貴方が真に良くなることが仕返しです | kyupinの日記 気が向けば更新

貴方が真に良くなることが仕返しです

今回の記事は、以下の2つの記事を参照して欲しい。

社会的引きこもりとトピナ(前半)
社会的引きこもりとトピナ(後半)

上記の記事では、従姉妹から紹介されたと記載しているが、紹介した女性があまりにも本人の注文通りに軽快したため、紹介した本人から治療を依頼された。彼女は今は転居して遠い県外に住んでいたので、まさか本当に来るとは思わなかった。

彼女は、かつてうちの病院で他の医師により治療されていた経緯があり、自分が主治医を交代するのはあまり宜しくない。(参考

また、治療の様子を見ていて難しそうだったため、本当に入院することになった日は、先が思いやられるというか、憂鬱だった。到底、一筋縄では行きそうになかったからである。

やはり遠方なこともあり入院をさせたが、この人の場合、前回の従姉妹と異なり、治療歴が長く、こじれたような病態なのである。従って最初は薬を整理し、本人が希望する通り体重を減らすことに主眼を置いた。本人が望む目に見える変化は精神面に好影響を及ぼす上、信頼関係にもプラスになる。

体重は、一般に薬を整理するだけで結構減ることが多い。また、多剤、単剤ではなく、意図がある処方になると良いようである。

今回の記事は今日だけで終わりたいので簡単に結果を書くと、体重だけは概ね本人の希望通りになった。なんと、半年で14kgの減量が達成されたのである。

それも退院後の方がはるかに減量幅が大きかったので、入院時に特別に食事制限をしたわけではないのがわかる。たいした努力もせず、自然の経過で減量は実現している。

彼女の場合、元々極めて太っているとは言えなかった。減量の結果、標準体重域に入ったと言ったところである。従って14kg減ったものの、外見的には凄くは変わっていない。

この人の治療でわかったこと。

①認知の歪が残っていてもそれに伴う「念」のようなもの(パワー?)が減少すれば、精神症状は良い方向に向かう。つまり、マイナスのエネルギー自体が精神面に悪影響を及ぼす。

②ラミクタールとトピナを併用した時期があったが、自分の患者さんでは、たぶん彼女だけか、他1名くらいだと思う。「併用も良いこともあるよ」と言ったところ。(ラミクタール25mg、トピナ50mg)

③ブプロピオンやベンラファキシンを使っていた時期もあったが、結局はサインバルタの方が良かった。結局、ブプロピオンもベンラファキシンも中止している。ただし、これは精神疾患の病態の推移にもよるので何とも言えない部分もある。

④彼女に何が最も効いたかといえば、ネコと言わざるを得ない。(笑)

ある日、彼女がかなり以前に関東のある大学病院と民間病院で治療していた時期のことを話し始めた。

医師の名前を実際に挙げて、いかにダメな医師だったかエピソードを話し始め(驚異的な記憶力に感心しつつ、一応、話を聞いていた)、最後に、「彼らになんとか仕返ししたい」と言うのである。

仕返ししたいって、あんた、もう10年以上経っているのに・・

と思ったのだが、僕は、

貴方が真に良くなることが仕返しです。

と答えた。というより、それくらいしか言うことなんてない。

彼女を治療し始めて、もう2年くらい経っていると思っていたのだが、まだ8ヶ月しか経っていないことに気付いた(記事を書いた際に気付く)。まだ8ヶ月なら、良くなっている方だと思う。

これは、それくらい色々なことがこの8ヶ月にあったことを示している。2年くらいに感じるのは、つまり、そういうことなんだろう。

過去ログでは、主治医の人生から見ても、その患者さんの治療期間は決して短くはないと記載している。

参考
体重の減量のテクニック
精神科入院と体重の減量
患者さんの体重減少