4月16日 魅力満載の京フィル定期! リレーコメント no.4 | 京都フィルハーモニー室内合奏団のブログ

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1972年に結成。2022年で創立50周年を迎える。
一人一人がソリストの個性派揃いのプロの合奏団。

こんにちは。のこぎり演奏をやっておりますおぎ原まことと申します。

今回は楽器としてののこぎり、Musical sawの魅力について少し書いてみたいと思います。

 

関西では横山ホットブラザースの「お前はアホか~」でおなじみかもしれませんが、関東ではまだまだ知名度が低いですね。

 

起源については大きく3つの説がありまして
北米説:北米ネイティブアメリカンの土着楽器。
スカンジナビア説:1800年代初めにスカンジナビアで演奏したのが最初。
南米説:南米のある部族が労働課の伴奏としてマレットで打ち鳴らした。
1850年頃それを見たドイツの行商人が帰国した際に「歌うノコギリ」として製造販売したところ忽ちヨーロッパ、アメリカ全土に普及した。
上記3つが有名説ですが、中でも③が有力らしいです。

 

③の説だとしても、160年以上の歴史があります!

 

にしてはあまりにも知名度が低いんですけど、それは「大工道具をおもちゃとして鳴らしていた」という感覚が根強いからではないでしょうか?

最近では世界中で腕を磨いている奏者も増えてきましたけど、それでも「曲が弾けた~」というレベルで満足して楽しんでいる方が大多数でしょう。

 

ちなみに、残念ながら和のこでは演奏できません。西洋鋸の先端が細くなっていく三角形のような形で初めて音階演奏が出来ます。

 

日本では、昭和9年に銀座で日本人が数曲演奏したという記録が残っていますが、他の方からの証言によると大正の頃に既にMusical sawが日本に入っていたらしいです。

そして1960年ごろには映画やドラマのBGMや効果音としてかなり使われています。

 

Musical sawをご存じなくても実はその音を知らずに聞いていた、という方がほとんどではないでしょうか?

 

 

さて、では実際にどんな音がして、どんな演奏が出来るのか?といいますと

 

最近では「テルミン(これもマニアック)に似てる」とよく言われますが、他には「胡弓」「口笛」「人の声」に似ていると言われます。

限りなく正弦波に近い波形の澄んだキレイな音がします。

 

そしてのこぎり全体を曲げたり戻したりすることで音階が作り出せます。

のこぎりの歯は使わず峰の平らな部分を弓でこすります。(あるいは盤面をマレットで叩く奏法もあります)

特にどこを弾くとどの音が出る、という目安もなく、「勘で弾くから勘楽器」などと冗談を言ったりしてます。(笑)

 

音を出すのにちょっとしたコツはいりますが、たいして難しくなく、音階も比較的簡単に出せるようになります。

そうすると鼻歌感覚で比較的簡単にメロディの演奏も楽しめます。

 

ただ実際にやっていることは例えて言うなら「ヴァイオリンの1本の弦を人差し指だけ使って演奏する」ようなことであり、実は音楽的にきちんと演奏しようとした場合、そのほとんどが「超絶技巧」になってしまうという極端な面も持っています。(苦笑)

そしてのこぎり音楽の最大の特徴が、持続するポルタメントをたゆたうように流れる、といったものなので、スタッカートやかっちりとした音の移動は比較的不得手です。

僕が始めた頃からそういう難しいことに挑戦する奏者が増えてきていて、それが現在全体のレベルを底上げしていると思っていますが、それでもまだまだ奥は深いし他の楽器以上にいろんな可能性を秘めていると思います。

 

まだまだ認知度も低いし演奏者も少ないですので、天下を取ってやろうという野心のある方はチャンスの多い楽器だと思いますよ!

 

 

さて、今回演奏させていただきますのは松村禎三さんの「クリプトガム」という曲です。

クリプトガム(隠花植物)は記号的、図形的多面性を思わせる不思議な楽曲で、のこぎりパートもその多くが半音移動をオクターブ跳躍で行う、という楽器の特徴としても自分としてもとても難しい演奏が続きます。

これも新たなる可能性の一つなのでしょうが、それが皆さまの耳にどのように届くのか、会場でお確かめいただけましたら幸いです。

 

のこぎり演奏、面白いですよ!

 

おぎ原まこと