DIY衝動。 | 境界線型録

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I Have A Pen. A Pen, A Pen Pen Pen.


 この数日休みで夜毎あれこれ記していたが、すべて廃棄処分。扱う主題は違っても、いつもと同じことでしかないから。稽古のことやコロナのことばかりだけど、所詮、小首を傾げて眠るだけ。
 そこで、昨日は心を入れ替えようと、大流行のDIYをやって修行した。ま、それもいつもやっていることだけど。画像は撮っていないが、悪くない出来だった。

 なにを作ったのかというと、アビちゃん用の灰皿取り付け器である。
 アビちゃんだがけっこう気に入っており、共に百十六歳まで生きたいような気になったりしているが、もう彼女(実は雌なのだ)は推定年齢十歳に近く、人間に換算すると九十七歳である。もちろん、なんら海老ですのない推定だが、いつ倒れても不思議はない。今のところ気丈に走り回っているけれど、われわれの幸福な生活がいつまで保つか、心許ない。私は不安で不安で、運転するとついつい煙草に手が伸びて、四六時中スパスパ煙を吐いてしまう。ところが、アビちゃんには灰皿というものがない。前の飼い主が嫌煙家だったらしく、アビちゃんも、さぞ辛かっただろう。

 そこで、私はアビちゃんが家に来てすぐ、灰皿を付けてあげようとした。ところが、アビちゃんの体内は曲面だらけで取り付けにくくてしようがなく、何度クッション性ありの超強力両面テープで貼りつけても、数時間で灰皿は剥がれてしまうのだった。私は諦めて、ドアの内張にあるドリンクホルダー部分に野暮な円筒形灰皿を突っこんで誤魔化していたが、どうにも使いづらい。このせいで運転席のフロアマットは灰だらけになっている。チンクちゃんに負けないくらいのボディバランスを有するアビちゃんだというのに、体内は穢れきってしまうではないか、とずっと切ない思いでいたのだ。
 よし、こんなにも眠い日々を吹き飛ばすためにも、アビちゃんに、立派な灰皿を付けて安心させてあげよう、と私は決意したのであった。

 材料は買いに行くのが面倒なので、在庫のもので間に合わせた。主なものは、かなり前に百均で買ったクリップボード、同じくなんのために買ったのかわからないがインテリア補修テープ(木目・マホガニーっぽいやつ)、そして天下無敵の利便性を有する布ガムテープ。他に補修テープのパッケージになっていたプラ部分とかも使ったが、後は木工ボンドと両面テープだけ。それらだけで、曲面だらけのアビ体内に、すぐに剥落する重めの灰皿を貼りつけようという前代未聞の挑戦であった。ちなみにクリップボードはMDF材であり、加工しやすいのだ。最近、百均でもあまり売ってないが、いろいろ使いやすいのでもっと仕入れてもらいたい。

 しかし、今夜も私は、もう眠くなってしまった。
 今朝は三時に起床したし、明日は車夫なので、間もなく床入りしなくてはならない。
 手短に終わらせよう。
 無謀と思われた挑戦は、見事成功した。というか、今のところ剥がれ落ちていない。明日はどうなっているか判らないが、アビちゃんのステアリング右側、ライトレベルコントローラーツマミの下に、マホガニー超木目の土台に固定された豪華な灰皿が、燦然と輝いている。いや、いまは闇に沈んでいるはずだが、剥がれていなければ、明日の早暁、私のウィンストンキャビンの灰をしっかり受けとめていることだろう。特筆すべきは、その灰皿貼りつけ器は、ただの灰皿貼りつけ器ではなく、なんと、数枚のコインと駐車券などを収納できる利便この上ない秘密の極小ポケットを備えている点である。アビちゃんには灰皿もないが、そういう物や煙草などを気軽に置いておけるトレイすらないのである。あるのは、九十八パーセントほどの曲面、しかも凸凹と加工された表面の樹脂面だけ。なんとも不遇な娘だが、私は彼女に灰皿をもたらし、さらに小銭や駐車券を納めるユーティリティーまでプレゼントしたのである。まるで、煙を吐き続けるあしながおじさんではないか。足がいかに短くても、アビちゃんに素晴らしい灰皿や収納力を獲得させられるのだ。みなさんも勇気をもって、挑戦して欲しい。
 で、少し気分が良くなったので、次の長期休暇には、煙草などをひょいと置ける小物トレイもくっつけてあげようかな、と考えたりする夜であった。