する人がいる。これは以前とのギャップが大きいのでこちらが驚く。

倉庫の中で荷物を運ぶとか、スーパーマーケットなどでもレジなどの接客が多い場所ではなく、裏方の仕事である。

このような選択の変化だが、本人のある種の洞察も入っていると思うので、良い悪いを簡単には判断できない。

おそらく、この決断には、精神面のストレスによる悪化を避けようとすることと、自己評価の低さも関係しているように見える。

ある患者さんによると、この時期、4月は特にハローワークはとても混雑するらしい。その理由だが、派遣の仕事は3月末で契約が終了することが多いからという。(実際にそうなのかは自信なし)。

精神科医は、仕事を希望する患者さんのために、「ハローワークに出す主治医の意見書」を記載する機会が多い。これには大雑把な診断と、どの程度の業務ができるか(週に何日とか1日何時間程度など)、あるいは希望しているかを記載する。また、記載する以前の日に既に働ける状態であることを書かないといけない。

主治医の意見書による精神疾患が既にある状況での就労では、雇用主もそれがわかっているので、ある程度配慮してくれるので良い面もあるが、賃金がかなり安いのが難点。

神経症圏内の軽い人や、躁うつないしうつ病で既に寛解状態にある人は、主治医意見書によらず、自分で一般の人のように探した方が良い条件の仕事に就くことができる(確率が高い)。

最初に挙げた「肉体労働が良いです」といった人は、全く肉体労働ができそうにない体力しか持ち合わせていないように見えた。しかも、うまく自分の履歴書も書けないのである。

その人は本質は自閉性スペクトラムで、表現型は双極性障害であったが、全くと言って良いほど履歴書を読む人の気持ちを配慮した記載ができていなかった。例えばだが、なぜその会社を選んだかと言う理由は、

家が近いから。

とだけ記載していた。また趣味・特技の欄には、

特になし。

とだけ汚い字で記載しているのである。これは酷すぎる。もう少し履歴書を読む人のことを考えないと。本人に、履歴書で「この書き方はない」と言うと、

だって、本当に家が近いから選んだので・・

と答えたので、僕がもっと仕事を切望しているような印象を持たれるように履歴書の全ての項目で書き方を指導した。その人は実際に面接官から、

落ちようとして面接を受けに来ているとしか思えない。

と言われてしまったらしい。(本人には、なぜそんな風に言われたのかもわからなかったようだが、履歴書や面接時のやりとりを聞けば明白)

その人は、パソコンは凄く扱えるのに、他は何もできない感じなのである。しかも、もはやパソコン関係はしたくはないと言うのでやむを得ない。

近年、国立大学の医学部入学試験で、ある女性受験者が、筆記は合格ラインに達しているのに、面接で明らかに奇妙な行動を取ったため、0点にされて不合格になると言う驚きの事件があった。

おそらく彼女も、面接時にあのような行動か、それ以上の行動をとったためと思われる。

コミュニケーション能力を著しく欠く学生を合格させないために、今ではほとんどの医学部では筆記試験に加え面接を採用している。

現在、国立の医学部で面接がない医学部は、東京大学(理Ⅲ)とほかに1大学くらいである。

東大を受験し、筆記試験で合格できれば無問題である。このレベルの人は臨床医では患者、スタッフとも相当に困るが、案外、基礎医学で大成する可能性もあると思われる。

参考
広汎性発達障害はしばしば双極性障害に振舞う
IT従事者のうつ状態
人の判断に興味がある