私はとても腹が立っていたので、
相手を何かこう、
『ぎゃふん』と言わせたいと思った。
相手とは旦那の会社の社長である。
私はよく腹が立った時、相手がいる場合はいつも
仕返しをしたい衝動に駆られる。
仕返しじゃなくて見返してやる、でも良いのだが、見返すのは案外難しい。
例えば宝くじが何億円と大当たりして、
札束で相手の顔をペチペチと叩きながら
『ほ～ら、悔しいかい？(笑)』と言ってみるとか。
そんな実現しそうもない事しか思いつかない。
そこで仕返しの方法を思案してみる。
私は昭和の古い人間なので、先ず思いつくのが
『不幸の手紙』である。
『これは不幸の手紙です。今から一週間以内に10人の人に同じ手紙を送らないと、あなたは不幸になります』
と言うやつだ。
しかしそんな手紙を貰っても誰も不幸にはならない。
寧ろ、手紙を作る労力だの、切手代だのを考えると、自分しか不幸にならない気がする。
そこで次女に尋ねる。
『なんか仕返しがしたいんだけど、何かいい方法ないかな？』
次女は
『あ、じゃあ筑前煮は？』と言う。
『筑前煮？？』
『仕返ししたい相手の家のポストに、毎日筑前煮を直で入れるんだよ。嫌でしょ？』
『何それ！めっちゃ嫌！よくそんなくっだらないこと思いつくね！』
と大笑いしたら次女は
『何言ってんの？お母さんが前に自分で言ってた方法じゃん』
ワタシ、そんなこといいましたッケ？？
いや、言ったかも……
とりあえず今の方法を、
『心のネタ帳』に記入する。
私はよく、こう言ったネタになりそうな話しを
『誰か売れないお笑い芸人とか、ネタを買ってくれないかなあ…』
と日頃考えているのだ。
尤も考えた本人が忘れてしまうのだが…。
しかし筑前煮は凄く相手も嫌がるだろうが、
これでは犯罪になってしまうだろう。
防犯カメラに写っていれば、一発でバレてしまうだろうし。
なにより食べ物を粗末に扱う訳にはいかない。
筑前煮は却下。
次に思い付いたのは、
そうだ！私がいつも丹精込めて作っている
『羊毛フェルトの人形たちを毎日ポストに入れるのはどうだろう！』
こういうのだ↓↓↓↓
下手くそだが、私が一生懸命制作した物である。
この猫の顔を毎日ポストに入れていくのだ。
これは貰った相手も気持ちが悪いに違いない！
しかし、そんなに沢山は制作してない上に、
これも犯罪の匂いがする。
第一私の人形たちがそんな事に使われたら可哀想だ。
却下。
他にも、毎日、日を折って禿げていく羊毛フェルト人形も考えたが、
これも犯罪になるだろう。
やっぱりアナログだが、呪いの人形にするか。
相手の髪の毛などを入手し、人形に仕込み、
毎晩、夜な夜な
『禿げろ！禿げろ！禿げろ！』
と呪いを込めて人形を痛めつけるという物だ。
若しくは、
『お前もアル中になれ！アル中！アル中！』
など。
しかし、これは効果があるか保証は無いし、
恐らく途中で面倒くさくなりやらなくなりそうだ。
しかも途中で何に対して腹が立っていたのかも忘れそうだ。
だいたい私はいつもこうだ。
短気ですぐに腹を立てる上に、物の二日、三日、
長くて一週間くらいで腹の虫も収まってしまうのである。
次女は言う。
『私、仕返ししたいとか考えた事ってないんだけど…』
ええっ！？
腹が立ったりしたらどうすんの！？
『あんまり腹が立つ事ってないから、どうでもいいやって思うから』
そう言えば、私の子供たちって、あんまり怒ってる所を見た事ないな…
きっと旦那に似たのだろう。
しかし次女は、
『私なら自分で仕返しなんかしないで、労働基準監督署に駆け込むけど』
えっ、怖！(笑)
次女のが上だった。
私は仕返しの方法を、子供の時から良く考えて妄想などに励んでいたが、
(実行した事はないが)
そんな私は多分、
とても根が暗い人間なのではないかと時々思う。