衝撃的な事件で終わらせないために(1) | 佐世保市議会議員 橋之口裕太の熱血通信!!

佐世保市議会議員 橋之口裕太の熱血通信!!

元高校教師の新たなチャレンジをお伝えします!!

現在、兵庫教育大学障害科学コースで教授として活躍している石倉先生は、私が長崎国際大学社会福祉学科1年生の教養セミナー(ゼミ)でお世話になった先生で、学生時代から現在も公私ともに大変お世話になっている。

 

普通科の高校を卒業し、社会福祉学科へ入学し、福祉のイロハもわからない私たちに、初めての教養セミナーで、石倉先生が私たちに読むように指定した本が「生命(いのち)輝く日のために」という本だった。

 

 

本の内容はこうだ。

 

ダウン症という障害をもった赤ちゃんが産まれたが、すぐに手術をしなければ死んでしまう。

 

しかし、親は手術をすることを拒否(きょひ)する。

 

「このまま自然に死なせてやることが、このこの幸せだと思うから」というのがその理由だった。

 

今にも静かに消されてしまいそうな命の現実に立ち会っていた看護師が救いを求める手紙を記者に届けたことから取材がスタートした。

 

本は、その取材記録として1985年9月に第一版が出版された。

 

出版されてから今年で31年の月日が流れ、障がい者を支える福祉サービスも拡充するなど徐々に環境も変化してきた。

 

しかし、医療技術の進歩にともない、人間の生死が「神のみぞ知る」という時代から、医者、つまり人間の技術によって左右されるようになったことで、同時に様々な課題も誕生してきた。

 

そのひとつが「出生前検査」のあり方についてだ。

 

先日(7月19日)、妊婦の血液から胎児のダウン症などを調べる新出生前診断を受診した人が、検査開始から3年間で3万615人だったとする集計結果が発表された。

 

 

発表された内容は、受診者は徐々に増えており、利用が拡大している実態も明らかになり、その中で、染色体異常の疑いがある「陽性」と判定されたのは547人いたこと。

 

さらに羊水検査に進んで異常が確定したのは417人で、そのうち94%に当たる394人が人工妊娠中絶を選択したということ。

 

その中には陽性とされながら、確定診断で異常がなかった「偽陽性」も41人いたということ。

 

当然であるが、胎児はもちろん、赤ちゃん(乳児)は言語などで「産まれたい」「こうして」などの意思表示は明確にできない。

 

そのため当事者(胎児、乳児)の真意を知ることはできないが、もし、親が障がいについて事前に知らなかったら(わからなかったら)そのままこの世に誕生していた可能性がある命を、医療技術の進歩によって、障害の有無を生前に知ることができるようになった現在は、親や親族も巻き込みながら、厳しく、難しい「選択」しなければならなくなってしまった。

 

「異常」という結果の末、94%の人工中絶を選択する背景には、現在の日本社会が、障がい者はかわいそう、家族や兄弟も大変、惨めだ、恥ずかしい、などといった「障害観」といった価値観や現状がいまだに支配的だからともいえるのではないだろうか。

 

「障がい者なんかいなくなれば良い」という身勝手な犯行から、障がい者福祉について考える。