真に困ったとき、複雑な笑みになる話 | kyupinの日記 気が向けば更新

真に困ったとき、複雑な笑みになる話

いつだったか西原理恵子さんの漫画を読んでいたら、面白い話を見つけた。彼女は学生の頃、新宿歌舞伎町でアルバイトをしていた。その業務内容だが、

ミニスカートをはき、客にお酒を運ぶ仕事。時給は1400円。

漫画では、西原理恵子さん風に、

歌舞伎町と言えば、ここにいるだけでだいぶ失敗しているが、来る客もだいぶ失敗しているのが多い。(オヤジたちかから、品のない野次を飛ばされている挿絵あり。)

「泥酔した客に、時給分はきっちりかまされる。」


また、

そして私は九九も言えない大ばか者であるが、店長はもっとすごくて足し算も言えない。クソタレバカであった。その店長に毎日、怒られ、最後にどうなったかというと、

真に心の底から腹が立つと、顔が笑うようになった。

らしい。細かいことは不明だが、怒ったことをそのまま顔に表せないから、このように妙な表情にになるんだと思った。

過去ログでは、笠原嘉先生の診察ビデオでのモナリザの微笑について触れている。(参考)あの記事の中で、以下のように記載している。

やはり、精神科医はある種の営業顔があるんだと思う。うちのある看護師さん(主任クラス)が話していたが、僕はいくら忙しくても、あるいは体調が悪くても、それが表情に表れないんだそうだ。不愉快な顔をしていないらしい。

この話には続きがあり、その看護師から、「なぜそのような凄いことができるんですか?」と聴かれたため、一瞬、あっけにとられ、「たぶん、長年、精神科医をしているからでしょう」と答えた。

ある時、自閉性スペクトラムの患者さんを保護室で診察していた時、急に、

僕を見て笑った。

と言い放ち色々な暴言が診られた。

あの時は、こちらに言わせれば、真に困ったとき、相手に対し、不愉快な顔も出来ないため、笑みを見せていたんだと思う。だが、彼には「嘲笑されている」としか見えなかったようである。

彼はその場の雰囲気を感じ取り、その状況で相手の「ありえる」あるいは「ありえない」行動が読めない。また、表情に関しても、真の(100%)の意味で、わからないのであろう。そのように考えると、上の看護師さんのコメントを総合し十分に理解できる。

彼の、そのような感じ方、判断も疾患性の1つであろう。日常生活の人間関係のトラブルは、そのような感じ方の障害からも来ているのである。

参考
広汎性発達障害の診察ができるかどうかの調査
彼女の回想