薬に弱い人は救われるのか? | kyupinの日記 気が向けば更新

薬に弱い人は救われるのか?

患者さんが初診した時、これまでの治療歴から薬に弱いであろうと予測できることがある。例えば、患者さんがこんな風に言う。

「デプロメールは合わなくて大変な目にあった」
「パキシルでとても苦しい思いをした」

などである。普通、SSRIは旧来の抗うつ剤よりは副作用が少なく服用しやすいとされているが、旧来の抗うつ剤のほうがむしろ服用しやすいということもある。実際、そのような話がこのブログでも出てくる。(「パキシルとアンプリット」参照)

僕は上のようにSSRIがダメだと言う患者さんでも、ほんとうにそうかはアテにならないと思っている。調子の悪い時は一見そういう風に見えることがあるから。(参考)

真に合わないのは、やはり中毒疹が出る人であろう。また、ほぼ使わないほうが良いと考えられる場合もある。それは本来なかった自傷行為やパニックなどの精神科の症状が出る場合などである。これは何のために精神科の治療をしているかわからない。(参考

僕は、例えば初診時に「デプロメールがダメだった」と患者さんから言われた場合、少なくともその日にはデプロメールは処方しない。もし、そんなことをしたら、「何を考えているんだろう」と思われるか、あるいは相当なヤブと思われるだろうから。治療上、そこまでリスクをとる必要はない。

うちの患者さんで、そんな風にSSRIや3環系抗うつ剤を到底服用できそうになかったが、その後なんとなく慣れてこれらの薬物が服用できるようになった人が数人いる。ある女性患者さんは非常に薬が弱く、SSRIどころかドグマチールすら副作用で服用できないほどであった。パキシルなどを5mg程度使っても、めまい、ふらつき、眠さ、不安感が出てかえって悪くなるのである。当初、漢方薬くらいで様子を見ていたが、不安、抑うつ、倦怠感が治まるようには見えなかった。こういう人はアルコールもほぼダメなことが多くエゾウコギなども難しい。

その後、いろいろ試行錯誤の後、なんとかパキシルが服用できるようになったのである。今はパキシル10mgとワイパックスくらいでかなり安定し仕事もしている。この人、不思議なことに、パキシル10mgが服用できるようになると、ジェイゾロフトもアンプリットも少量なら服用できるようになった。いろいろ変更してみたが、どうみてもパキシルがずっと良かった。この人の子供さんについては少しだけ紹介したことがある(詳細)。

なぜこのように服用できるようになるのだろうか?

これは、精神科治療を始めて、ワイパックスやデパス、レンドルミンなどの精神科としてはやさしめの薬を服用しているうちに、なんとなく向精神薬に慣れていくのが大きいのではないかと思っている。決して交叉耐性があるわけではないが、こういう脳の忍容性の変化を経験することは多い。

あと、主治医の祈りが通じるのもあるのかもしれない。(これは冗談)

参考
デプロメールとレスキューレメディ&PMS