第1 設問1

1 Xが本件命令が発せられることを事前に阻止するためには,差止めの訴え(行政事件訴訟法(以下,省略する。)3条7項,37条の4)を提起する。以下,検討する。

2 差止めの訴えの要件は,①一定の処分,②蓋然性(3条7項「されようとしている場合」),③重大な損害,④補充性,⑤原告適格(37条の4第3項),⑥被告適格(38条1項,11条1項1号),⑦管轄(38条1項,12条1項)となる。

3(1)ア まず,①一定の処分とは,裁判所が審理する上で,特定されていれば足りる。

      本件では,消防法(以下「法」とする)12条第2項により,Xに移転命令が発せられ,移転する義務が生じるため,特定性を満たす。次に,本件葬祭場の営業が開始されれば,Y市長が本件命令を発することが「確実」なので,蓋然性(②)を満たす。

    イ また,「重大な損害」とは,損害の回復の困難の程度を考慮することとし,損害の性質及び程度,並びに処分の内容及び性質を勘案する。その上で,「損害」とは,名誉・信用が失われることを指す。なお,取消訴訟(3条2項)と執行停止(25条2項)が出来る場合,「重大な損害」の要件を欠く。

      Y市では,法12条2項による移転命令が発せられた場合,直ちにウェブサイトで公表する運用をとっており,Xはそれによって顧客の信用を失うこととなり「損害」が発生する。その上で,移転命令の時点で,取消しの訴え及び効力の執行停止をしたとしても,既に失った顧客の信用は取り戻すことは困難であり,実効的ではない。よって,「重大な損害」にあたる。

    ウ 次に,上記の通り,取消しの訴え及び執行停止は,実効的でないため,補充性を満たす(④)。

    エ さらに,Xは,名宛人であり(⑤),Y市に被告適格,Y市の所在地の地方裁判所に管轄がある(⑦)。

(2)以上により,上記Xの請求が認められる。

第2 設問2

1 まず,Xが本件命令の取消しを求めるためには,法10条4項,政令19条1項,政令9条1項但書による短縮措置をとらないことが違法であるとの主張をする。以下,検討する。

(1)まず,法10条4項は,位置,構造,設備の技術上の基準という技術的事項を定めている。また,法1条は,火災を予防し,国民の生命の保護という重要な目的を定めており,かかる目的を保護するためには,専門的な事項にあたる。さらに,政令9条1項1号但書は,「安全であると認めた場合」という抽象的な文言を使用している。とすれば,Y市市長に広い裁量がある。その上で,本件基準①~③に基づき,Xに対し,短縮措置を拒否している。そこで,以下,本件基準の法的性質等につき検討する。

(2)この点,本件基準は,法ないし政令と委任・受任の関係にはなく,根拠法規とはならない。また,本件基準は,Y市が内部基準と定めており,行政規則にあたる。とすれば,本件基準は,裁量基準(行政手続法5条1項参照,12条1項参照)となる。

その上で,裁量基準は,合理的理由がなされれば,かかる裁量基準による処分は違法となる。

本件において,政令9条1項1号但書の趣旨は,製造所そのものに変更がなくても,製造所の設置後,製造所の周辺に新たな保安物件が設置された場合に法12条により,移転等の措置を講じなければならなくなる事態を避けることを主な目的にしており,既存事業者の利益と,国民の生命・身体及び財産を火災から保護する(法1条)目的との調整規定である。その上で,上記両者の利益を調整することは,できる限り明確であることが望ましい所,本件基準①~③が規定されている。とすれば,合理的理由はある。

(3)ア もっとも,裁量基準が合理的理由があるとしても,その基準を機械的に適用・運用して処分をなしたことは,裁量権の逸脱・濫用(30条)となる。

   イ 本件政令9条1項1号イで30メートル以上の距離を設けた趣旨は,火災を予防し,警戒し,及び鎮圧し,国民の生命・身体及び財産を火災から保護するため(法1条)の技術上の基準(法10条4項)を定めたことにある。その上で,技術上の基準は,「位置・構造・整備」の3つから成り立っている基準である(法10条4項参照)。すなわち,「位置・構造・整備」から相関的に判断して,上記国民の生命等の保護を達成することが,Y市の責務として求められている。次に,Xとしては,本件基準①②にはあてはまらないものの,本件基準③の定める高さより高い防火壁を設置すること,及び,危険物政令で義務付けられた水準以上の消火設備を増設することについては,技術的にも経営的にも可能であり,仮に,本件葬祭場から18メートルしか離れてなくとも上記Xの措置により国民の生命等の保護を図ることが可能である。また,Xは現在の倍数を減らすと経営が成り立たなくなるため,現在の倍数を減らせない状況にある。さらに,20メートル以上離れた位置に移転することが不可能となっており,今後営業すること自体が不可能となってしまう。

     とすれば,本件基準①~②をXに適用したことは,Xの利益を図っておらず,仮に,Xの上記措置を考慮しないことは「重要な事実誤認」にあたり,違法である。

   ウ 次に,葬祭場は,Xが営業を始めた平成17年の時点では,建築不可能であったが,平成26年の建築制限が緩和され,建築可能となった経緯がある。

    その一方で,上記の通り,Xは,現在の倍数を減らせない状況にあり,移転も不可能である。とすれば,営業の自由(憲法22条)が侵害される結果として,実質的に職業選択の自由自体が制約されている重大なものである。その上で,Xは,上記措置をとっている以上距離短縮しうる事案である。

     よって,本件基準②をXに適用したことは,比例原則に反し,違法となる。

2 次に,Xとしては,政令23条の要件につき,自らが該当しているにもかかわらず政令9条1項1号但書を適用したことは違法であるとの主張をする。

(1)この点,政令23条の趣旨は,法により危険物規制の基準が全国で統一される一方で,現実の社会には,一般基準には適合しない特殊な構造や設備を有する危険物設備が存在し,予想しない施設が出現する可能性もあるため,こうした事態に市町村等の判断と責任において,政令の趣旨を損なうことなく実態に応じた運用を可能とすることにある。

(2)この点,判断と責任に基づく規定であり,市長に広い裁量がある。もっとも,その裁量を逸脱・濫用したときは違法となる。

   私は,短縮ないし距離制限をはずす以上,厳格に判断すべきである。

   Xとしては,代替措置をとっているが,特殊な構造や設備を有するとは言えず,予想しない設備にもあたらない。

(3)よって,政令23条をXに適用しないかったことは適法である。


→2再現不可能でした・・・・・。

第3 設問3

1 移転費用について

  憲法29条3項による損失補償を実質的当事者訴訟(4条後段)により請求する。

  憲法29条3項の趣旨は,憲法14条の平等原則ないし憲法29条1項の財産権の確保をすることにある。

   とすれば,損失補償が認められるためには,(a)一般人か特定人か,(b)財産権の本質を害するほどの強度のものかで判断する。

  まず,建築基準法(建基法とする)48条の用途地域は,一般人を対象としている。しかし,上記の通り,平成26年の建築規制の緩和により,建築可能となっており,本件移転義務はXにしか生じえないものである。よって,特定人に対するものである(a)。

   もっとも,法12条により,Xには,技術上の基準に適合するように維持する責務があり,本件距離制限は,国民の生命等を保護する消極目的規制である。とすれば,財産権に内在した制約とも言える。

   しかし,上記の通り,仮に20メートルの距離が必要となれば,Xは費用面で移転が不可能となる。その上で,平成17年の営業当時は,葬祭場は建築不可能であるにもかかわらず,平成26年の緩和により,一方的に移転義務が課され,予想できないものであった。

   よって,上記(b)も満たす。

2 以上により,上記Xの請求は認められる。

以上


平成27年 司法試験(論文)再現答案(憲法)第1 設問1 小問(1)について

1 BとCを同様に扱ったことについて

(1)           まず、Bは、甲市シンポジウムで反対意見を表明したことで(憲法(以下、省略)21条1項)Cと同一に扱ったことが14条1項の平等原則に反し、違憲・違法であると主張する。

(2)           ア この点、14条1項の「法の下」とは、法内容のみならず、法適用も含まれる。なぜなら、両適用があって個人の尊厳(13条前段)を図ることが可能であるからである。また、14条の「平等」とは、各人の個別的差異を無視した絶対的平等はかえって平等ではなくなるため合理的理由のある相当的平等は許容される。その上で、14条1項の「人種等」は例示列挙であり、その他の人権においても、要保護性を加味して判断する。そして、Bが反対意思を表明したという表現の自由(21条1項)に基づく差別は、合理的意思は認められるか問題となる。

イ まず、Bが甲市シンポジウムで¥yが有力な代替エネルギーであると考えているが、安全確保の徹底が必要不可欠であるとしてY採掘事業に関して、公の場で反対意見を表明したことは、21条1項で保障される。そして、人の生命・身体に対する安全確保は、人的生存にとって必要不可欠な利益(13条後段)であって、Bの反対意思は、その利益を確保するため、重要な権利性を有する。すなわち、Bの表現の自由と知る権利は表裏の関係にある。

 さらに、Bは、天然資源開発に関する研究を行っている大学院生であって、甲市シンポジウムで反対意見を述べることは、日頃の研究を発表することで、自己の人格を発展させる自己実現の価値を有する。

 かかるBの表現の自由の重要性からすれば、Cと同一に扱ったという差別は、(a)目的が必要不可欠で、(b)手段が必要最小限度でなければ、14条1項に反する。

 本件では、Bが正式採用されない目的は、BY市対策課の職員としてふさわしい能力・資質等がないと判断したことにある。

しかし、多様な意見を取り入れることは、安全性等の確保に資する。とすれば、上記目的は、必要不可欠とはいえない。

次に、Cは、甲市シンポジウムで事件を起こし、前科になっているが、Bは、穏当な方法で反対意見を述べたにすぎず、手法・行動に大きな違いがあり、Cの適格性とBの適格性を同一視したことは、手法・行動を考慮しておらず、必要最小限とは言えない。したがって、BCを同一に扱ったことは14条1項に反し、違憲・違法である。

2 反対意見を持っていることを理由として正式採用されなかったことについて(以下、②とする。)

 次に、Bは、反対意見を持っていることは、信条(14条1項、19条)に基づく差別にあたり、14条1項に反し、違憲・違法であると主張する。

この点、「信条」とは、世界観・人生観に準ずるようなものに限定して考えるのではなく、広く内心一般を指すと考える。なぜなら、19条は、20条1項とは、あえて別に規定していることと、内心一般と世界観・人生観に準ずるものとは、区別することが不可能であるからである。

その上で、14条ないし19条の信条に基づく差別は、内心にとどまる限りで、絶対的保障を受けるため、かかる差別は、14条1項、19条に反し、違憲・違法である。

本件Bは、Y採掘事業は安全性を高める必要性があるとの理由で反対しており、かかる理由は、内心一般にあたる。その上で、BDの勤務実績は、ほぼ同程度ないし上回るものであり、信条に基づいた理由で正式採用されなかったと考える。すなわち、信条に基づいた差別であり、それ自体合理的理由に欠け、14条1項・19条に反し、違憲・違法である。

3 意見・評価を甲市シンポジウムで述べたことが正式採用されなかった理由について(以下、③とする。)

(1)           上記③は、21条1項に反し、違憲・違法である。

(2)           まず、甲市シンポジウムで反対意見を述べることは、21条1項で保障される。そして、前述の通り、かかる表現は、重要な権利性を有する。

また、正式採用されないことで、Y市事業に対する特定の思想・信条・見解(評価も含む)に対する内容及び見解規制にあたる。そして、正式採用されないことで、表現の自由に対する萎縮効果が生じる。

 したがって、規制態様は強度である。

(3)ア とすれば、権利の重要性・規制態様からすれば、目的は必要不可欠で、手段が必要最小限でなければ、21条1項に反し、違憲・違法である。

イ 前述の通り、目的は、Bが能力・資質を欠くことにある。しかし、Bは的確にYの問題点解決能力を有する者であり、むしろ能力・資質を有する。したがって、目的は、必要不可欠とは言えない。

次にBの経歴を考慮すれば、情報収集・情報提供・意見交換会の運営がスムーズになり、Bの専門性を考慮しておらず、反対の意見・評価を有する事実を過大に評価し、Y事業の安全性を高める機会を自ら喪失させている。とすれば、Bを正式採用しなかったことは、必要最小限とは言えない。したがって、③は21条1項に反し、違憲・違法である。

第2 設問1 小問(2)について

1 ①について

(1)           まず、14条1項は、別異に扱った差別を規制するものであり、同一に扱ったことは、14条1項の差別にあたらない。

(2)           仮に、14条1項の差別にあたるとしても、公務員の中立的運営とそれに対する国民の信頼を確保するという公務員関係の存在と自律性を憲法自体が認めている(15条2項)ため、A市には裁量がある。また、A市は、正式採用するという人事権を有しており、A市は、広い裁量を有している。

とすれば、①の差別は、合理的理由がある。

 したがって、14条1項に反しない。

2 ②について

(1)14条1項の信条・19条の思想・良心は、信教の自由に準ずる世界観・人生観という限定したものを指す。

(2)安全性を高めることは、研究者として当然有する理念であって、世界観等にあたらない。よって、14条1項、19条に反しない。

3 ③について

(1)A市の市民に情報提供するという点で知る権利を図ることはできる。しかし、情報提供にすぎず、自己統治の価値が薄いと言える。

(2)Bの適格性を判断したことでたまたま、Bの意思・評価に基づいた表現内容を規制したにすぎず、間接的な規制にすぎない。また、Bの意思・評価に着目して規制した訳ではなく、見解規制にあたらない。とすれば、規制の程度は穏やかである。

(3)前述の通り、A市には広い裁量がある。

(4)したがって、Bを正式採用しなかったことは、合理的理由があり、21条1項に反しない。

第3 設問2

1 ①について

(1)           まず、同一に扱った点について検討する。

この点、原告の主張によれば、14条1項は、各人の個別的事情を考慮しない機械的平等は、かえって、個人の尊厳を侵害するものと考えられる。

Cは、甲市シンポジウムでYの採掘への絶対的な全面反対及び暴力的な方法で事件を起こし前科となっている。また、Bは、Cと異なり安全性が確保されなければY事業に肯定的な意見である。

よって、BCの手法・行動という個人の具体的事情を考慮しないで同一に扱ったことも機械的平等を図ったことにあり、実質的に差別にあたる。

(2)           次に、A市においては、Y事業に関して、市民の間でも賛否が大きく分かれ、住民運動が行われている現状では、Bの反対意見を表明することは、自己統治の価値を有する。よって、Bの表現の自由は重要である。

(3)           もっとも、被告の反論の通り、広い裁量を有する。

(4)           よって、目的が重要で、手段との間に実質的関連性を有すれば、14条1項に反せず、合憲である。

Y対策課に求められる能力・資質は、Y事業遂進を前提とした専門知識を持ったものであり、BCと異なって絶対的に不可能としている訳でもなく、安全性を高めることを目的としている。とすれば、Bを採用しない目的は、制度に反するものであり、重要性に欠ける。さらに、BCと異なり、前科もなく一定の留保付でY事業に肯定的であり、Y事業にとって有益な人物である。とすれば、考慮すべきことを考慮せず、不採用とすることは、実質的関連性に欠ける。したがって、①は、14条1項に反し、違憲・違法である。

保存出来なかったため途中 本番では最後まで書いています。


以下の事項を一読頂けると幸いです。

・ご指摘・ご質問は、特に不要だと考えております。
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・他の掲示板(2ch等)で議論されることはまったく望んでいませんので、
私としてはご遠慮させて頂きます。
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第1 設問1

1(1)まず、XはY2社に対して労働者派遣法(以下、法とする。)42条の2に反し、XY2社間に労働契約(労働契約法、以下労契法)6条、民法623条)の成立を主張する。

(2)この点、同一事業所の派遣労働者の受け入れは3年を超えることはできない。もともと、Y2社とY1社との間では、請負契約が締結されているものの、平成22年9月1日の行政指導によれば偽装請負であったものと言え、実体は、派遣であったといえる。とすれば、Y2社は平成24年12月頃にはすでに3年を超えて受け入れをしており、法42条の2に反する。以上がXの主張となる。これに対して、Y2社は、法に反したとしても、法は、企業間の規律を定めたものにすぎず、Y2社とXとの雇用契約を規律する法としては機能しない。また、仮に、法42条の2に反した場合でも、XとY2社との間に雇用契約が成立すると、Y2社の従業員の地位が派遣労働者にとって代わることとなり、一時的な労働力の確保するという派遣法の目的に反することとなる。私は、Y2社の反論が法の趣旨・目的に合致するため正当である。

(3)以上により、上記Xの主張は認められない。

2(1)次に、XはY2社に対して、法人格否認の法理により(民法1条2項・3項)労働契約の成立を主張する。

(2)法人格否認の法理とは、法人格の形骸型ないし濫用型の際、派遣元との雇用契約が無効となり、派遣先との間に雇用契約が成立する。かかる主張がXの主張の根拠となる。これに対し、Y2社の反論として、以下の通りである。

(3)まず、Y1社・Y2社間に資本関係や人的関係はない上に、Y1社によるXを含む作業員の採用面接にY2社の社員が立ち会ったなどの事情は認められないため、Y1社はY2社の一部門であったとは言えず、形骸型にはあたらない。また、行政指導の後、直ちに、解消する方法をとっており、派遣法を潜脱するという不法な目的はない。とすれば、濫用型にもあたらない。私も、Y2社の反論が正当であり、Xの上記主張は認められない。

3(1)さらに、Xとしては、上記主張が認められないため、Y2社との間に、黙示の雇用契約成立を主張する。Xの主張の根拠としては、①派遣先において、指揮・命令を受け、②派遣先が賃金ないし、労働条件について決定し、③派遣元企業の存在が形式的・名目的になっている場合には、黙示の雇用契約成立が認められる。これに対し、Y2社は、以下の反論をする。確かに、派遣労働者は、派遣先において指揮等を受けている(①)。しかし、Y1社・Y2社間には、資本関係や人的関係はないため、②は認められない。さらに、Y1社の取引先はY2社に限られておらず、独自の企業体として活動しているため③も欠ける。以上がY2社の反論となる。私は、本件においては上記②③の要件が欠けるため、Y2社の反論が正当であり、Xの上記主張は認められない。

第2 設問2

1 XはY1社に対して、平成25年2月28日の解雇が労契法16条に反し無効との主張をする。

2 この点、本件解雇は、労働者に帰責性はなく、整理解雇にあたる。そして、整理解雇は、労働者に帰責性はないため、その要件は厳格に判断する。さらに、雇用契約期間の途中で解雇するには、労働者の雇用に対する期待を害するため、「やむを得ない事情」(民法628条)が必要となるため、かかる点からも厳格に判断することとなる。その上で、整理解雇は、(あ)経営上の必要性、(い)解雇回避努力を尽くしたか、(う)人選の合理性、(お)手段の相当性、がなければ、客観的合理的理由や社会通念上相当性が欠け、権利濫用にあたり無効となる。

3 まず、Y2社から経営環境の悪化により生産規模の縮小を余犠なくされたとの理由で、Y1社との契約が打ち切られている。Y2社は、主要な取引先であり、Y1社の経営悪化は避けられない。さらに、他の発注者からの契約打ち切りにより、Y1社の財務状況が急速に悪化した事情もある。かかる事情において、余剰人員をかかえることは、Y1社は倒産の危機となる(あ)。次に、Y1社はXらに対し、別の就業場所を紹介してそこでの作業をするように打診しており、(い)も認められる。さらに、Y2社で働いていたXらを対象としており、(う)もある。また、30日間の予告期間(労働基準法20条1項)も設けられており、(お)もある。したがって、解雇は無効とならず、Xの上記主張は認められない。

第3 設問3

1 Xの請求は労契法19条に基づく主張である。仮に、労契法19条1号・2号にあたれば、客観的合理的理由と社会通念上相当性が必要となる。では、同条1号にあたるか問題となる。この点、同条1号は当該有期労働契約の更新が形骸化している場合をいう。本件では、Xは、数年間に渡って、同一内容の雇用契約を反復更新しており、形骸化しているとはいえない。したがって、同条1号にはあたらない。

2 次に、同条2号にあたるか。この点、同条2号は期待権保護型と言われ、合理的期待が必要となる。確かに、Y1社は常用雇用を前提として特定労働者派遣事業の届出ではなく、非常用雇用を前提とした一般労働者派遣事業の許可を受けている。とすれば、長期の雇用があるとの合理的期待は生じないとも思える。しかし、Xは平成20年4月1日に雇用された後、平成25年3月31日まで、5年間に渡ってY1社に雇用されている。すなわち、その間、契約更新も数回行われていう。とすれば、更新につき合理的期待は生じていたといえる。よって、同条2号にあたる。

3 その上で、本件X雇い止めには、Xに帰責性はなく、整理解雇に準する要件が必要となる。前述のように、(あ)~(お)を満たし、本件X雇止めは、客観的合理的理由ないし社会通念上相当性を満たす。

4 以上により、上記Xの主張は認められない。

以上



第1 設問1

1 Xは会社の5%の基本給カットについての労働協約の規律効(労働組合法(以下、省略)16条)がXに及ばず民法536条2項に基づき差額を請求するよう訴訟提起する。

2 この点、労働協約締結は、会社と組合の取引であってギブアンドテイクの原則が妥当するため不利益変更原則が原則として生じない。もっとも、一部の組合員を殊更不利益に扱う目的があれば当該労働協約の規律効は生じない。そして、その目的は、不利益の内容程度、代償措置、慣行、締結における手続き等を考慮して決する。

(1)確かに、基本給5%カットは正社員・パートタイマーすべての組合員に不利益な内容とも言える。しかし、賞与・退職金は基本給に連動しており、その減額は長年の積み重ねによって不利益は大きいものとなる。また、一般に賞与・退職金は正社員に支給されるものであり、正社員に特に不利益な内容・程度は正社員に特に大きいものと言える。

(2)また、確かに、同カットは、平成27年4月から行われるとされており、6カ月以上の経過措置が設けられている。さらに、平成26年冬の賞与を前年より5%アップするとの経過措置も設けられている。その上で、雇用維持に関する規定も設けられている。しかし、基本給5%カットは賞与・退職金と連動し、基本給の性質は、労働者の生活保障を維持することにある。とすれば、賞与一回のみ5%アップしただけでは、不利益は緩和されない。また、雇用維持も努力規定にすぎず、法的拘束力も弱いものと言える。さらに、期間としても短いと言える。

(3)次に、慣行としての手続きは、形式的に満たしているようにも見えるものの、基本給カットは「重要事項にあたり」そもそも慣行が及ばない事項である。前述の通り、基本給カットが不利益として大きい以上、その協約締結は組合員の意思・手続保障をできる限りすべきであったといえる。とすれば、手続の瑕疵は大きいと言える。

(4)なお、甲とZは元々親しい間柄であり、社長甲がZを推薦した事情からすれば、会社の利益に沿うよう組合員の不利益に扱うことも十分考えられる。

3 したがって、8割の組合たる正社員に特に不利益にあたる。以上により、本件協約の規律効は生じず、不利益変更禁止の原則により、Xには労働協約は適用されない。

4 上記Xの請求が認められる。

第2 設問2

1 Xらは本件戒告たる懲戒処分が7条1号・3号の不当労働行為にあたるため、不利益取扱の中止命令ないしポストノーティス命令を労働委員会(27条以下)に申し立てる。さらに、7条1号・3号にあたり、不法行為による損害賠償請求(民法709条)を裁判所に請求する。以下、7条1号・3号にあたるか検討する。

2 7条1号

(1)まず、7条1号にあたるには、労働組合の正当な行為にあたることが必要となる。そして、正当な行為にあたるかは、主体・目的・態様から判断する。本件Xらは、Zら執行部の承諾を得ずに、独断で行っているが、組合の目的が組合員の経済的地位向上(1条)にあたることと、組合民主主義が認められる以上、独断で行ったとしても、主体・目的は正当である。

 また、組合員と言えども、勤務時間中は、職務専念義務を負うが、リボン着装を認めないことは、従業員が全人格を職務に集中させる義務を負わせることとなり妥当ではない。そこで、勤務時間中のリボン闘争は、内容・時間・大きさ・職種を考慮して、業務に具体的な支障が生じるかを検討し、仮に、支障が生じなければ、態様は正当であったと言える。

 本件Xらは、接客業を主体とした業務ではなく、A工場という内勤にあたり、菓子製造という接客業にあたらない職種である。時間も勤務時間中全部ではなく、始業開始から30分間という短時間にすぎない。また、リボンの内容も「基本給カットを撤回せよ。」という法的に認められる内容であり、大きさも縦10cm、横2cmという小さなリボンを左胸部に着装したにすぎない。よって、態様は正当である。したがって、組合活動は正当な行為にあたる。

(2)次に、不利益取扱いとは、組合員の経済的な地位の不利益のみならず、組合活動に対する影響も考慮するところ、正当な組合活動に対して懲戒処分を行うことは、萎縮効果が生じる。とすれば、不利益取扱いにあたる。

(3)さらに、同条1号が「故をもって」としているため、不当労働意思の内容としては、意欲まで必要である。本件では、社長甲自ら「グループ解散」を命じており、反組合的な意欲が推認される。

(4)したがって、7条1号にあたる。

3 7条3号について

(1)支配介入とは組合弱体化を図る行為をいう。本件では、正当な組合活動に対して懲戒処分を行うことは萎縮効果が生じ、組合弱体化行為にあたる。

(2)さらに、7条1号とは異なり、「故をもって」との文言がない以上、認識で足りる。前述の通り、Y社のトップである甲社長がグループ解散を命じており、リボン着用の内容も正当なもの対して、懲戒処分が行われており、会社には支配介入につき認識がある。よて、7条3号にあたる。

4 以上により、上記Xの申立て・請求が認められる。以上

刑事系 再現 

午前中

主査:XがYを車でひきました。その後、ひいたことを認識して逃げました。その後、死亡しました。何罪が成立しますか?

私:自動車運転過失傷害と保護責任者遺棄致死罪が成立します。

主査:では、保護責任者遺棄致死罪についてお聞きします。

主査:保護責任者遺棄致死罪の作為義務は何ですか?

私:法的作為義務、作為容易性・可能性です。

主査:法的作為義務は何から生じますか?

私:条理・先行行為等です。

主査:はい、いいです。

主査:次に、ひいたときに、死亡することを認識して逃げたらどうなりますか?

私:保護責任者遺棄致死罪で変わりません。

主査:でも、死亡することを認識しているので、殺人罪は成立しない?

私:しません。

主査:本当?

私:はい。

主査:故意があるんですよ。

私:はい。

主査:では、保護責任者遺棄致死罪がなお成立する根拠は何ですか?

私:殺人罪の作為義務と同視できません・・・。

主査:どういうことですか?

私:確かに、故意はあるかもしれませんが、前提として、殺人罪の実行行為性が欠けます。

主査:保護責任者遺棄致死罪と殺人罪の作為義務は異なると言うのですか?

私:はい。

主査:それは実務ですか?

私:はい。

主査:では、事例を変えます。ひいた後、人に見つからない場所に移動した場合は、何罪が成立しますか?

私:殺人罪です。

主査:どうしてですか?

私:殺人罪の実行行為性、すなわち、作為義務が認められます。

主査:作為義務は?

私:法的作為義務、作為可能性・容易性です。

主査:法的作為義務についていってください。

私:ひいた先行行為があります。形式的な根拠です。自動車がのって、人をはねた場合には、法令上救護義務があります。法令の義務です。これも形式的な根拠です。また、今回は、人に見つからない場所に移動することは、排他的支配関係があります。実質的な根拠です。作為容易性・可能性も認められます。

主査:はい、わかりました。

主査:では、事例を変えて、ひいたあと、見つからない場所に移動して、見つからない場所に移動したあと、誰かが、暴行を加えた結果、死亡した場合にどうなりますか?(ここから再現不能です。)

私:因果関係の問題になります。

主査:では、因果関係が認められますか?

私:放置した不作為が死亡結果の危険を現実化した場合に、因果関係が認められます。その危険が現実化したとは、直接原因を与えたか、直接原因を与えないとしても、介在事情を誘因した場合には、因果関係が認められます。

私:今回は、死亡結果について不作為行為が直接原因を与えた場合には、因果関係が認められます。

主査:では、暴行行為が直接原因を与えた場合には、因果関係が否定されますか?

私:今回は、介在事情を誘因していないので、因果関係が否定されます。

主査:本当ですか?

私:はい。

主査:わかりました。何かありますか?

副査:特にありません。

コメント:刑事系は、民事系より、口調が厳しかったような記憶があります。

第1日目 1025日(土)午前 受験科目 民事

第2日目 1026日(日)午前 受験科目 刑事

民事再現

事案
主査:A→Y500万円の貸付
A
はその後Xに、Yに対する債権を無償で譲渡した。
(住所地は、Aが東京、Xが大阪、Yが横浜)
主査本件の訴訟物はなにか。
金銭消費貸借契約に基づく貸金返還請求権です。
主査:請求の趣旨は?
YはAに500万円を支払え。ということになります。
主査:請求原因は?
要物契約ですから、①返還約束、②交付、になります。
主査;どこに訴えを提起できるか。

まず、被告の住所地が原則になります。

主査:何条かわかりますか?

民訴4条です。

主査:他には?

東京です。民訴5条です。あと、民法484条です。金銭債権ですので、義務履行地です。

主査:条文見てないですが、覚えているのですか?

はい。覚えてます。

主査:良く勉強されていますね・・・。

主査:では、裁量移送は認められるか。

はい。認められます。

主査:条文は?

確か、17条あたりです。

主査:まぁ いいでしょう・・・。
主査:では、AY間の債権に譲渡禁止特約がついていた場合、Yの弁護人はどういう抗弁を提出するか。

・・・・・・。しばらく考えて・・・・・。そうですね。譲渡禁止特約は、悪意ですしょうか?

主査:もっと簡単に考えてください。

債務者には対抗できないので、対抗要件の抗弁でしょうか・・・・?

主査:いいでしょ。

事案の続き
主査:Yにはめぼしいは財産はなかったが、父親Bが不動産を有しておりBが死亡してYの他に相続人Cがいる場合(不動産の登記は未だB名義)

主査:Xが先の訴訟に勝訴したとしてその後どうすることが考えられるか。

まず、任意で支払うようお願いします。
主査:Cが従わない場合はどうか。

差押手続をとります。
主査:その後Yの共有持分登記をして持分を差押さえ、XCとの共有状態となっている場合はどうするか。
自己の持分を売って現金化します。競売手続きでしょうか・・・・。

主査:・・・・・
主査:Bの財産が不動産でなく500万円の預金債権だった場合はどうするか。
差押します。

主査:具体的にいくら差押えられますか?相続ですよ。

当然分割なので250万円です。


主査:Yの弁護士が委任状に報酬に関する事項を具体的に記載せず、追って伝えるとした場合は弁護士倫理規定上問題があるか。

問題があるかと思います。

主査:どのあたりですか?

報酬をあらかじめ明示する必要があります。

主査:では、追ってでは足りないですか?

はい。通常、弁護士事務所では、報酬一覧表が張ってあります・・・・・。依頼者から追ってでは、わからないので、予め金額を明示する必要があるかと思います。

主査:はい いいですよ。良く勉強されていますね・・・・。

主査:(副査をみて)何かありますか?

副査:とくにありません。

主査:終わります。

だいたい20分ぐらい。優しい試験管でしたので、スラスラ答えられた。


(参考になれば・・・)

先日試験受けてきました。


結構疲れるものですね。


あとは結果を祈るだけです。


よく頑張った1年だったと思います。


全力で走ったような気がします。


体がぼろぼろ・・・・・。



今日から新学期。


私の方も明日から新しいスタートとなります。


今やれることを全力でやりたいと思います。