2階にいる主人から、
「これから救急車で病院まで行くから、入院の用意をしてくれる?」
とLINE電話がありました。
私は慌ててスーツケースを引っ張り出し、寝着や下着、洗面用具など、とりあえず1週間分程を詰め込みました。(結果、全く使われなかったのですが)
それから数十分後、ピーポーピーポーとサイレンを鳴らしながらやって来た救急車は自宅目の前に止まりました。
もちろん、この時も私たちは主人の元へと行けません。
これから入院するって言うのに…
こんなにも辛そうなのに…
リビングのドアを開けて、覗き込むように玄関に立つ主人を見ました。
「行ってくるよ」
「うん。絶対帰って来て。絶対、 絶対。」
…これが、直接の主人との最後の会話になるなんて。
感染してもいいから、強く強く抱きしめたかった。
行ってらっしゃいのキスをしたかった…
救急車へと乗り込む姿を玄関先で見ていた私は、なんとなくホッとしたのを覚えています。
「ようやく先生に診てもらえる。きっと大丈夫。」
その願いは虚しくも叶わないのですが…
【続く】