「商売繁盛で笹もってこい!」
毎年1月8日から12日までは恒例の「十日ゑびす大祭」が開かれる。京都の商売人にとっては、初詣よりもこちらを大事にしている人が多いくらい、気合の入りようも相当なものだ。
飲食店や、専門店などで、軒先などで掲げられた笹飾りを見た方も多いことだと思う。
この行事は、四条大和大路下がる西側のゑびす神社に、商売繁盛の祈願のためお参りするもので、その歴史は相当古くからあるそうだ。
神社なので、当然朝昼にお参りすることもできるが、不思議と人はまばら。9日から11日までの3日間は、夕方以降に露店が出る。これがいっそうお祭り気分を盛り上げるのか、露店が閉店する夜11時ごろまでピークが続き、遅い時間になればなるほど、仕事帰りにお参りに来る人たちでごった返す。夜9時から10時ごろにかけては、満員電車さながらで、押すな押すなの大行列だ。
一方で、京都らしいなと思うのは、景気づけなのか、大勢の舞妓さんや芸妓さんを引き連れてお参りにやってきている、「これぞ旦那衆」と言うような人に遭遇することだ。
お参りの楽しみ方としてはいくつかあるがまずは、境内入ってすぐ左手の社務所のおみくじだ。このおみくじは、京都で1番当たると噂する人もいるほどで、商売人にとっては、1年を占う重要なおみくじとなる。運勢を占いたい人は、ぜひこのおみくじを試してもらいたい。
続いて本殿へのお参りとなるが、なぜか毎年、市場組合から(?)の奉納品なのか、デーンとマグロが1匹お供えしてある。このマグロにあやかろうとするのか、全部で5-6列あるお参りの列のうち、なぜか真ん中の2-3列だけが特に混んでいる。どうしても時間がないと言う人は、端っこの列に並ぶのがオススメだ。
お参りが終わったら、影のメインイベントとなる笹飾りの購入。こちらは、基本となる笹をまずは3,000円で購入する。運がよければ、神社の福娘(巫女)さんからではなく、舞妓さんから授与を受けることができる。
この段階では、笹には何もついていない。後に続く装飾品売り場で、自分の好みの笹飾りを選んで購入し、この笹につけてもらうのである。
笹飾りは米俵や、宝船にお札など様々であるが、どれも1つ1,000円。どう見ても原価100円もかかっていないような、いわばおもちゃである。しかしこのおもちゃをどれだけたくさんつけるかというのが大人の見栄のようになっている。例えば笹飾り3つ買うだけで、笹3,000円と合わせて6,000円のお納めと相成る。
不思議なもので、去年は3つだったが今年は2つにするなどといった事は、縁起が悪い気がしてなかなかできるものではなく、年々、エスカレートしていくのが一般的だ。
中には、「これ一体いくらなのか?」と思ってしまうほど巨大な飾りを付けている人もいる。
こうして滞在時間30分ほどのお参りが終わる。賑わいを見せる表通りと異なり、閑散とした裏通りから出る。まるでそれは、次の日から始まる、正月明けの「現実」に向かう道を象徴しているかのようだ。
そんな暗い夜道を帰っていると、パーッと飲みに行こうかと言う気分よりも、行きつけの渋い立ち飲み屋などで一杯引っ掛けてからさっと家に帰ろうかと言う気分になるから不思議である。だから四条縄手上る東側の「一銭洋食」は大混雑だ。
混雑は、10日がピークであるが9日も相当なもの。渋滞を避けたい人は、朝や昼間のお参りがおすすめだ。京阪「祇園四条」から歩いてすぐで、「祇園四条」からも行けるが、やはりここは四条から南下して露店を冷やかしながら、をおすすめする。