大雲院から建仁寺へ

ペンネーム：京田辺のアラ古稀一休

　今年の「京の夏の旅」で公開されている大雲院祇園閣の見学と、織田信長・信忠父子や石川五右衛門の墓の参拝に行きました普段は非公開なのでこの機会を待っていました
　そのあと、近くの建仁寺へと散策しました。猛暑続きなので、この２か所だけにしてゆっくり訪れました
大雲院にある「祇園閣」は国の登録有形文化財に指定されていますが、昭和３年に大倉財閥創始者の大倉喜八郎が金閣、銀閣に次ぐ銅閣を目指して作られたようです
内部は撮影できませんでしたが、高さ３６ｍの閣上からの眺めと自然の涼風は、思わず暑さを忘れるほど心地いいものでした八坂の塔まで続く瓦屋根は京都らしさの景観を見せていますが、近くにマンションがあったのは時代の流れとはいえ残念でした

織田信長・信忠父子の墓碑は天正１５年（１５８７年）に正親町天皇の勅命で建立されたようですなお、大雲院は昭和４８年まで寺町四条下ル（現在の高島屋の南側）にあったとのことでした

　以前にTVで歌舞伎役者が石川五右衛門の墓標を訪れているのを見ましたが歌舞伎「楼門五三の桐」を演じる前に来ていたようでした
開山の貞安上人が、石川五右衛門に処刑前に引導を渡した縁で、ここに墓所があるようです

大雲院から東大路を横断して建仁寺へ向かう道で、若い女性２人が道を捜しているようなので、行き先を聞いてみると、何やら聞いたことが無い場所でしたので、再度聞くと、「かぼちゃの・・・」で祇園甲部歌舞練場辺りとのこと。どうやら草間彌生さんの展覧会（フォーエバー現代美術館京都・祇園）だと理解でき、案内してあげました外国人が多い中で珍しく日本人の方たちでした

　建仁寺は過去に数回訪れたことがありましたが、写真撮影可能とは知りませんでした
京都最古の禅寺で栄西禅師が建仁２年（１２０２年）に開創されたとのことです
有名な俵屋宗達の国宝「風神雷神図」も、海北友松の重文「雲龍図」も高精密複製品で、本物は京都国立博物館に保管されているようですそのため写真撮影ＯＫなのでしょう

風神雷神図（俵屋宗達）

方丈襖絵の雲龍図（海北友松）

建仁寺の方丈は慶長４年（１５９９年）に安国寺恵瓊が安芸の安国寺から移築したものですが、庭園の大雄苑も広くて心を落ち着かせます
　他に、○△□の庭や潮音庭などもゆっくり鑑賞できる庭でした。
　この日は、浴衣姿の男女が多く、日本人だけではなく外国の方も見受けられました

大雄苑

○△□の庭

潮音庭

法堂には天井に小泉淳作画伯の「双龍図」が描かれていました平成１４年に創建８００年を記念して描かれたようです同じ龍でも方丈襖絵の「雲龍図」とは全く違った趣がありました

双龍図（小泉淳作）

方丈北庭には、方丈を建立した安国寺恵瓊の首塚があり、すぐ横には利休高弟の一人である真如堂長誠好みの茶室がありました秀吉の北野大茶会にて紙屋川の土手に建てられた「東陽坊」という２帖台目席とのことです

安国寺恵瓊の首塚

茶室「東陽坊」

茶室「東陽坊」の横には清涼軒という茶席がありましたが、以前に一服戴きましたので今回は寄りませんでしたこのあたりには立ち寄る人も少なく、観光客の喧騒を逃れ、落ち着いた京都らしさを体験するのにお薦めの茶席です
今年の夏は特に暑いですが、その分いくらか観光客も少なくてゆっくりと散策できました

祇園祭（前祭）鉾建て

ペンネーム：京田辺のアラ古稀一休

今年は、新町通り四条上ルにある放下鉾を中心として、「鉾建て」で釘などを使わず荒縄を使って固定する「縄がらみ」といわれる工法による鉾建て現場を見に行きました
　山鉾巡行の４日前では、組み立ても終盤で、「鉾建て」と「曳き初め」の準備が行われていましたが、早くも多くの人出があり、鉾の周辺は老若男女でごった返していました

放下鉾は、下記のとおり真木の天王座に放下僧（僧形の雑芸者）の像が祀られていることに由来しているようですが、かなり高い場所にあるため今まで気が付きませんでした

鉾の各部にはいろんな名称があることが、配布されたパンフレットで説明していました

破風と天水引

下水引

胴懸と「縄がらみ」の作業中

伝統の「縄がらみ」の縄と結び目の見事な美しさにしばし見とれました

こちらはエビの形の結び目のようです

美しい「縄がらみ」に見とれていますと、そばの売店から「ビールどうですか」と声がかかり、若い美人の売り子に勧められたため年甲斐も無く気が変わり、買ってしまいましたしかし、暑い中でのビールは最高でした
新町通りを四条まで下がっていくと、船鉾が見えてきましたが、周囲の若い女性の「カッコいい」の声につられて船鉾を見に行きました正面から見ると一層の勇壮さに驚きましたすでに船の上や周囲には大勢の人が集まり、近づくことができませんでした

最後は、「くじ取らず」で巡行では常に先頭を行く長刀鉾を見に行きました

船鉾（左）と長刀鉾（右）

長刀鉾の破風前部

破風後部

なお、鉾頭の長刀は刃が八坂神社と御所の方には向かないように取り付けてられているようです
　今回は、「縄がらみ」や「曳き初め」を見たくて巡行の４日前に見学に行きましたが、時間の制約から「曳き初め」は見られなかったものの、作業中の「縄がらみ」の一端を見ることができましたそれにしても４日前にもかかわらず、人の多さに改めて驚きましたさすがは祇園祭ですそして、鉾の細部までじっくりと観察できたのはこの時期だからこそでした。
しかし、周辺の気温は３４度、やはり祇園祭は「暑おすなー」の挨拶が似合うようでした

旧邸御室を訪ねて

ペンネーム：京田辺のアラ古稀一休

今年の「京の夏の旅」の中から、御室にある旧邸御室を見学してきました昭和１２年に建てられた５００坪の敷地に立つ数寄屋造りの邸宅だそうです。現在は国の登録有形文化財に指定されています
　ちなみにこの邸宅は、現オーナーの父である山三製作所社長の山本三夫氏が大手酒造会社役員の四代目阿部喜兵衛氏から購入されたとのことです
　そして二代目阿部喜兵衛氏は、連続テレビ小説「マッサン」のモデルとなった竹嶋政孝氏をスコットランドへ送り出した人だそうです

　仁和寺前で市バスを降り、仁和寺の三門を背に京福電鉄御室駅まで下がっていくと、駅前には案内看板がありました

御室駅を南に過ぎて３つ目を西に行くと目指す「旧邸御室」がありました

大広間では、「庭鏡」ともいわれる、座卓に庭の木々が写り込む風景の美しさに圧倒されました

日本庭園が檜の座卓にまるで鏡のように映っていました

庭に降りて階段を登って行くと茶室「双庵」があり、背景の双ヶ岡にも行けるようでした

茶室から主屋を見ると、庭に出る敷石の鞍馬石の配置と大きさにあらためて立派な様子がよく分かりました

茶室「双庵」からは御室の山を眺望することができました

主屋に戻り、欄間の富士山や、琵琶床を見学し、昭和初期の意匠に感動しました

檜の座卓は、角度を変えると掛け軸をも写していました

また、浴室のガラス戸には、保津川下りの様子が描かれていましたガイドさんに見学を勧めていただきましたが、趣のあるガラス戸にしばらく見入りました

庭には１５の灯籠があり、日本庭園の情緒を魅せていました

帰りに、玄関前の道を東に突き当たるまで歩くと、琳派の尾形光琳の実弟である尾形乾山に影響を与えたといわれる陶工野々宮仁清の仁清窯跡の石碑がありました残念ながら現在、窯跡はなく石碑だけが往時を偲ばせていました

　今回は珍しく写真撮影は室内外ともＯＫでしたので、美しい「庭鏡」などが撮影出来ましたまた、昭和初期の高貴な郊外邸宅が静かな周辺の住宅に溶け込んで、あたり一帯がいかにも京都らしさを醸していました
　そして、以前から探していた陶工仁清窯跡を訪れることもでき、大いに満足して帰路につきました

蹴上から疎水沿いへ

ペンネーム：山科のNanibah

3月下旬の暖かい春の日差しを浴び、蹴上のインクラインの桜を堪能しましたインクラインは写真を撮る人で賑わっています日本語だけでなく中国語や韓国語も飛び交っています

蹴上ではねじりまんぽも隠れた人気ですねじりまんぽは強度を高めるために内部のレンガをらせん状に積み上げたトンネルです1888年に建設され、当時の知事の北垣国道作の扁額を見ることができます表の東海道側の粟田焼の扁額は「雄観奇想」（見事な眺めと優れた考え）という文字がはっきり見えます

一方、裏側の扁額は劣化し、文字がほとんど消えています「陽気発処」（ようきはっするところ）と書いてあったそうですが、現在はかろうじて「陽」が読めるのみです。「朱子語類」の「陽気発処　金石亦透　精神一致　何事不成」（陽気が発生すると金石すら貫くことができる。人も精神を集中すれば何事も成し遂げられないことはない。）が出典とのこと「陽気発処」がぴったりのお天気ですが、文字の消えた扁額を眺めるみなさんの顔は残念そうでした