カプランの教科書の双極性障害の発生率 | kyupinの日記 気が向けば更新

カプランの教科書の双極性障害の発生率

最新のカプランの臨床精神医学テキスト(教科書)における双極性障害の「発生率と有病率」の項目を見ると、

双極Ⅰ型障害は、大うつ病性障害ほどは多くなく、生涯有病率は約1%で、この数値は統合失調症と等しい。

と記載されている。この1%には双極Ⅱ型障害は含んでいないが、Ⅱ型も含めると、統合失調症よりはやや多い疾患といえる。この疫学的な数値は、大熊先生の教科書よりは多いものの、操作的に診断されるようになったことを考慮すれば著しく増加しているとまではいえない。

ところで、双極Ⅱ型障害の生涯有病率は、0.5%と記載されているので、双極性障害のⅠ型、Ⅱ型トータルの生涯有病率は、統合失調症の1.5倍程度である。

カプランの教科書では、統合失調症の生涯発病率について、

アメリカでは、統合失調症の生涯発病率は約1%であり、これは一生のうちに100人に1人が統合失調症に罹患することを意味している。国立衛生研究所が資金提供している疫学的管轄区域の研究では、生涯有病率0.6~1.9%と報告されている。DSM-Ⅳ-TRによると、統合失調症の年間発生率は、地域によりいくらか異なる(例えば、工業国の都市地域に生まれた人に多く発症する)が、人口1万人に対し、0.5~5人である。統合失調症はあらゆる社会と地理的地域にみられ、発生率および有病率は、世界中でほぼ同様である。米国では毎年全人口の0.05%が統合失調症として治療を受けており、重篤な疾患であるにもかかわらず全統合失調症の約半数しか治療を受けていない。

これらの記載をみると、少なくとも、統合失調症及び双極性障害の発病率には地域差がほとんどないことがわかる。

また、増加はしているのであろうが、近年、大騒ぎしているほど猫も杓子も双極性障害とまではいえないと思う。

カプランの教科書は、かつてはもう少し薄かったが、今は何かの百科事典ではないかと思うほど厚いものになっている。明らかに使いにくい。

以前のカプランはもう少し使いやすい厚さで、最初に読んだ時、実に読みやすい教科書だと思った。カプランは最高の教科書の1つだったと今でも思う。

カプランの教科書は、1990年代でも、通販を使えばCD版が買えたので、それをノートパソコンで読むこともできたが、英語版しかなかった。

今はたぶんアマゾンでキンドルが発売されているので、英語だけだと思うが、キンドルで読むことも可能ではないかと思う。(確認していないが)

参考
大熊先生の教科書の躁うつ病の発生率
リーマスと妊娠
精神症状とバウムテスト(後半) の後半