『流行通信』④/『流通』の“おしん”と呼ばれて から続く

 

新米ファッション編集者として

なんとかスタートを切ったものの、

その実情はただ雑用に追われる日々。

 

就職試験の結果が補欠で、

8ヶ月遅れの入社だったので、

7〜8人いた同期は、

同期というよりは

もはや1年先輩くらいの存在でした。

 

まだこの時期は世の中が就職難だったのか、

一流大学出身者がずらりと顔を揃えていて、

まぁ、三流の美大卒の私が補欠なのは、

仕方ないのかな、と思えるほど。

 

私が自宅待機をしているあいだ、

彼らは書店回りなどを経験させられて、

それはそれで大変だったらしい。

 

同期の飲み会にも

誘ってもらえるようになって、

最初はみアウェーだった私も

少しずつ会社になじんでいきました。

 

写真は、同期全員で繰り出した

ある夜のワンシーン。

いっしょに写っているのは彼氏ではなく、

同期の一人だったKSさん。

 

ちょうどこのころ、

『流行通信』や『STUDIO VOICE』で

写真を撮り始めていた

同年代の若手フォトグラファー、

MK君が“フォーカス”される

という事件が勃発。

 

「キリンレモン」の

TVコマーシャルで大ブレイクしていた

ハーフのノンノモデル、JGを

妊娠させてしまい、

臨月の彼女を車に乗せていたところを

激写されてしまったのです。

 

スキャンダルの渦中の人物が

顔見知りとあって、

しばらくはこの話題で

編集部はもちきり。

 

この夜は仲間うちで

“フォーカス”っぽい写真を撮って

盛り上がったのでした。

 

ところで、wikiによると、

『流行通信』は数多くの社員が

転職したことから「出版業界の飛行場」

と言われる、とあり。

 

同期の中でいちばん長く在籍したのが

補欠入社の私でした。

 

みんなが飛び立った先はさまざまで、

いまなお同じ路線を飛び続けているのは、

結局、私だけです。

 

『流行通信』⑥/刈り上げの洗礼 へ続く