『流行通信』③/ハヤシさんとイノセさん から続く

 

入社当時、

ファッション担当の直属上司は女性3人。

この方たちのアシスタントが

私のメーンの仕事でした。

 

当時はまだPCやメールどころか、

FAXさえもありません。

 

原稿は原稿用紙に手書きで、

編集部内で原稿がたまると

恵比寿にある写植屋さんに

いちいち持って行く。

 

レイアウトもデータ化されていないので、

B2サイズほどの版下の束をADの事務所に

持っていたり、取りに行ったり。

 

そのおしゃれなオフィスがまた、

赤坂の陸の孤島のような場所にあるわけです。

 

『流通』では、ファッション担当は

自分でスタイリングもするのが基本でした。

 

なので、上の編集者的な雑用のほかに、

撮影に関わるもろもろの仕事があります。

 

服やバッグ、靴の貸出し、返却。

靴の底の裏貼り。

 

大きなスタイリストバッグを持って、

あっちこっちのプレスルームへ。

 

基本、やることはスタイリストの

アシスタントといっしょです。

 

しかも、新人の担当と決まっている、

協力店リストや

巻末のパブリシティページの

原稿書きもある…。

 

まいにち目の前の用事をこなしては、

さらに新しい用事を言いつけられ、

もう、いっぱいいっぱいです。

 

表参道の富士銀行(いまのみずほ銀行)の

建物の脇に置かれていた植木鉢の間に

過呼吸になって

倒れ込んだこともありました。

 

そんな日々を送っていた私は、

ついに『流通』の“おしん”と呼ばれるように。

 

写真はちょうどそんなころ。

いまは「表参道ヒルズ」になっている

「青山同潤会アパート」の植え込みの前で。

 

ボーダーのTシャツはハーフムーン、

イヤリングとネックレスは大好きだった

資生堂THE GINZAで買ったもの。

 

まだ女子大生っぽさ全開だった私は、

社内外のメンズの同情票を

一身に集めておりました。

 

『流行通信』⑤/“フォーカス”でざわつく に続く