若手精神科医と上司の話 | kyupinの日記 気が向けば更新

若手精神科医と上司の話

大学から遠方の中核病院に派遣されて、重要なことの1つは上司(指導医)がしっかりしているかどうかだと思う。もし上司の能力が低いか平凡くらいの場合、どう治療してよいかわからない時、ほとんどが自力勝負になる。

いくら能力が低いように見えても、ボスの経験年数が長い場合、治療以外の面で一日の長があるわけで、バカにしてはならない。(過去ログでも助けられた話が出てくる)

このような治療環境は患者さんにはマイナスであるが、一般に経験のある医師はやがて単科精神病院などに移ってしまうので、野戦病院のような夜も昼も休日もないような総合病院の精神科は、相対的に経験年数の少ない若手医師が主力になっている。よく考えるとこれは当たり前である。

上司が弱いと思われる関連病院でも、症例が多い病院は魅力的である。

理想的には、名人級の上司がおり、症例が多く、しかもスタッフ(同僚やコメディカルスタッフ)が充実し、なおかつ給料も良いというのが最高だが、そういう病院は稀有である。

僕が最初に派遣された病院は国公立でありながら、精神保健福祉士も心理療法士もいなかった。

当時は精神保健福祉士は国家資格ではなく、看護師や事務員の人が片手間にやっている感じであった。もちろん、同じような仕事も精神科医がするのである。しかし今から考えると、そういう仕事(訪問看護や周囲の環境調整、就労援助など)も、精神科医なら一度は経験しておいた方が良いと思う。(参考

僕はその病院に派遣後しばらくして、上司は「こりゃダメだ」と思ったので、なるだけ自分で文献を集め、書物を読み、独学で勉強することにした。これはこれで大変だが、基本的に精神科は独学だと思う。

精神科は、結局は独学である(←重要)

上司がしょぼい場合、自立心が出てよい面もある。ぼんやりしていては、どうしようもないからである。また下手に聴いて嘘を教えられて大失敗するより、自分が治療法を選択する方が悔いがない。過去ログでヒルトニンの話が出てくるが、あれは誰かに教えてもらって選んだ治療法ではなかった。

実は、僕は上司に非常に恵まれている環境は(研修医の時を除き)全然なかった。そういう視点で派遣病院を選ばなかったこともある。

ただ、多くの患者さん達には恵まれていたと思う。非常に珍しい症例を経験しているし、更に剖検までしているからである。

ハードな病院に移ってから、最初に抗うつ剤の使い方が上達したのは過去ログの通りである。またECT(電撃療法)がどのような効き方をし、どのようなタイプの人たちに、どのタイミングですべきかについてもとても経験になった。

こういうことを考えていくと、良い上司に恵まれなくても、結局は自分次第と言える。

参考
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