奥穂高岳② | 独り言ちの山暦

独り言ちの山暦

「風の又三郎、又三郎、早く此さ飛んで来!」「この頂で赤道から北極までの大循環の自慢話を聴かせてくれ。」

2023.6.11~6.15

6月11日。

夜行バスで上高地に向かう。その間、時間があった。

新宿バスタで時間を潰す。新宿高層ビル群を徘徊。久しぶりの東京であるが

特に感慨はない。

思うことはひとつ。齢を重ねると都会とは随分と不便極まるところだ、ということだ。

夕飯ひとつ食べるにも面倒極まる。

新宿バスタで同級生のSat君と合流。

これでKawaさん、Sugaさんとの4人Pが揃った。

22時過ぎのバスに乗り5時20分に上高地に到着。

この山行期間の天気は芳しくない。上高地は小雨が煙るように降っていた。

雨の中であっても涸沢までなら何とかなるだろう、と腹を括って出発した。

もとよりバスの中で熟睡ができるわけない。

それでも眠気よりもアドレナリンが勝る。野生の猿たちに見送られるように山へ、である。

小雨も上がったようだ。

空は厚い雲に覆われていたが、雨を回避できたことは先への期待感を膨らませる

条件としては充分だ。

明神にも人の姿は疎らである。

擦れ違う人は徳澤までのトレッキングだと言う。

平坦な整備された道を順調に進んだ。

ほどなく徳澤に着いた。

ここで小休止。

橋を渡り横尾に向かう。

幸いにも雨は上がっている。

途中は工事中。

迂回路を進んだ。

道路沿いには猿の群れ。

熊と比べると恐怖感はないが、不気味感は只ならぬ。

横尾。

吊り橋を渡る。

ここからが登山道の始まりだ。

道も趣が変わってきた。

屏風岩。

国内最大級の岩場だと聞く。Sat君は若からしころこの岩壁を攀じ登った

そうだ。

本当かよ!時のながれの無常さに抗いながら、そう叫ばざるえなかった。

ワイワイと話している内に本谷橋に。

この橋は揺れた。Sugaさんはそこを飛び跳ねるように渡る。

橋を渡った右岸が休憩場だ。

ここで軽く行動食を摂る。

勾配がきつくなるのはこの地点からである。

Sガレを通過する。

石畳道のように整備されている。ただ落石には注意だ。立ち止まってはいけない。

Sガレを過ぎると雪渓が残っていた。

ツボ足で通過する。

谷あいに涸沢ヒュッテが見えてきた。

ヒュッテまではタップリと雪が残っていた。

用心のため、そして折角アイゼンを背負ってきたのだから、とアイゼンを装着。

正面に見る穂高の山は圧倒的だ。

穂高に来た!感動がこみ上げてくる。

前穂への吊り尾根が素晴らしい。

ここまで雨らしい雨に当たることなくやってきた。

望外の喜びである。

明日に向かうザイデングラートと小豆沢。

思った以上に雪が残っており斜度も厳しそうだ。

 

涸沢ヒュッテに到着した。

みんなの頑張りで計画よりは早く着いた。

受付で手続きを済ます。

「明日は雨。登頂は難しそうですね」と。出鼻を挫かれた。

ヒュッテは他の予約はキャンセル。

われわれだけの貸し切りとなった。

明日が奇跡的に晴れ渡ることを、普段は祈りもしない「モノ」に祈った。

見渡す限りの山、山。

涸沢岳、北穂高岳方面が心をひきつける。

着替えを済まし。ここまでの安着を祝って乾杯。

ヒュッテは心地の良い雰囲気である。

夕食の献立も満足がいった。

早めの就寝。

次の日を思っての輾転反側の夜は過ぎた。

そして4時過ぎ。青空が圧倒的な朝があった。

「こうなるんだね」

天佑を呼びよせる器など持っているいるとは思えないメンバーだが

はるばる北海道からきたこと、そのことが何かしらを呼び寄せたのだ。

いよいよ奥穂高岳へ向けての出発である。

続きます。