ハード故に人気はあるんだが…「必殺! III 裏か表か」を観た | ビバ!アジアン映画好きな日々

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4月も近づき季節も春となったもののまだまだ変に冷える今日この頃。

 

前回の555からちょっと間を開けて、今回は劇場版必殺シリーズ3作目のレビュー。

 

ハードな展開に劇場版でも比較的人気な作品ではあるのだが…

 

ストーリー

ある夜、南町奉行所は取り物の準備でざわついていた。

 

ある班は岡場所に、ある班は博打場に…そして南町の同心、中村主水(演:藤田まこと)は抜け荷改めとして動いていた。

 

翌日、捕り物で回収した金子を一カ所に集め、同僚の同心である清原英三郎(演:川谷拓三)と共に両替商の枡屋に届けた。

 

およそ庶民では目にする事のない大量の金子を大人数で一気に検算する様を見て驚愕する二人。

 

次の日、とある場所で清原が大釜の下敷きになって死亡し、その通夜以降、妻のおこう(演:松坂慶子)が姿を消してしまう。

 

おこうはある場所で両替商組合肝煎の真砂屋徳次(演:伊武雅刀)と密会していた。

清原は袖の下を求めて枡屋の主人、枡屋仙右衛門(演:成田三樹夫)を強請っており、それを疎ましく思った両替商組合によって謀殺され、またおこうは両替商組合肝煎の娘でもあり、実家に戻るよう徳次は忠告する。

 

しばらくして知人の後家であるおしの(演:山田スミ子)から枡屋に預けたお金の利息の取り立てを頼まれて枡屋に向かうが、仙右衛門は主水の行為を小銭稼ぎとなじり、主水も頭に来て規模の大きい両替商がやる事ではないと険悪な状況になる。

 

その中で仙右衛門は清原の死を匂わせ、主水に牽制をかける。

 

ある日、枡屋で働いていた彦松(演:岸部一徳)が一家心中をした。

 

彦松の一家とは近所付き合いしていた鍛冶屋の政(演:村上弘明)は彦松が一度のミスで首になり路頭の迷う羽目になった事を知り、主水に枡屋から墓代をふんだくるように依頼する。

 

改めて枡屋に向かった主水は仙右衛門の代わりに徳次からクビになった経緯を聞き、人より金を優先するその姿勢に嫌悪感を抱く。

 

その夜、主水は帰り道に複数の刺客から襲われ危機に陥るが、それを助けたのがはぐれ仕事人の壱(演:柴俊夫)だった。

訳を聞こうとする壱だが、主水は訳を言わずに立ち去る。

 

刺客を放ったのは仙右衛門の仕業だった。事の次第を責める徳次だったが、一方で小役人である主水の行動が鼻に付いた徳次は主水を生きながらえながら地獄に落としてやると呟く。

 

後日、主水は茶屋で知り合ったおゆみ(演:野坂クミ)と良い仲になるものの、ある晩に両替商組合肝煎となったおこうと再開する。

 

おこうは金の力の強大さを主水に伝え彦松の一件から手を引くように忠告するが、主水は以前徳次の言った金の流れを否定して反発する。

 

はたしておこうの忠告した事は現実となり、主水はふとしたことからおゆみと公衆の面前で痴話げんかをおこしてその後おゆみは自殺をほのめかして塔に上り飛び降りてしまう。

 

全てはおゆみを利用した徳次の仕掛けた罠だったが、これにより主水は世間的な信用を失い、奉行所でも捕り物の際に捨て駒扱いにされ、孤立無援となる。

 

屋台でやけ酒を煽っていた主水に謎の影が近づくが、主水を見張っていた政、竜、壱に取り押さえられる。

 

その影はかつて主水と共に死線を潜り抜けた仕事人、飾り職の秀(演:三田村邦彦)だった。

おゆみの一件で自殺に見せた他殺と言う情報を主水に伝え、その張本人である徳次の手下を締め上げる。

 

からくりを知った主水は張本人を始末し、翌日清原殺しの下手人として仙右衛門をしょっ引き、苛烈な拷問を加えるが筆頭同心田中(演:山内としお)から清原殺しの担当から外されたことを聞かされる。

 

その夜、与力加納(演:織本順吉)から酒の席に呼ばれた主水だったが、それすらも真砂屋と繋がっていた加納の罠であり、主水は捕まってしまう。

 

真砂屋の元へ連れて行かれそうになった主水だったが、その場に秀、政、竜、壱、参(演:笑福亭鶴瓶)がなだれ込み何とか助けられる。

それから散り散りに隠れるも、参が見つかり多勢に無勢でなぶり殺しにされ晒し首にされてしまう。

 

別件で真砂屋の元にいた何でも屋の加代(演:鮎川いずみ)の手引きで一か所に集まった主水達は今回の騒動の発端である真砂屋徳次を仕置きするために真砂屋の屋敷に突入するのであった―

 

 

まだ必殺シリーズを見始めたころに見た印象はとにかく主水が刀を振るい迫りくる敵をなぎ倒し、余裕が全くないハードな話と言う印象だったんだけど、改めて見直すとハードなのはハードなんだが話に粗がありすぎて主水のピンチを呼び起こすために変に改変しているような印象を受けたんだよな。

 

基本的に主水って表稼業や家庭では打算的な動きもするけど、裏稼業に限って言えばクレバーなんだよね。

立場も守りつつ、効率的に動く。どうしようもない時は打って出る胆力もあるし。

そう考えるといくら天下のマネーパワーや追い込まれたからと言ってここまで奇麗にピンチになるもんか?と見えてしまうんだな。

 

途中のおこうとの会話で金の流れを説く徳次に反発する行なんてあそこまで感情的にならんだろと。

ましてや利用されて殺されたおゆみの事で感情的に真砂屋の手下を斬り殺すのも何か違う。

普通ならそこに至るまでに相手が強大すぎるから知らんぷりするもんだけどな。

おゆみにホイホイついていったのは「必殺仕業人」でも美人局で嵌められたことあるし、主水って若い子好む傾向あるからそれは仕方ないとして。

また真砂屋と対峙する理由としては同僚の清原が謀殺されたからというのはあるものの、あんまりそれが表に出てこないのも違和感を感じる理由かな。

 

そういう普段とは違う「らしくない」主水が流れつつ他の仕事人が殆ど活躍していないのもある。

前々作や前作では要所要所で仲間の仕事人の出番があったもんだが、本作はほぼ主水中心(これは次作以降も)で、彦松一家の件で政が、主水のピンチに壱が、おこうのシーンで秀が出てくるがそれも1シーンに近い。

 

おこうと秀の話も必要かどうかと言われると…

 

竜と参なんて巻き込まれに近い扱いなので本筋に殆ど絡んでいない。

 

そこにきて最後のあの描写だからそら不満を出すなと言うのが無理という物。

参の惨殺シーンはそりゃある意味リアルと言えばリアルだが話に必要かと言われればノー。

 

竜の滅多切りにしても主水達を先に行かせるための囮だったとして、元忍者なんだから刀奪って粘れるだろと言う位にさっさと退場してる。

ぶっちゃけ壱が一番おいしかったんじゃないかな。

 

主水を助けて、カットされたとはいえ加代との話もあり、最後は主水を助けながら最後まで粘って多勢に無勢で押し負けて滅多切りにされる。

参と竜もせめてこれくらい悪あがきして殉職していたらまだマシだったんだが…

TVシリーズのレギュラーの退場のさせ方じゃないよこれ。

 

なので、久々に復活した秀も「そういやいたなぁ」に近い。

 

で、最終的には仲間を失いながらも屋敷に突入した主水を待っていたのは徳次を始末したおこうだったというオチ。

本当に仕事人が無駄死にの犬死なんだよね。

 

元々はかなりの長尺の話で劇場用に合わせるのに編集でかなりカットしたらしい(予告編の田中様と参のやり取りとかがそれらしい)ので本来はもうちょっと納得のできる話だったのかもしれないが、少なくとも仕上がったのは生き死にだけはリアルだが他は穴だらけで、良かった点がそれこそラストの死闘くらい。

冷静に見れば見るほどなんだかなぁと思わせられる作品でした。