苦瓜の日。 | 境界線型録

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I Have A Pen. A Pen, A Pen Pen Pen.


 合掌。

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 今夜は頭を休ませる暇がないので、テキストは休み。
 梅雨入り宣言後初の梅雨らしい天候の本日、印象的なメールがふたつ届いた。

 ひとつは、朝一番。
 例のコピーの修正は、まだいただけないですか?という催促。今日が〆切り、とされていた。
 月曜日に、メールで依頼されていた。が、無視。仕事だと私は、そういうことを平気でやる。性格がとっても悪い。
 もっとも、きちんと礼を尽くす相手なら、礼を尽くす。が、礼を知らない相手は、ポイ捨て。
 某社の社長が出した修正指示だった。社長からクリエイティブディレクター(CD)とか言うヘンな生物に降り、私に下される。忙しいし無意味なので無視。
 いよいよ不安になったCDくんが、本日ご機嫌伺いしてきた。
 ムダな時間を使わせるな、あのままやれ、厭なら俺に頼むなと返信。
 私はとても厭な奴である。

 もう一通は、大都会打合せ行脚の旅に発つ直前、舞いこんだ。
 二十数年のつきあいになる、ほぼ友人的顧客から。
 会社を辞めちゃうから、今度、合気道を覗きに行くよ、という報告。
 (あ、ここも覗いてたかな?ま、問題はないでしょ)
 某有名企業の某部長職だが、辞める。ものごとを一生けんめい考えるタイプなので心配はしていないが、何となく気分はどんよりする。
 辞める、という響きに、どんよりする。
 私はしょっちゅう辞めるが、他人の辞める響きにはどんよりする。
 自分の辞める響きは意味が明解なので晴れているが、意味に靄がかかっているとどんよりするしかない。
 辞める、という事象にはなんの感慨もないけれど、辞める、という響きにどんよりする。
 響きは物語を内包している。

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 PM6:44の西の空。
 西と言っても、その時、私が立っていた地点の西の上空と言うだけだが。
 このように、どんよりする。

 夕刊に幾つかの犯罪が報告されていた。
 犯人の年齢。
 49、43、38、42、45、44、54歳の犯人の方々。
 脂ののった働き盛りが働いた罪。
 親御さんは70代だろうか。
 私の父は84歳、大正15年(昭和元年)生まれ。
 ポツダム宣言を受け入れた昭和20年、1945年、皇紀2605年、終戦の直前に徴兵され、一兵卒として九州に赴いた。熊本だったか忘れたが、赴任地に着いた途端に終戦。詳しくは聞いていないが、広島辺りで馬鈴薯を拾いリュックに詰めて故郷に戻ったと聞かされたことがある。
 鉱山で電気技師を勤め、後、政治に傾倒する。GHQのやり方が耐え難かったらしい。
 自分がその時を生きていたら、どうしただろう?とたまに考える。
 目標を喪失した時代。
 やがて、経済立国という目標を鼻先にぶら下げられ、日本は突っ走り、先進国となった。

 先進?
 確かに、先進、という気はする。
 49、43、38、42、45、44、54歳の犯人の方々は、ほぼ金に絡んで犯行という事業を起こした。
 成長。先進。国際社会でひけをとらない、恥ずかしくない、大国。
 誇れる文化は、マンガ、アニメ。他は経済がらみの技術。
 1945年以前には、もっと色々あったのかも知れない。
 お互い様とか、羞恥とか、遠慮とか、礼節とか、勿体ないとか、宵越しの金は持たない奴でも辛うじて生きられるとか、孝養とか、仁義とか、人情とか。
 それはヤクザ映画の物語なのか、不思議な気分で夜。

 昨日漬けた、苦瓜の糠漬けを肴に焼酎を呑む。

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 南の島のゴーヤにがし慰霊の日